曇り、7度、80%
今日は鏡開き、もち飾りを解きます。この家に戻って来て以来、もち飾りは書院に飾ります。大きなもち飾りではありません。正月ですが、派手にならず質素な飾りを心がけます。
私が育ったこの家、家は壊して土地も売るつもりでいました。そうずっと心に決めていたのに、どうしても残しておきたい一角がありました。「書院造」の部分です。玄関を開けると襖が開いていれば一直線に目に入るのが「書院」でした。小さい頃からこの家自体はそう好きでもないのにこの「書院」の景色だけに惹かれていました。母はろくに手入れもしなかった家ですが。座敷のこの一角は傷みもなく残っています。
この家を残すことに決めたのは主人です。しかも主人はこの「書院」などには何の思いもありません。書院も床の間も壊すつもりでいました。家の改築でほとんど私の意見は聞かれなかったもののこの書院と床の間だけは残してもらえました。
書院は暗い時も光を通す時もそれなりの趣を作ってくれます。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の文章通りです。今では電気がありますから、夜はこの天井の高い部屋でも煌々と明るくなりますが、日の光だけでこの「書院」を見ると心落ち着く眺めです。
もう一つ、 床の間と「脇」の間の壁に8角の窓が切られています。この窓から「脇」の壁に8角が影をなす様子も小さい頃から好きでした。今では畳は除かれ天井板も取り払われてこの一角を除けはすっかり洋間です。でも私に取ってはいまだに「座敷」です。
今日はこの「書院」に飾った餅を解いて、昨日からコトコトと炊いた小豆と一緒に食べます。「餅飾り」を払った後は何を置きましょうか。餅飾りの姿も書院に置くと一際日本らしさ、単純な美しさを感じます。しばらくはこの光だけを楽しみましょう。