prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「バース・オブ・ネイション」

2019年01月08日 | 映画
映画の父ことD.W.グリフィスがカットバック、ロングショットとアップの切り替えなど基本的な映画文法を開拓した映画史上の最重要作にして、KKKを英雄扱いしたのみならずその再生のきっかけを作ってしまった人種差別映画でもあるという複雑な「国民の創生」と同じ原題を持つ野心作。

監督脚本主演のネイト・パーカーが大学時代のレイプ疑惑で売り出しにブレーキがかかるといった映画の外の話題が先行しすぎている感はある。

キリスト教の宣教師という立場で神の愛を説くという図がどこか違和感を与える。少なくとも、アメリカ黒人にとってはキリスト教は奴隷として連れてこられた大陸で押し付けられた宗教ではないかと思ってしまう。
「ルーツ」ではアフリカではイスラムを信仰していたのを描いていたし、マルコムXはアメリカで押し付けられた一切のアイデンティティを拒否して本来の姓はわからないからXと名乗り、イスラムに帰依したわけだが、ここでは時代的な限界はあるにせよも、そこまでの徹底はしていない。

クライマックスの蜂起がアンチクライマックスに終わらざるを得ず、その後のリンチで絞首された黒人たちが何十人もぶらぶら木から吊るされてゆらゆら揺れている光景にビリー・ホリディの「奇妙な果実」がかぶさるシーンに怒りが漲る。

「ルーツ」のリメイクにはさまざまなアップデートが組み込まれていたが、その一つにこの映画の主人公のナット・ターナーの蜂起の噂におびえた白人たちが黒人たちは人を殺して食べているなどというデマを流している場面があった。




1月7日(月)のつぶやき

2019年01月08日 | Weblog