どれも死刑に関わる全四話のオムニバス形式の一編。
第一話はファスベンダーの「R氏はなぜ発狂したか」のような淡々とした日常生活のスケッチを積み重ねて、ラストで唐突な(ようで実は地続きの)暴力が噴出する。
その後も、死刑制度に直接関係なさそうな人たちが意外な形で関わっている様相が変奏され、平和に見える日常と地続きに死刑という殺人が行われている作者の認識が見える。
モハマド・ラスロフ監督はイラン政府ににらまれていたため受賞したベルリン映画祭は欠席のままとなったらしい。
ある意味、人を国は殺していいという特権を表すのが死刑制度だとも言えるわけで、それに疑問を投げかけるのは国家に対する反逆ともとれるわけだろう。