曇、14度、78%
中国が原産と言われている柳の木です。ところが香港でこの柳を目にした記憶がありません。柳に水辺は付き物ですが、水辺は河か池だと思います。つまり淡水。そう思えば大きな池や川がない香港です。
まだ時折小雪の舞う大濠公園を走り始めたのは2月の中旬でした。なんと半世紀ぶりに大濠公園を走ることになりました。緑を蓄えている常緑樹もありますが、濠の周りにはすっかり裸の木が立っています。何の木だったか、柳の木に違いないと記憶を辿ります。
毎朝、裸の木を見て走っていました。日が昇るのも次第に早くなりました。帽子や手袋をしなくても走れるようになりました。遠目にも柳の新芽が吹き始めたのを感じました。柔らかな柳の芽です。芽吹きの時期は黄緑です。小さな芽がついた柳はイガ栗頭のようにも見えました。流れるような柳の優しさではありません。石川啄木の歌を心でつぶやきながら、芽が大きくなるのを待ちました。
大濠公園の柳の木は木姿がはんなりとはしていません。どちらかというとがっしりとしています。中国陶磁器の柳の模様のような細くゆらゆらした木ではありません。それでも他の木に比べると柔らかな木です。
大濠公園を回り終える頃、東の方を見れば朝日がずんずん昇るのが柳を映し出しています。 この春30年ぶりの日本で私が待ち焦がれたのは、桜とこの柳でした。