夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブラインドネス』

2009年05月19日 | 映画(は行)
『ブラインドネス』(原題:Blindness)
監督:フェルナンド・メイレレス
出演:ジュリアン・ムーア,マーク・ラファロ,伊勢谷友介,木村佳乃,
   ダニー・グローヴァー,ガエル・ガルシア・ベルナル他

レンタル開始後すぐに観たので、もうひと月以上経っているのですが、
新型インフルエンザでえらい騒ぎになっている現在にぴったり。

『シティ・オブ・ゴッド』(2002)のブラジル人監督による、
日本/ブラジル/カナダの作品です。

ある日、車を運転中の日本人男性が突然視力を失う。
目の前が真っ暗ではなく、真っ白に。
通りすがりの男性が、代わりに車を運転すると申し出て、
日本人男性を家まで送り届けるが、
親切を装った泥棒で、車を乗り逃げされてしまう。

日本人男性は帰宅した妻に付き添われて病院へ。
眼球に異常はなく、医師はしばらく様子見だと言う。
ところが、その後、各地で同様の患者が続出。
同時刻に眼科にいた者も、医師も、受付係も、あの泥棒も失明。
やがて彼らが接触したすべての人びとに感染が拡大してゆく。

政府は緊急事態とみて、患者の隔離を始める。
かつて精神病院だった建物に患者を搬送すると、外部と遮断。
なぜか感染しない医師の妻は、夫のそばにいるために、
自分も見えないふりをして建物に潜り込む。
目が見えることは伏せ、増え続ける患者たちを相手に、
自分はここでの生活にすでに慣れたからと、世話を買って出るのだが……。

ひとりだけ見えるということがこんなにも恐ろしく、寂しい。
そこには想像を絶するおぞましい状況が広がります。
不潔極まりない空間。食糧の争奪戦。夫の浮気まで。
もともとの盲人が威力を発揮し、
その盲人を従えて王に君臨しようとする者も登場。
外部から差し入れられた物資を丸取りし、
配給を求める者への交換条件はとんでもない話。

実際にこんな状況下におかれたら、
本作で起きることがあながち大げさとも思えません。
感染の原因が何だったのかは一切語られず、パンデミックのもと、
人間の尊厳が失われる過程が露わになります。

本作には人種も職種もいろいろな人が入り混じり、
伊勢谷友介と木村佳乃のふたりにも違和感はありません。
ただ、終盤のシャワーシーンで、大女優も堂々と脱いでいるのに、
木村佳乃だけは見せません。往生際悪し!?

神が与えた試練であるかのような突然の出来事。
そして、それらを洗い流すかのような雨。

本当に大切なもの、見えていますか。

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