小説の映画化というより、小説と映画のマリアージュを狙ったかと思わせる。
効率よく話を進めるというより話の語りに応じてさまざまな人々のありようの色合いが変わって見えるのを味わう。
セリフの多くは俳優の即興だというが、紙の上の人物が立体化したというより紙の上ですでに立体化している感じ。
冒頭でタバコの煙の測り方をハーヴェイ・カイテルが講釈するシーンがそれ自体魅入ってしまうよう上に、おそらく煙みたいに儚く曖昧に見えるものでもきちんとつかまえる方法はある、なんでもないような市井の人々もきちんとつかまえる方法はあるし(それがこの映画自体)、つかまえられたらそれ自体が何か打つものとなる。
終盤のカイテルがやはり長台詞で語るシーンが実にいいのだけれど、内容がエンドタイトルのバックで白黒映像で展開されるのが余韻を残す。
街のタバコ屋という設定自体が今では成立しにくいのではないかと思わせ、実際姉妹編の「ブルー・イン・ザ・フェイス」では店がなくなりそうになるという設定らしい。
「スモーク」 - 映画.com