prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「THE BATMAN ザ・バットマン」

2022年03月29日 | 映画
雨が降りしきる都会の風景は「ブレードランナー」っぽくもあるがSF的な未来像というよりあれが骨法として持っていたハードボイルドのスタイルをこれも持っている。

殺人事件の謎は主観的に追われると共に、追う者自身の内面がナレーションによって半ば第三者的に描写される。
さらにその上から運命的に関わってくる女性の存在、など。

仮面の下に真実が隠れているのではなく、仮面をつけることで本心を表すパラドックス。

夜の雨の中の、大型車が玉突き式にクラッシュするアクションシーンなど、どれほどの困難が伴ったか見当がつかない。

ウェイン家の出自はかなりケネディ家っぽい。それを狙うリドラーはリー⋅ハーヴェイ・オズワルドということになるか。
彼が捕まるダイナーは明らかに(またもやというべきか)エドワード⋅ホッパーの「ナイトホークス」のそれ。
平然と捕まって、その後に計略が待っているあたりは「セブン」か。
持たざる者、格差の最下層の出というあたりジョーカーともかぶる。

ずいぶんあちこちかなりあからさまに元が見当つくが、寄せ集め風でも全体として大きな絵になっている。3時間の長尺も恐れていたほどだれない。

冒頭からアヴェ⋅マリアが流れて、作中何度も大幅にアレンジを変えて変奏される。ブルースの母親の設定は、セリーナことキャット・ウーマンとその母親の関係ともかぶる。逆説的な聖母というか。