曇り、13度、78%
家を数日空けて戻って来て、一番に、ああ、我が家だなと落ち着いた気分になるんはどんな時でしょう?お風呂にゆっくりとはいった時、座り慣れた自分の椅子の体を沈めた時、自分の匂いがする寝床にすっぽりと納まった時、奥さんが煎れてくれるお茶を一口、口に含んだ時。みんな様々でしょう。この私は、自分のために紅茶を用意するときです。
一歩家から出ると、紅茶は頂きません。友人宅で紅茶を出してくださるときは、お願いして最後の最後、出がらしでいいと言います。紅茶が美味しいという有名なお店でも、なんだか物足りなく思う紅茶です。だから、一歩家から出ると、完全にコーヒー党に変身します。
コーヒーだってそうですが、熱々でなくてはまず美味しくありません。日本茶ではありませんから。紅茶だとその次が香りです。そして、やはりタンニンが出るひとつ手前の濃さが私には必要不可欠です。紅茶の色は、葉っぱの産地によって違いますから、好みはセイロンの澄んだ赤、いえ、オレンジといった方がいいでしょうか。美味しいお店の紅茶は、温度もきちんとして、葉っぱの量も抽出時間もマニュアル通り、カップも熱々です。それでも、お金を出して外で紅茶を飲むのは控えます。
今回も香港に戻って、一晩明けた次の朝、ゆっくりと自分のための紅茶を煎れました。 葉っぱの量が紅茶によって加減出来るので、やはりルーズリーフの方が好きです。葉っぱの量は、紅茶の種類ばかりか自分の体調、季節によって変えて煎れます。全部トレーにのせて、何も考えずにボーッと葉っぱが開くのを待ちます。砂時計も時計も使いません。軽くポットを揺すって、ストレーナーを通って汲み出された紅茶の最初の色目で飲み時か、そうでないかを判断します。カップを口元に運ぶと、大きく香りを吸い込みます。折角の熱々です。時間をかけてゆっくりなんかしていたら、冷めてしまいます。胸元を落ちて行く紅茶がまだ熱く感じる内に飲み上げます。
昨日は、出かける前に買い求めておいたマリアージュフレールのカヌレの紅茶を入れました。カヌレ、あの真っ黒こげの小さなフランス菓子です。この紅茶はフランス菓子シリーズのひとつ、タルトタタンやマカロンの名前のものもあります。タルトタタンは、ルイボス。マカロンは緑茶でしたか?、紅茶は、カヌレとチョコレートスフレだけしかありません。缶に書かれている文章がまたなんともいい、子供の頃を懐かしむお菓子の数々、ふと懐かしさを呼び起こすお茶だと書かれています。私は日本人ですから、カヌレやマカロンに懐かしさはありません。私だったら、どんなお菓子の香りがいいかなと思いながら、紅茶を飲みました。不思議なことに何故だか懐かしい香りに感じます。
こんな葉っぱです。香港では、TWGの大きなお店はありますが、マリアージュの紅茶は、扱っているお店が限られていますし、種類もほんのわずかです。それでも、ずっとマリアージュのファンです。この紅茶も、飲み終えると、ああ、マリアージュの紅茶だわ、と後に残る深い香りが好きです。
一人で煎れるお茶は、どれも葉っぱの量をケチりません。そして、ゆっくりと待ちます。やっぱり、我が家です。