prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「カード・カウンター」

2023年07月16日 | 映画
あれ、と思ったのはホテルに泊まっている若いタイ・シェリダンを訪問したオスカー・アイザックがそのまま部屋の奥に入っていき、手前にいるシェリダンがそのままドアを閉めないでやりとりするので、なんでドアを閉めないのだろうと思っていたら、ちょっと後の車の中の会話でシェリダンがドアを閉めるのが怖いと言っているのを耳にしてやはり意味があるのかと思った。
さらにモーテルに泊まっているアイザックが殴り込みに出て行く時にドアを開けっ放しにしているのだ。閉じ込められることに対する恐怖というのがあるのか。

セリフの合間を縫うようにナレーションが入るところや、家具をシーツ類で包むところ(クリストかおまえは)の手つき、監禁されていることが同時に解放されていることにねじれてつながるあたり、ブレッソンの「抵抗」や「掏摸スリ」をいやでも想起させる。
アイザックはアブグレイブで虐待に加担したという設定だが、ことはアブグレイブだけにとどまらず人が人を虐待することされること一般としてある。

ラストのふたりの手がガラスを隔てて触れ合うカット、あまりに動かないのでストップモーションかなと思ったらわずかに動いているのには驚いた。





「忌怪島 きかいじま」

2023年07月15日 | 映画
きかいじまというのは、奇怪と一緒に機械ともかけているのだろうな。
モチーフからして今風にVR(というのも今や古く感じる)をばりばりに取り入れているのかと思うと、そちらには深入りしないで怪奇的な表現の方にとどめている。

幽霊と違ってAIだマルチバースだといってると、すぐ古くなりますからね。





「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」

2023年07月14日 | 映画
吹き替えの方が館数は多いのだが時間の関係で字幕で見た。
マリオの声がクリス・プラットなのはイメージ通りだけれど、ピーチ姫がアニャ・テイラー=ジョイなのは意外なようで考えてみると納得。

ふたりの兄弟が異世界に行くところで片方は明るい世界、片方は暗い世界といったんストーリーを二つに割って、ラストで帰郷するのと同時に異世界もひとつになるという構成が上手い。





「フォックスキャッチャー事件の裏側」

2023年07月12日 | 映画
兄弟の片方がいなかったり、劇映画の「フォックスキャッチャー」とはかなり違う。
もっともドキュメンタリーにはドキュメンタリーなりに「作ってある」わけだが。

カネの力というものを端的に知らされる内容で、デュポンがスポーツ=レスリング選手を養成するのも「力」の信奉者であると共に、カネの力しか頼ることを知らない、だからあっさり何の説明もなく選手やコーチを馘首したりする。

劇映画の方には描かれなかったと思ったが、荒廃した豪勢な屋敷がこちらには登場し、なんでこんなに荒廃しているのだろうと思わせる。

デュポン家の当主が殺人を犯したとなったら当然法によって裁かれると思われるのだが、どこかに付け入るスキがあるのではないかとひやひやする。




「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」

2023年07月11日 | 映画
ほとんど実験アニメの域に達していて、それも個人でできるスケールと密度ではなく、それなりの製作体制のバックアップがあって成立しているのは容易に想像がつく。
目が回るようなさまざまなタッチの画柄が混在しているのは、マルチバースそのもの。
しかもこれで二部作の第一部なのだから、飽食感も極まれりといったところ。





「ザ・フラッシュ」

2023年07月10日 | 映画
終盤、DCコミックの代表作を演じたC・R氏ばかりか現実には役をやっているところを見せていないN・C氏までが姿を現すのには驚いた。
役と役者の組み合わせがマルチバースだからなんでもありというわけだろうが、ラストで出てきた役者は役と結びつかないものでしばらく首をひねって、やっと思い出して納得がいった。困りますなあ。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の特にPART2のややこしい展開をあれだと図解つきでやっていたのを省略するようになっていて、辛うじてついていけたけれど振り落とされないようにしがみつくのが精いっぱい。
もうちょっとシンプルにいかないかないものねだりをしたくなる。





「オレンジ・ランプ」

2023年07月09日 | 映画
39歳で発症した若年性認知症の話なのだが、認知症に対するこちらの思い込みのせいかあまりそういう風に見えない。
老年性認知症とはまた違うのだろうか。

「先が長い」分、ムリをさせないというのが基本的な方針らしいけれど、ちょっと周囲の人たちが善意に過ぎるように映る。
意地悪だったりする場合のことを考えてみるとあえてそういう風に描いているとも思えるけれど、やはりちょっと甘く思える。





「大名倒産」

2023年07月08日 | 映画
松山ケンイチと高田延彦、それからキムラ緑子のメイクにびっくり。誰かと思った。
役者一同、誇張気味のコメディタッチについていっている。
佐藤浩市や浅野忠信が途中でキャラがぶれそうでぶれないで収まるところに収まる。

石橋蓮司と勝村政信が並んで神木隆之介が平伏している寺か何の実物を使ったと思しい、空間を生かして柱に傷がついていたりするロケセットの生かし方が印象的。

それにしても最近は時代劇というともっぱら経済ものばかりで切ったはったは影をひそめて久しい。良くも悪くも。

車椅子から一般席に乗り換えて利用している客がいた。考えてみると一番前か一番後ろにほぼ限定されるというのは不自由。





「ウーマン・トーキング 私たちの選択」

2023年07月07日 | 映画
前世紀の設定かなと思っていたところに自動車が登場したので、設定は2010年とわかる。
アーミッシュみたいな伝統的な、あるいは前世紀の遺物的な生活様式を守っている宗教コミュニティが舞台。

トーキングというが、おしなべて女性はおしゃべりで男はどういうわけか無口がよしとされる。自分もあまり話す方ではない。
これが宗教的な地位のある人が説教するとなると逆転して当然のように男がイメージされ、女はもっぱら聞く立場にくる。
おしゃべりと無口というのは場合にもよるが非対称なのだろう。

ここで唯一男のキャラクターとして登場するベン・ウィッショーが私生活ではカミングアウトしている同性愛者なのが意味を持つだろう。自分から沈黙を破ったのだから。

それにしても女の人がああも自然にしゃべれるというのはフシギ。自分もしゃべれない、少なくともブレーキがかかるわけを考える方が先とも思うが。





「aftersun アフターサン」

2023年07月06日 | 映画
淡々とした父との夏の日のスケッチの間にフラッシュバックならぬフラッシュフォワードがはさまるわけだが、どこかしらその際に感じる違和感が向かう方向が「恋」や「ひとりぼっちの青春」みたいに良くも悪くもはっきりしていないで、ぼうっとしている。

思い出と思い出後のコントラストというだけで満足というか十分という感じ。





「To Leslie トゥ・レスリー」

2023年07月05日 | 映画
宣伝ではアルコール依存症の女性の話というのだったが依存症というのは、飲み出したらとどまるところを知らないということで、そこまではいかず飲みそうで飲まないで踏みとどまる姿がむしろ目立つ。

ビールと一緒にテキーラを注いでいたりしているというのはどちらか選べるように保険をかけておいて、しかしどちらも結局飲まないということか。

ヒロインの生活態度はずいぶんと自堕落で、それでも見放さず乏しい手持ちのカネの中から用立てるモーテルの経営者やその周辺のキャラクターなど、どちらに転んでもおかしくないなりに収まるところに収まる。

経営者がモーテルの部屋に用意しているVHSをセットする形式のテレビデオ(ブラウン管)が東芝製、というのが時代がかっている。

ざらっとしたフィルムの質感がかえって新鮮。





「怪物」

2023年07月04日 | 映画
よく指摘されるように火事で始まる3つのパートに分かれていて、それぞれが互いに隠された出来事を明るみに出していくという構成をとっている。

最初のパートだけ見ていると教師たちの無責任と「死んだような目」だけが目立つし、2番目のパートでは無責任に見えた若い男の教員にもそれなりの責任感があること、三番目のパートでは子供たちだけの世界で生まれ変わったわけではないがそれなりに生きている姿が描かれるという具合に、誰にも「それなりの」生活があることが主軸に描かれる。

描写の線としては「羅生門」式に互いにまったく矛盾していて相容れないのとは違うし、あれほど力みかえってもいない。良くも悪くも穏当ないし初めから相対的と言える。

田中裕子と子供が演奏する調子が外れているようないないような音楽がBGMとしてオフでかかる、曲として出来すぎない処理が印象的。





「Tar ター」

2023年07月03日 | 映画
キツネにつままれたみたいな気分になった。
こういう気分には覚えがあって、タルコフスキーの「ストーカー」を見た時もこういう気分になったものだが、あの時とは歳が違うわけでそうなんべんも見る自信はない。

はっきりしているのはケイト・ブランシェット自身の社会的身分が最高峰の指揮者そのままなこと。
冒頭、エンドタイトルが先に出て、メインタイトルが最後に出るのは再生の象徴か知れないが、繰り返し挿入されるトンネルを走る自動車の端正な画面構成そのままに崩れそうで崩れないものだからあまりドラマチックにはならない。





「M3GAN ミーガン」

2023年07月02日 | 映画
呪われた人形ものを想像していると、ミーガンがやることが今のAIとかがやりそうな範疇からそれほど出ないのでスカされた気分になる。
悪役らしき奴がデータをコピーしていくのでどう生かされるのかと思ったら尻つぼみ気味。

ロボット三原則というのも最近は忘れられている気がするが、それを外したようなもの。
四つん這いになって追いかけてくる姿は気味わるいが、関節が人間ではありえない方向に曲がったりした方が面白くないかな。

主演のアリソン・ウィリアムズはどこかで見たことあるなと思ったら「元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件」の主演。





2023年6月に読んだ本

2023年07月01日 | 
読んだ本の数:25
読んだページ数:5150
ナイス数:0

P112に映画「国家の誕生」という記述があるが、おそらく「国民の創生」のこと。
読了日:06月01日 著者:リチャード・ブローティガン



読了日:06月02日 著者:諸星 大二郎




読了日:06月02日 著者:梶原一騎




読了日:06月03日 著者:清野 とおる




読了日:06月04日 著者:ビッグ 錠,牛 次郎



読了日:06月04日 著者:ミン・ジン リー




読了日:06月04日 著者:ミン・ジン リー




読了日:06月10日 著者:山本英夫




読了日:06月12日 著者:杉田 弘毅




読了日:06月12日 著者:安野モヨコ




読了日:06月13日 著者:村上 春樹




読了日:06月14日 著者:河合 単




読了日:06月14日 著者:河合 単




読了日:06月14日 著者:河合 単




読了日:06月15日 著者:おかざき真里




読了日:06月15日 著者:おかざき真里




読了日:06月18日 著者:小林 悠理




読了日:06月18日 著者:小林 悠理




読了日:06月19日 著者:石 弘之




読了日:06月19日 著者:古屋 兎丸




読了日:06月21日 著者:更科 功




読了日:06月21日 著者:開高 健




読了日:06月26日 著者:斎藤 幸平




読了日:06月28日 著者:




読了日:06月28日 著者:安田 弘之