『誰よりも狙われた男』(原題:A Most Wanted Man)
監督:アントン・コルベイン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン,レイチェル・マクアダムス,ウィレム・デフォー,
ロビン・ライト,グリゴリー・ドブリギン,ニーナ・ホス,ダニエル・ブリュール他
TOHOシネマズ西宮にて2本ハシゴ。その1本目。
一昨日83歳の誕生日を迎えたばかりのジョン・ル・カレ。
1961年に小説家としてデビューしてから半世紀以上、
いまだに書き続けているって凄いこと。
その半分の齢とは言わずとも、まだ46歳だったのに、
今年2月に急逝してしまったフィリップ・シーモア・ホフマン。
手足短くポテッと出たお腹、イケメンにはほど遠かったけれど、
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992)で軟弱な高校生役の彼を見て以来、
味のある風貌と声と演技が好きで、ずっと注目してきました。
その彼最後の主演作、彼がこの世にもういないことが本当に残念でなりません。
ドイツのハンブルク。
同国の諜報機関で、テロ対策チームを統率するバッハマンは、
チェチェン人の青年イッサの密入国を確認する。
イッサはイスラム過激派と関わりがあると見られ、国際指名手配されている。
したがって、他国の諜報機関もイッサの行方を追っていた。
現時点でイッサの行方を把握しているのはバッハマンのチームのみ。
イッサは親切なトルコ人親子に匿われており、政治亡命を希望。
その親子を通じて人権派の弁護士アナベルに救いを求めているらしい。
アナベルは、イッサの父親が同国の銀行口座に多額の預金を遺していると知り、
銀行家のトミーにその預金を下ろしたい旨を伝える。
この動きも察知したバッハマンは、アナベルとトミーにも接触、
なかば脅迫じみた手段でふたりの協力を取り付ける。
捜査を進めてみると、イッサは過激派の人間などではない。
父親の多額の遺産も、どうせ悪事を働いて貯めた金だから要らないと本気で言う。
イッサを追えば、イッサの意図に反してたどり着くであろう悪の元凶を潰せるはず。
バッハマンは、遺産をある団体に寄付するようにアナベルからイッサに提案させると、
それがテロ組織の資金源に流れると考えて行動を開始するのだが……。
かつて、CIAの介入を阻止できずに、心ある情報提供者を守れなかったバッハマン。
今回はそうならぬよう、イッサを守り抜けるよう、慎重に事を進めます。
しかし、イッサの居所がわからずとも、バッハマンを監視していれば済むこと。
どんな人物であろうとも容疑者はみな同じ、
引っ捕らえてしまえばいいというCIAやバッハマンの反対勢力のやり方に呆然とします。
甘いと言われればそれまでで、致し方のないことなのでしょうか。
ジョン・ル・カレの小説は、登場人物も多く、話の筋も入り組んでいて、
読みこなすのにはなかなか鍛錬が必要だと聞いていますが、
バッハマンの視点から撮られた本作は、すっきりわかりやすくなっています。
バッハマン役のフィリップ・シーモア・ホフマンの台詞のひとつひとつが、
彼自身の人生に投げかけられている言葉のような気もして、
単なる映画としては観られませんでした。
最後の憤りの表情に、彼はどんな気持ちで死んでいったのだろう、
苦いだけの人生でなかったならばよかったけれど、そうしみじみ思いました。
監督:アントン・コルベイン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン,レイチェル・マクアダムス,ウィレム・デフォー,
ロビン・ライト,グリゴリー・ドブリギン,ニーナ・ホス,ダニエル・ブリュール他
TOHOシネマズ西宮にて2本ハシゴ。その1本目。
一昨日83歳の誕生日を迎えたばかりのジョン・ル・カレ。
1961年に小説家としてデビューしてから半世紀以上、
いまだに書き続けているって凄いこと。
その半分の齢とは言わずとも、まだ46歳だったのに、
今年2月に急逝してしまったフィリップ・シーモア・ホフマン。
手足短くポテッと出たお腹、イケメンにはほど遠かったけれど、
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992)で軟弱な高校生役の彼を見て以来、
味のある風貌と声と演技が好きで、ずっと注目してきました。
その彼最後の主演作、彼がこの世にもういないことが本当に残念でなりません。
ドイツのハンブルク。
同国の諜報機関で、テロ対策チームを統率するバッハマンは、
チェチェン人の青年イッサの密入国を確認する。
イッサはイスラム過激派と関わりがあると見られ、国際指名手配されている。
したがって、他国の諜報機関もイッサの行方を追っていた。
現時点でイッサの行方を把握しているのはバッハマンのチームのみ。
イッサは親切なトルコ人親子に匿われており、政治亡命を希望。
その親子を通じて人権派の弁護士アナベルに救いを求めているらしい。
アナベルは、イッサの父親が同国の銀行口座に多額の預金を遺していると知り、
銀行家のトミーにその預金を下ろしたい旨を伝える。
この動きも察知したバッハマンは、アナベルとトミーにも接触、
なかば脅迫じみた手段でふたりの協力を取り付ける。
捜査を進めてみると、イッサは過激派の人間などではない。
父親の多額の遺産も、どうせ悪事を働いて貯めた金だから要らないと本気で言う。
イッサを追えば、イッサの意図に反してたどり着くであろう悪の元凶を潰せるはず。
バッハマンは、遺産をある団体に寄付するようにアナベルからイッサに提案させると、
それがテロ組織の資金源に流れると考えて行動を開始するのだが……。
かつて、CIAの介入を阻止できずに、心ある情報提供者を守れなかったバッハマン。
今回はそうならぬよう、イッサを守り抜けるよう、慎重に事を進めます。
しかし、イッサの居所がわからずとも、バッハマンを監視していれば済むこと。
どんな人物であろうとも容疑者はみな同じ、
引っ捕らえてしまえばいいというCIAやバッハマンの反対勢力のやり方に呆然とします。
甘いと言われればそれまでで、致し方のないことなのでしょうか。
ジョン・ル・カレの小説は、登場人物も多く、話の筋も入り組んでいて、
読みこなすのにはなかなか鍛錬が必要だと聞いていますが、
バッハマンの視点から撮られた本作は、すっきりわかりやすくなっています。
バッハマン役のフィリップ・シーモア・ホフマンの台詞のひとつひとつが、
彼自身の人生に投げかけられている言葉のような気もして、
単なる映画としては観られませんでした。
最後の憤りの表情に、彼はどんな気持ちで死んでいったのだろう、
苦いだけの人生でなかったならばよかったけれど、そうしみじみ思いました。