曇り、15度、88%
パンを買っていた頃には、考えも付かなかったのですが、パンを焼き始めると、気になるのが粉です。パンですから、概ね強力粉。しかも、日本なら何でも揃うところが、ここ香港では、パンを家庭で焼くなんて、20年以上前には珍しかったので、強力粉の入手には、ほとほと手を焼きました。日系のパン屋さんに知人がいた頃は、お願いして粉を分けていただいていました。近年は、世界中から粉が集まって来ています。タイや韓国の粉まで試してみました。それがここにきて、ホームベーカリーの流行です。お高い日本の強力粉まで店頭に常時並びます。ありがたい話です。
2、3年前から、日本国産の小麦粉が気になり始めていました。パンの延びやこしや引きの強さはどんなふうだろう?そんなことを考えていると、昨年、銀座にオープンした食パンだけのパン屋さん、3種類しかない食パンのひとつを国産小麦粉で作っていることを知りました。その強力粉の名前は、「ゆめちから」。北海道の小麦から作られています。
「ゆめちから」、どうにかこの粉を手に入れたいと切に望んでいると、昨年香港にもオープンした富澤商店で扱っています。我が家にあったストックの粉を使い切って、大事に抱えて帰って来た「ゆめちから」です。ただし、このゆめちからはブレンドものです。100%「ゆめちから」ではなく、他の中力粉を混ぜてあります。
我が家の2斤型には粉を650g使います。 粉によって加減するのは、水の量です。スタンド型のミキサーでこねて、最後は手でこねます。ここで、生地の柔らかさ、弾力などを確かめます。一時発酵を終えると、縦延びも横延びもする生地でした。この確認をしていないと二時発酵の時間が読めません。
焼き色ばかりは初めて使う粉では、皆目分からないので、スタンダードな焼成温度、時間を設定します。プルマンの蓋を開けると、 いい色に仕上がっています。 型から出してみました。やや持ち重みのある柔らかなプルマンローフです。柔らかいせいか、角がきちんと立っていません。
ゆめちからのパンの評判は、モッチリとしたきめの細やかさ、耳まで柔らかい、とあります。完全に冷めたパンを一切れ切ってみました。 この切り口を見ただけで、思わずわーっと言ってしまいました。通常、21枚に切り分けるのですが、柔らかいので、18枚にしか切り分けられません。
さて、お味の方は。確かにモッチリとしています。お餅のようではありません。モッチリというよりしっとりとしています。そして、評判通り、耳も柔らかい。粉の旨味も感じられます。残念なことに、粉のというか、小麦の香りが薄いように思います。
大手のPASCOでも、ゆめちからというパンが出ているそうです。こちらは米粉もブレンドして作っているそうです。
初めての国産小麦粉のパン、ここまで、粉作り、小麦造りにこだわるのはやはり日本人です。そして、このパンも日本人が喜ぶ食感だと思います。ゆめちから100%の粉で、パンを焼いてみたいと思っています。カナダ産の小麦で日本で製粉された小麦粉の香り、オーブンから立ち上がってくるあの香りを、ゆめちからにも持ってもらいたいものです。