prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「Ribbon」

2022年03月05日 | 映画
115分と割と長尺で、冒頭の美大に打ち捨てられている作品や情景の無人のカットの積み重ねがかなりゆっくりしたテンポなので、終わりまで見ていられるかなと不安になったが、そのテンポに慣れると「何もすることがなくなった」コロナ下の日常の時間感覚で統一されて飽きずに見通せた。

さまざまなリボンが宙を舞ったり蠢いたりするイメージが一種現代美術的な単一の意味に還元されない感覚を示す。
てっきりCGでまかなったのかと思ったら、おおむね実写を合成したらしい。
リボンというときれいきれいな印象が強いのだが、ここでの蠢き方は何だか虫か触手のような不気味なところがかなりある。

登場人物がごく少なくて、しかもソーシャルディスタンスを保って離れたまま会話しているのを全景で捉えた構図が多く、その距離感がどこかユーモラスで俳優としてののんさんの持ち味にもつながる。
ほとんど二人だけのやり取りをじっくり見せて、役者たちを生かすのにも配慮した演出。

終盤、美大生がおよそやりそうにないことをするのだが、創造的破壊かつ他者の作品との融合というかたちで再生する(初めの作品は正直面白味がなかった。
)のがタイトルをrebornとも読めるのにひっかけてあるわけね。