雨、17度、90%
私の実家の改築を決めて、1年が過ぎました。この改築のことをブログに書かないので、友人からは、建て直しは止めたの?と尋ねられる始末です。いえいえ、工事が遅々として進まないでいました。現場に足繁く行くことも出来ません。また、出来上がってもすぐに住むとも限りません。
のんびりした工事が、年が明けた頃から、少しずつ形になって出来上がってきます。窓枠の色は?とか昨日などはコンセントの数や位置まで尋ねてみえます。お願いした時に作ってもらったフロアープランも、手直しが加えられ、先月の私の帰国時には壁も出来ていましたので、部屋の寸法も次第に解ってきました。台所の什器の下見を済ませ、カタログなどと一緒に持ち帰ったフロアープランには、台所の寸法が入っていませんでした。採寸をお願いしたものの、お返事が来ないでいました。すると、主人がカタログの横でなにやら計算を始めています。フロアープランの縮尺と長さから、台所のサイズを測り出しています。縮尺が合っていないと、実寸が書かれている風呂場から比率を出して、長さを出したようです。縮尺から割り出して行くあたりは、流石男性だと感心する私です。台所にどうキッチを据え付けるか、幾つかの案を出していました。すると、やおら主人が私の肩幅を測ります。また、ちょろっと計算をして、紙を小さくちぎって私の名前を書きました。 この紙の長い辺が私の肩幅の縮小です。これを、フロアープランの上で動かします。動線、部屋のスペース、ドアの間隔などが一目で解ります。なかなか便利な紙人形です。主人は、この紙の私を置いたままにしていたので、窓を開けて風に飛ばされては大変と、ゼムクリップで重しを付けました。
主人は、当初から台所とリビングをひとつにした広い空間を望んでいます。反対に私は、独立した台所、ドアも付いたひとつの部屋の台所が望みです。最近は、対面式とかの台所、オープンキッチンが流行です。10年程前に買ったマンションも人に貸したままですが、確か対面式のキッチンだったと思います。オープンキッチンも流しの背にダイニングがある従来型のものから、今では広い部屋の一角にキッチンを備え付ける設計もあるようです。
私は、独立した台所を欲しい理由を、他人には、つまみ食いが出来ないからね、と冗談めかしに話していますが、ほんとの理由は別にあります。台所の使い方は家庭によって千差万別です。家族の人数、作る料理の種類、来客の数、その要因はいろいろです。私が、独立した台所を望む一番の理由は、洗いものです。洗いものを流しに溜めることはありません。使った先から洗ってしまうタイプです。でも、週の内何度か、パンを焼く、お菓子を作る、作りおきのもの作る、そんな作業を一度にすることがあります。手が空けば、洗いものをしますが、全部が一段落付くと、流しの中は、重い鉄の鍋、たくさんのボールにこれまたざるなどが山積みになっています。時には、床にまで積んであったりします。さすがに、この状況はオープン型のキッチンでは、見られたものではありません。
主人は、私の性格が閉じこもってじっとしていたい暗い人間だから、台所を独立させたいのだろうと言います。台所がオ−プンでも独立していても、私にとっては、台所は作業場です。洗いものを片付ける時も、オーブンを覗き込んでいる時も、お饅頭を丸めている時も、私にとっては仕事です。
香港に来て以来ずっと独立したの台所です。息子がいた頃は、学校から帰って来ると台所の入り口に立って、その日の話をしてくれました。どの台所も、せいぜい2人入れば充分な広さです。そして、どの台所にもスツールがひとつ置いてありました。背が低いので、高い所のものを取るのにも使います。でも、もっと大事な使い方、きちんと片付いた台所中で、スツールに座り、オーブンの中のお菓子やパンんが焼ける様子を見ることです。小さな台所に焼き上がるパンやお菓子の香りが一杯です。そして、どの台所にも窓がありました。
人から見れば、独立した台所なんて、閉じこもりがちな暗い人間が使いそうに思われるでちょうね。独立した台所、その中は私にとっては楽しみが一杯です。さて、ドアも付いた独立した台所が出来ますでしょうか。