prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「渇水」

2023年07月30日 | 映画
原作者の河林満は2008年に57歳で亡くなっていて、この作品で1990年の芥川賞候補にもなったらしい。

水道料金を集金してまわるより口座引き落としなりクレジットカードなりで払えばいいだろうと思ってしまうが、そんな余裕がないような貧困層の話ということになる。延滞金の催促というのは人の裏側を見てまわる職業で、公務員=安定というイメージとは違う。30年ちょっと前には珍しかった貧困が蔓延している今、映画化した意義はあった。

母親はまだ幼い姉妹を育児放棄し、それ以前に父親はいない。
局員が姉妹の留守中に訪れると母親がお菓子を置いて出てきたところで、母親が局員を避けたついでに姉妹と行き違ったままになり、姉は置かれたお菓子を捨ててしまい、それを妹が拾う。
このあたり感情の行き違いが描き込まれている。

水は本来タダ、あるいはタダであるべきなのだが、水道料金をとるかその延長線上でペットボトルの水を売って金をとるという商売にしてしまう。
水という生きていく上で必須のものを囲い込んで価値を付加してしまう資本主義の原点みたいなもの出ている。

生田斗真が水源に近い場所に行き豊富な水を目の当たりにして(ここで音楽が珍しく高まる)それに引きずられるように公園の水を出しっぱなしにして警察の厄介になる。
まんまんと水を湛えたプールに姉妹が飛び込むラストは渇きに耐えさせた末に解放する感じ。