夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』

2014年06月26日 | 映画(あ行)
『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』
監督:行定勲
出演:芦田愛菜,伊藤秀優,青山美郷,入江甚儀,丸山隆平,
   八嶋智人,羽野晶紀,いしだあゆみ,平幹二朗他

109シネマズ箕面にて、前述の『超高速!参勤交代』とハシゴ。

原作者の西加奈子はベストセラーを次々と生み出す人気作家ですが、
私はまだ1冊も読んだことがありません。
映画化された前作『きいろいゾウ』(2012)がどうにも退屈だったせいで、
原作を手に取る気になれずにいました。

ところが本作で関西出身の人だと知り、グッと親近感。
キャストにも関西圏出身の人がずらり並んでいるので違和感なし。
あえて文句をつけるとすれば、太陽の塔が映る北摂辺りでは、
あまり「~け」で終わるような大阪弁は使いません。
同じ大阪弁でも、淀川を挟むとかなり変わる。大和川を挟めばまた変わる。
本作に登場するのは、原作者の出身地である南のほうの大阪弁が基かしらん。

小学3年生の渦原琴子(芦田愛菜)、通称こっこ。
公団に祖父母(平幹二朗&いしだあゆみ)と父母(八嶋智人&羽野晶紀)、
三つ子の姉(青山美郷が三役)とこっこの8人家族で暮らす。
狭い家だというのに、台所にはどでかい円卓。
大皿料理が並ぶ円卓をみんなで囲み、くるくる回して食べる賑やかな食卓。

しかし、孤独に憧れるこっこにとって、それは嬉しくないこと。
母のお腹にこっこの弟か妹ができたと聞いても喜べない。
人とちがうことが何よりも“かっこええ”。
めばちこができて眼帯をする同級生や、不整脈で倒れた同級生、
ボートピープルや在日韓国人3世の親を持つ同級生、
それがとにかく格好良く見えて羨ましいのに、
真似をすると担任のジビキ先生(丸山隆平)から「おまえはちゃうやろ」と怒られる。

公団の向かいの棟に住む同級生の男子ぽっさん(伊藤秀優)。
吃音がかっこええぽっさんと、こっこは大の仲良し。
生き物が飼いたくて仕方なかったこっこは、
夏休み中、上級生が飼育するウサギの散歩をぽっさんと請け負う。
自由研究のネタ探しにも忙しい日々を送るのだが……。

本作のキャッチコピーが「小学三年生を経験したすべての大人たちへ」、
今夏公開の『STAND BY ME ドラえもん』のキャッチコピーが
「すべての、子ども経験者のみなさんへ。」。
2本続けて予告編を観たときは、あのなぁとゲンナリしかけましたが、
本作のジビキ先生の台詞が心に残ります。
「子どもの考えてることはわからへん。自分も子どもやったのになぁ」。
そうです、どうして忘れてしまうのでしょう。
それでも、眼帯や湿布に憧れる気持ちはわかりますよね(笑)。

冒頭いくつかのシーンでは、芦田愛菜ちゃんが芸達者すぎるのが鼻につく感じでしたが、
以降はちょっと控えめな演技にやっぱり上手いと舌を巻きます。

「しね」と書いた紙を机の中に溜め込んでいた同級生が休んだとき、
思い立って家を訪ねるこっこと友人たち。
別に学校で嫌なことがあったわけじゃない、でも面白くないから行かないと。
彼女が登校したとき、学校を面白いと思わせる秘策がアッパレ。
私も想像力をかき立てられて、心にじんわり美しい光景が広がりました。

余談ですが、うちの近所では鹿って珍しくないんです。
本作では大騒ぎとなった光景に、うちでは普通やけどと思いつつ、
去年だったか一昨年だったかの帰りがけ、
ちょうど小学3年生ぐらいの男の子3人に呼び止められたのを思い出しました。
私の車の行く手をさえぎり、「し、し、鹿がおるねん!」。
近所に住んでいるとは言え、初めて会った子どもたち。
見知らぬ私とも分かち合いたかったであろう興奮。
思い出すたびにクスッと笑ってしまいます。

帰りに乗るバスをまちがえて、30分近く歩くはめに。
だけど、夕焼けや鹿の話を思い出しながら歩いたら、
そんなにしんどくもありませんでした。

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