冒頭、夕焼けの川沿いの堤を行く花嫁行列を小林旭が襲った、と思ったらもう舟に乗って逃げて「一年後」の浅草にとぶ、すごい省略法。
客引き女が川地民夫の袖を引いたと思うより早く川地のマントがまくれ(裏地の赤が目を刺す)隠してあった仕込み杖で女をどんと突きとばすという、殺し屋の凄みを出す一瞬の演出。
カットのつながりがほとんど時空がとぶみたいな鈴木清順独特の演出の一種には違いないのだけれど、まだスピーディーな場面運び、ストーリーテリングの範疇にもあるように思う。
製作は1964年、「関東無宿」と「肉体の門」の間で、すでにいわゆる清順美学が確立されたあとだが、鈴木清順というとどうしてもプログラムピクチャーの中で独自の美学を築いた人という見方になってしまうのだが、プログラムピクチャーが壊滅した現在ではむしろ役者や画面を「格好よく」見せる演出でもあるようにある。
脚本に美術の木村威夫が参加している。