撮影の百々新という人はもともとスチルカメラマン(河瀬監督の前作「あん」のスチルを担当)で、映画の撮影はこれが初めてだそうだけれど、「芝居」を撮るというより物に迫るといった感じのような気がした。
永瀬正敏がどアップでも、というかどアップだからというか手にした物になめるように迫る弱視の感じになりきっている。ずうっと手にして自分の心臓だというカメラがローライフレックス(※)。今どき珍しいフィルム式で、光がとても綺麗に撮れるとのこと。
水崎綾女の顔を手で撫でるシーンのエロティシズム。
冒頭、映画の画面を説明する視覚障害者向けに音声ガイドが流れる冒頭、完成した映画にシナリオの文章をかぶせたようで一瞬映像いるのだろうかと思った。言葉から映像に向かう通常の映画作りの方向と逆に映画の画面を言葉に起こしていくわけで、映像の元になった言葉と映像と映像からまた起こした言葉とが重なり、通常の画と言葉と音の積み重ねだけとはまた違うある種徹底した迫り方をしている。
映画中映画の主役が藤竜也。「やすらぎの郷」でもそうだけれど、歳くっても色っぽいという役が似合います。
(☆☆☆★★)
(※)
【フィルムカメラ】ローライフレックスの使い方と作例
私とローライフレックス 2.8F"
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