ガス、21度、92%
私達は雑誌で育って来た年代かも知れません。昭和30年代初め産まれ、もうすぐ60歳になろうとしています。日本を離れて30年近く、日本の雑誌が面白くて、帰国する度本屋の店先で片端から立ち読みしていたのは、10年ほど前までのことです。
雑誌にはその雑誌の代表となる編集長の名前が記載されています。この編集長というものが気になり始めたのが、やはり10年ほど前のことでした。「暮しの手帖」の編集長に松浦弥太郎さんが就任したころです。COW BOOKSという古本屋さんの頃から松浦さんは何処か違う方だと思っていましたから、さすが、「暮しの手帖」はいい人を探し当てたと思いました。予想通り、松浦さんが編集を手がけるようになって、「暮しの手帖」は面白くなりました。売り上げも随分伸びたと聞いています。
「考える人」、新潮社から出ている雑誌も好きなひとつでした。写真、記事とも、読み応えのある雑誌です。初代の編集長松家仁之さんは、週一回メールマガジンを出していました。確か火曜日だったと思います。そのメールマガジンがこれまた楽しみでした。古今の本一冊に付いて書かれたものでした。松家さんが編集長を辞められて、何処がどう変わったという訳ではないのに、「考える人」を買うのは稀になりました。
マガジンハウスの「クウネル」、これは2月に一度の刊行ですが、楽しみにしていた頃があります。薄さといい、紙の質といい。創刊から2010年頃までは、岡戸絹枝さんが編集長をなさっていました。雑誌「オリーブ」の最全盛をを作った方です。岡戸さんが編集長の頃の「クウネル」はどの記事も目の前がすっきりとするビジョンがありました。何をどう取り上げるか、明確にそのツボを抑えた雑誌でした。岡戸さんがお辞めになって、全く同じ作りの雑誌なのに手に取らなくなりました。
先月、「クウネル」がリニューアルすると聞きました。編集長は、「オリーブ」「ギンザ」を経た淀川美代子さんです。期待に胸を弾ませて、先日帰国した時にはまず一番に「クウネル」を買いました。フランスと書けが飛びつく日本女性の心をよくご存知です。ところが酷評を受けています。以前の「クウネル」より大判、50歳以上の女性がターゲット。読めばそのピントがやや外れている感は否めません。
「考える人」初代編集長の松家さんと「クウネル」の初代編集長の岡戸さん、このおふたりが編集監査をしている雑誌が昨年出ました。「つるとはな」です。 不定期刊。まだ2号までしかでていません。岡戸さんらしい繊細な視線を持っている雑誌です。
「暮しの手帖」の編集長を松浦さんは昨年お辞めになりました。これからどんな「暮しの手帖」になるのでしょう。「クウネル」も「つるとはな」もまだどんな雑誌と決めることは出来ません。
雑誌の編集長、テーマを決めたり、原稿の依頼をしたり、雑誌自体の構成を考えたりなさるのでしょうが、その人柄、その人となりが大きく反映されることに気付きました。息の長い雑誌には、揺るがない視点があるように思います。