『アクト・オブ・キリング』(原題:The Act of Killing)
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
4月19日からシネマート心斎橋にて、5月3日からシネ・リーブル梅田にて公開。
後者のほうがわが家からは近く、メンバー料金も安い。
後者での公開を待つことにして、『クレヨンしんちゃん』を観るつもりだった日、
やっと発表されたシネ・リーブルの次週スケジュール表を見たら、
なんと公開初日から20:00~の1日1回上映やないの。
そんな時間には家庭を捨てなければ観に行けません(笑)。
というわけにもいかないので、“御堂筋ジョイふる2014”が開催された雨降る「昭和の日」、
シネマート心斎橋へ。
デンマーク/インドネシア/ノルウェー/イギリス作品。
監督は今年40歳になるアメリカ人で、ハーバード大学とロンドン芸術大学に学んだインテリ。
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭では『殺人という行為』というタイトルで上映、
今年の劇場公開にさいしては原題そのままで。
「殺人という行為」よりも「殺人の再演」というほうがぴったり来ます。
1965年から1966年にかけて、インドネシアで発生した20世紀最大規模の大虐殺。
後に大統領となったスハルトを支えてきた愛国青年団“パンチャシラ”が、
当時のスカルノ政権下で起きたクーデターに共産主義者が関わっていたとして、
共産主義者を一掃すべく100万人以上を殺害したと言われています。
クーデターは、スカルノの民主主義宣言に危機感を抱いていたスハルトによる陰謀との説もあるようです。
政治的な暴力と想像力との関係に興味を抱いたジョシュア・オッペンハイマー監督は、
当初、虐殺事件の被害者側に取材を試みました。
ところが、警察や軍のさまざまな妨害に遭い、被害者側への接触を禁じられてしまいます。
ならばと監督は方向転換、加害者側に取材することに。
パンチャシラを構成する民兵は、もとは不良やヤクザ、いわばならず者。
そんな彼らのうち、虐殺に直接手を下した加害者たちは、
隠れて生きるどころか英雄として崇められ、今も富裕な生活を送っています。
いったい彼らはどんな思いでいるのか、それを知りたい監督は、
殺人部隊のリーダーだったアンワール・コンゴに凄いことを申し入れます。
虐殺の様子をあなたたち自身で演じてみないかと。
嬉々として撮影に臨み、誇らしげに殺人の様子を語るアンワールたち。
彼らのみならず、共産主義者を悪者に仕立て上げるのが自分の仕事と言い切る新聞記者も。
ただただ、何なんだ、こいつらはと、胸くそがわるくなり、唖然とするばかり。
『レイルウェイ 運命の旅路』を観たときに、
良心そのものを失わせてしまうのが戦争なのかと書きました。
本作の彼らに罪悪感はありません。
当初から罪悪感を持ち合わせていたとおぼしき人物も、
罪悪感を持たないように考え方を変えていたと語ります。
被害者の役を演じてみて、拷問される側の気持ちがわかったと言うアンワール。
そんな彼に監督がぴしゃり。
「拷問される側の気持ちはそんなものじゃないと思いますよ。
彼らは殺されることを知っていたのですから。これは映画です」。
それでもわかったんだと言われても。
胸くそが悪くても、虫唾が走っても、この現実は見なくちゃいけない。
エンドロールに並ぶ“ANONYMOUS(=匿名)”。
危険が伴うとわかっていながら製作に関わった人たちがいます。
虐殺の事実を忘れ去ってはいけない。
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
4月19日からシネマート心斎橋にて、5月3日からシネ・リーブル梅田にて公開。
後者のほうがわが家からは近く、メンバー料金も安い。
後者での公開を待つことにして、『クレヨンしんちゃん』を観るつもりだった日、
やっと発表されたシネ・リーブルの次週スケジュール表を見たら、
なんと公開初日から20:00~の1日1回上映やないの。
そんな時間には家庭を捨てなければ観に行けません(笑)。
というわけにもいかないので、“御堂筋ジョイふる2014”が開催された雨降る「昭和の日」、
シネマート心斎橋へ。
デンマーク/インドネシア/ノルウェー/イギリス作品。
監督は今年40歳になるアメリカ人で、ハーバード大学とロンドン芸術大学に学んだインテリ。
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭では『殺人という行為』というタイトルで上映、
今年の劇場公開にさいしては原題そのままで。
「殺人という行為」よりも「殺人の再演」というほうがぴったり来ます。
1965年から1966年にかけて、インドネシアで発生した20世紀最大規模の大虐殺。
後に大統領となったスハルトを支えてきた愛国青年団“パンチャシラ”が、
当時のスカルノ政権下で起きたクーデターに共産主義者が関わっていたとして、
共産主義者を一掃すべく100万人以上を殺害したと言われています。
クーデターは、スカルノの民主主義宣言に危機感を抱いていたスハルトによる陰謀との説もあるようです。
政治的な暴力と想像力との関係に興味を抱いたジョシュア・オッペンハイマー監督は、
当初、虐殺事件の被害者側に取材を試みました。
ところが、警察や軍のさまざまな妨害に遭い、被害者側への接触を禁じられてしまいます。
ならばと監督は方向転換、加害者側に取材することに。
パンチャシラを構成する民兵は、もとは不良やヤクザ、いわばならず者。
そんな彼らのうち、虐殺に直接手を下した加害者たちは、
隠れて生きるどころか英雄として崇められ、今も富裕な生活を送っています。
いったい彼らはどんな思いでいるのか、それを知りたい監督は、
殺人部隊のリーダーだったアンワール・コンゴに凄いことを申し入れます。
虐殺の様子をあなたたち自身で演じてみないかと。
嬉々として撮影に臨み、誇らしげに殺人の様子を語るアンワールたち。
彼らのみならず、共産主義者を悪者に仕立て上げるのが自分の仕事と言い切る新聞記者も。
ただただ、何なんだ、こいつらはと、胸くそがわるくなり、唖然とするばかり。
『レイルウェイ 運命の旅路』を観たときに、
良心そのものを失わせてしまうのが戦争なのかと書きました。
本作の彼らに罪悪感はありません。
当初から罪悪感を持ち合わせていたとおぼしき人物も、
罪悪感を持たないように考え方を変えていたと語ります。
被害者の役を演じてみて、拷問される側の気持ちがわかったと言うアンワール。
そんな彼に監督がぴしゃり。
「拷問される側の気持ちはそんなものじゃないと思いますよ。
彼らは殺されることを知っていたのですから。これは映画です」。
それでもわかったんだと言われても。
胸くそが悪くても、虫唾が走っても、この現実は見なくちゃいけない。
エンドロールに並ぶ“ANONYMOUS(=匿名)”。
危険が伴うとわかっていながら製作に関わった人たちがいます。
虐殺の事実を忘れ去ってはいけない。