prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「美女と野獣」

2017年06月16日 | 映画
実写化といってもCGばりばりになるであろうことは目に見えていたわけで、どの程度意義があるのかなと思っていたのだが、やはり役者がやると違いますね。特に踊りはとりたてて凝った振付をしているわけではないけれど生身の肉体がやるとこれが本来だなという気がする。
この前のフランス版実写化の方がガストンと野獣を同じ役者にやらせるコクトー版の寓意は残していたのにCGに頼っていたのがおもしろいところ。

エマ・ワトソンが田舎娘役なわけでちょっとそばかすが見えるようなメイクで通しているのがいい。初めジーンズっぽい青い作業着、城に入ってから変にいじられて赤、舞踏会では黄色と衣装が変わる。特に色に意味を持たせているわけでもなさそうだが。

今の時点で知性を重要な要素とするフェミニズムを表現するのにぴったりのキャスティング。生まれつきではないのだから、ディズニー「プリンセス」というのともちょっと違う気がする。
対照的にガストンみたいに強くてマッチョで「男らしい」けれど完全に知性を欠いた男はとうぜん敵役として描かれることになる。

なんだかんだ言って、歌曲が圧倒的にいいので有無をいわさない。
ベルが本好きという設定はアニメ版より城の書斎に対する反応などでうまく描かれている。

舞踏会のメンバーにかなり黒人が混じっていたり、ディズニー史上初の同性愛キャラクタール・フウが登場したりというのがいかにもPCに気を使っている感じ。
(☆☆☆★★)

美女と野獣 公式ホームページ

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6月15日(木)のつぶやき

2017年06月16日 | Weblog

「家族はつらいよ2」

2017年06月15日 | 映画
タイトルデザイン(横尾忠則)で出演者の顔と名前がフューチャーされるのはありがちだけれど、原作監督の山田洋次の顔が出てきたのは驚いた。主演と監督を兼ねる場合でも監督の顔がデザインされるというのはあまり覚えがない。まあ十分すぎるほどの有名人で名士ですしね。

一作目でいささか辟易させられた先行作品(「男はつらいよ」「東京物語」など)の引用は減ったのはありがたいところ。吉行和子(今回は極端に出番が少ない、スケジュールが詰まっていたか)の文学講習所でストリンドベルイの名前が出てきたあたりで「ベルイマン自伝」日本版が写る。老人映画の往年の名作「野いちご」の監督として、という意味と、ストリンドベルイと同じスウェーデンの演劇人でもありしばしば演出上演していたつながりだろう。エンドタイトルにもきちんと出てくる。

橋爪功が寅さんみたいにはた迷惑でわがままで、しかも父親だからもっとどうしようもないし、妻夫木聡のなんだか頼りない末っ子は満男にあたるだろうし、当然「男はつらいよ」と似ているところはあるけれど、どうしようもなくうっとうしいけれど手は切れない、という感じが家族全員に当てはまっている。
唯一さくらみたいに出来すぎているくらい出来すぎたキャラクターが一番の新参者の看護師の蒼井優で、こちらも自分の家族には問題を抱えているのが示唆される。次回作が作られるとして、このあたりが絡む可能性もあるかな。

前回は家族会議でオーソドックスに盛り上げたのに替えて家族会議が吹っ飛んでしまう騒ぎになるのも工夫したところ。
(☆☆☆★★)

家族はつらいよ2 公式ホームページ

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6月14日(水)のつぶやき

2017年06月15日 | Weblog

「光」

2017年06月14日 | 映画
極端なアップを多用して周囲がボケたような撮影が弱視の人の主観に接近しているようで、よりへばりついて見ることで普段見ている見方では見られないようなものが見えてくる感がある。
撮影の百々新という人はもともとスチルカメラマン(河瀬監督の前作「あん」のスチルを担当)で、映画の撮影はこれが初めてだそうだけれど、「芝居」を撮るというより物に迫るといった感じのような気がした。

永瀬正敏がどアップでも、というかどアップだからというか手にした物になめるように迫る弱視の感じになりきっている。ずうっと手にして自分の心臓だというカメラがローライフレックス(※)。今どき珍しいフィルム式で、光がとても綺麗に撮れるとのこと。
水崎綾女の顔を手で撫でるシーンのエロティシズム。

冒頭、映画の画面を説明する視覚障害者向けに音声ガイドが流れる冒頭、完成した映画にシナリオの文章をかぶせたようで一瞬映像いるのだろうかと思った。言葉から映像に向かう通常の映画作りの方向と逆に映画の画面を言葉に起こしていくわけで、映像の元になった言葉と映像と映像からまた起こした言葉とが重なり、通常の画と言葉と音の積み重ねだけとはまた違うある種徹底した迫り方をしている。

映画中映画の主役が藤竜也。「やすらぎの郷」でもそうだけれど、歳くっても色っぽいという役が似合います。
(☆☆☆★★)

(※)
【フィルムカメラ】ローライフレックスの使い方と作例
私とローライフレックス 2.8F"

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6月13日(火)のつぶやき

2017年06月14日 | Weblog

「美しい星」

2017年06月13日 | 映画
「未知との遭遇」ばりに接近遭遇を経験してから地球全体の環境問題に目覚めてしまう父親、水ビジネスにはまる母親、前世(みたいなもの)からの縁を信じて歌「金星」を歌うアーティスト?と関係する娘、フリーターから政治家の秘書になる息子、と家族全員が身近な陥穽にひょいとはまってしまい、それぞれ自分は金星人だとか水星人だとか言い出すトンデモなことを言い出す。

荒唐無稽なようでこういう光景とか思考形態の人間けっこういるぞ、と思わせ、映画自体がかなりきわきわながらトンデモにハマることからは回避している。

リリー・フランキーの変なポーズって、空が落ちてくるのを受け止めようとでもしているつもりなのだろうか。

橋本愛、亀梨和也ともにあの両親から生まれたにしては美形すぎて、違う星の産なのではないかというニュアンスが上手く出た。
佐々木蔵之介が人間以外の存在の演じっぷりも見もの。

三島由紀夫自身論理的な作風であるにも関わらず、その論理性そのままにメビウスの輪を伝いながら世界の裏側に出てしまうようなところあったのだが、そのあたり不思議と現代とつながってくる。

水のボトルがずらっと並んでいる中、コップの水が振動で震えるあたりは考えすぎか知らないがタルコフスキー調。

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6月12日(月)のつぶやき

2017年06月13日 | Weblog

「BLAME!」

2017年06月12日 | 映画
背景・メカデザイン、音響設計は素晴らしくスクリーンで見た価値があったというもの。あいにく(特に音は)最上の環境ではなかったようだが。

ただしひとつの世界を体験すること自体が目的になっていて、そこでキャラクターが変容していくいわゆる一般のドラマの作り方とは違うのだな、と思いながら見ていた。どこかパイロット版みたいで世界観を提示して「マッドマックス2」みたいに一種神話的なタッチで締めくくる。

だいたい、冒頭しばらくはキャラクター全員ヘルメットをかぶっていて見分けがつかず、ヒロイン(というより語り手)だけがわずかに顔が出てくるといった調子なのだから。

アクションシーンで画面が暗くて動きが早すぎて、獲物を仕留めた手ごたえが薄いのがやや薄い。
絵が動くアニメというより手書きの絵に近づけたCGといった方がよさそう。

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6月11日(日)のつぶやき

2017年06月12日 | Weblog

「トリプルX ネクスト・レベル」

2017年06月11日 | 映画
このシリーズ二作目でヴィン・ディーゼル→アイス・キューブと主演俳優が交代し、三作目の「再起動」でまた元に戻り、ただしアイス・キューブがゲスト的に出演するというかなり変な変遷を経ていて、実は三作目の方を先に見たので、なんでアイス・キューブが顔を見せたかと思うとすぐひっこむのか意味がわからなかった。

まあ、主役が誰であっても実際のところあまり変わらない。すでに「ワイルド・スピード」シリーズとかなり混ざっているし。
続きを作る予告をラストでして、今度はもっとすごいやつを探してくるなんて言っているのだけれど、結局元に鞘に収まったのね。

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映画『トリプルX ネクスト・レベル』 - シネマトゥデイ



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6月10日(土)のつぶやき

2017年06月11日 | Weblog

「メッセージ」

2017年06月10日 | 映画
ラストで全体の構造がわかった時、語り口としては1969年製作のアカデミー助演賞受賞のアメリカ映画のそれと同じ趣向であることがわかり、同時に時間というのを形成するのは言葉であり来訪者の言葉において時間は「流れる」ものではない、というテーマを映画の構造そのものが示しているのもわかる。
言葉=意思と時間、そして希望との関わりを端的に物語化し、静かで知的な語り口で描いた秀作。

エミリー・アダムスは1974年生まれの撮影時41歳で、落ち着いていると共に童顔でもある、つまり年齢がよくわからないのがけっこうものを言う。

地上4、5メートル浮いているマグリットの岩のような(デザインの元とばかうけwではなく、これだろう)異星人の乗り物の造形が即一般的な人間の在り方との違いを典型的に示す。

こういう時、アメリカ以外の国代表として中国が出てくるのはすでに常識化しているみたい。
(☆☆☆★★★)

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6月9日(金)のつぶやき

2017年06月10日 | Weblog

「ホドロフスキーの虹泥棒」

2017年06月09日 | 映画
ホドロフスキーとはいっても歳のせいかメジャーな製作のせいか「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」といったカルト作の過激さ奇想ぶりは薄くて割と普通のメルヘン寄りみたいな作り。

ピーター・オトゥールとオマー・シャリフといったらもちろん「アラビアのロレンス」のロレンスとアリーなわけで、このキャスティングですでに親友感と、国籍を超えた感じが出た。

ホドロフスキーの虹泥棒 公式ホームページ

映画『ホドロフスキーの虹泥棒』 - シネマトゥデイ

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