夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『旅人は夢を奏でる』

2014年03月03日 | 映画(た行)
『旅人は夢を奏でる』(原題:Tie Pohjoiseen)
監督:ミカ・カウリスマキ
出演:ヴェサ=マッティ・ロイリ,サムリ・エデルマン,イリナ・ビョークルンド,
   マリ・ペランコスキー,ペーテル・フランツェーン,エリナ・クニフティラ他

前述の『ジョバンニの島』を観たあと、梅田スカイビルへてくてく。
先月末で閉館した梅田ガーデンシネマ、私の見納めとなったのは本作でした。

フィンランドを代表する監督といえばカウリスマキ兄弟。
どちらも独特の間(ま)が可笑しくて、いつもニヤリ。大好きです。
弟のアキ・カウリスマキ監督に比べると、兄のミカ・カウリスマキ監督はずいぶん寡作。
そんなお兄さんの新作に惹かれてか、この日のガーデンシネマも8割の入り。

30代後半の男性ティモは人気ピアニスト
しかし、一日中ピアノに没頭する夫に恐怖を感じた妻は、幼い娘を連れて実家へ帰ってしまう。
戻ってくる見込みもなく、ティモに残されたのは多額の住宅ローン。
途方に暮れつつも、今は数々のコンサートをこなすしかない。

そんなある日、帰宅すると、部屋の前に見ず知らずの怪しげな男が。
酔っ払いが寝転がっていると通報しようとしたところ、
その男が「ティモ」と親しげに名前を呼ぶではないか。

「誰だ」と問うティモに、男はなんと実の父親レオだと答える。
レオはティモが3歳のときに姿を消したきり。
ティモを育ててくれた母親はすでに他界、
よくも今になって出てこられたものだとティモは呆れるが、レオのほうはどこ吹く風。
翌日、車を用意するから運転してくれとティモに頼み、
どこからか持ってきた車のエンジンを直結して始動。

こうしてどこへ向かうのかもわからないままティモは車を運転させられ、
父親と息子のドライブがはじまるのだが……。

レオ役のヴェサ=マッティ・ロイリ、ちょっと苦手なぐらい太っていて(すみません)、
その腹やお尻などは「見とうないっちゅうねん」と言いたいぐらいなのですが、
あまりにも憎めないキャラクターのおかげか、徐々に嫌悪感が薄まってきます。

ティモ役のサムリ・エデルマンは、私の好きな「無愛想なイケメン」。
この父親でこの息子ですかと言いたくなるほど。
笑わない彼と、ほかの誰かの噛み合わない会話がとても可笑しい。
そんな彼がレオに振り回されるうち、声を上げて笑うようになります。
普段笑わない人の笑顔は本当にイイ。見られたら、得した気分。

レオ曰く、人生は40歳ぐらいからが楽しいと。
無駄なものに頭を悩ませなくなるんですと。
40歳までお互い独身だったら結婚しようと約束していた女性に会いに行き、
「遅すぎる」と言われたレオは、「(遅すぎると言うけれど)30年だけじゃないか」とも言います。

いろいろ後悔があっても、人生の終わりにそれを回収すべく行動できたら。
梅田ガーデンシネマ最後にこの作品を観られてよかったです。

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