雨、14度、78%
私が生まれる前からこの家にあった食器棚、中にはガラスのグラスが入っていました。下の扉の中には漆器などが箱に入って収められていました。滅多に使わない物を仕舞ってあった食器棚です。物心ついた時から家の中の物で一番好きだったこの食器棚、私が使い始めて5年が経ちました。
掃除はしない、物が壊れてもそのままだった母がこの家で過ごしていた頃には、左の扉のガラスはなく、中のグラスの壊れたまま入っていました。掃除をしないので埃が積もっていました。上下の扉を開けるのも一苦労、蝶番も錆びていました。ガラスを入れて、下の扉の中に棚を作り、拭いて拭いて、蝶番に潤滑油を指して手入れをしました。拭いても拭いても雑巾が黒くなります。潤滑油を指してもギーギーと扉は音を立てました。
私は普段使いの食器を入れています。毎日上下の扉を開け閉めします。数日前ハッと気付きました。音がなくスムーズに扉が開きます。そういえば最近雑巾も汚れなくなりました。気付くと嬉しくて幾度も扉を開け閉めしました。滑らかに扉が開きます。手入れをした甲斐がありました。
隣には私が結婚以来使っている食器棚があります。 40数年、箸の出し入れ、茶器の出し入れ触れない日はありません。引き出しのノブは色が薄くなりました。台所にいればこの2つの食器棚が目に入ります。毎日目にしているのに、改めてゆっくりと眺めました。
古い食器棚はどのくらいこの家にいるのでしょう?扉を開けながら思います。「やっと私のものになったわね。」