■女子的生活 (新潮文庫)
生まれ変わっても女子がいい。そう思っていますが、おしゃれには縁遠く、こんなファッション用語がバンバン飛び交う女子の話はチョー苦手。あかん無理やわと思ったのは束の間。主人公がトランスジェンダーであることがすぐに明かされて、こっちの気持ちも変わる。映画『ある少年の告白』を観たところだったから、意地の悪い兄のせいで両親が知るくだり、こんな親ばかりならば、友達が後藤みたいな奴ばかりならば、どれほど楽だろうと考える。生きづらいよね。普通に接しようと思う時点で特別視しているのだから。著者の性別、もうどっちでもいっか。
読了日:05月04日 著者:坂木 司
https://bookmeter.com/books/13612861
■恐怖小説キリカ (講談社文庫)
第二章を開けて、ひょえ〜。ネタバレはせずにおきますが、面白いやんか。講談社から出版して、主人公が受賞するのはKADOKAWAのホラー大賞。審査員も実名で、遊び心満点。『ボヘミアン・ラプソディ』の歌詞について人はいろいろ解釈したがるけれど、フレディ自身は言ってます、「ただ、曲を楽しんで」と。しかし、そんなつもりで書いたのではないといくら作家が否定したところで、周りは何かあると思いたい。新米作家にその内幕を見せられて、誰が面白いと思うのか。いや、面白いって。で、澤村さんはほんとにそんなつもりはないんですね!?
読了日:05月06日 著者:澤村 伊智
https://bookmeter.com/books/13616564
■女神のタクト (講談社文庫)
関西弁全開の作品を読むといつも、関西人以外の感想が気になります。内容以前に関西弁がひっかかって読みづらくはないのだろうかと心配に。生粋の関西人としては、こりゃもうたまらん。稀にある、読むに耐えない関西弁ではなく、正しい関西弁。『拳に聞け!』で魂を射抜かれ、過去の作品に遡り。パンチパーマのオッサンを漆黒のブロッコリーに例えるセンスにもう脱帽(笑)。自信を失ったマエストロが破天荒な女に引きずられてステージに戻る。前半はさんざん笑わされ、『天城越え』で涙腺ゆるみ、オーケストラの演奏を文字で読んで完全に涙。好き。
読了日:05月12日 著者:塩田 武士
https://bookmeter.com/books/8344821
■七不思議のつくりかた (集英社オレンジ文庫)
飲酒しながら読み、たいして怖くもないはずが、プールで足をひっぱられるとか、冷めるとそれなりに怖い。切ない怪談を期待して読みはじめたのに、最終章にたどり着くまでは切ないというよりも虚しい印象。それが最後にがらりと変わる。私が勤めているのは学校ではないけれど、それなりに怪談の要素がある職場ゆえに取材を受け、怖くもなんともなかった自分の体験談が、本に書かれると立派な怪談になっていて苦笑したことがあります。スリッパを捨てたら、私の休みの日にペタペタとそこを走る音が聞こえていたとか(笑)。怪談はこうしてつくられる。
読了日:05月14日 著者:長谷川 夕
https://bookmeter.com/books/13063695
■我が心の底の光 (双葉文庫)
暗い。光を感じるシーンなんてひとつもない。ネグレクトを受けて餓死する寸前、父親が母親を殴殺する現場を見てしまった子どもの一生は、こんなふうになってもきっと不思議じゃない。彼の復讐相手がしたことを振り返ると、いくぶん逆恨みの要素も入っているように思えます。それでも誰かに復讐せずにはいられない。そこにしか生き甲斐を見いだせないから。主人公の心の動きについてまったく書かれず淡々としているのに、心を揺さぶられます。貫井さんにはここ数年の何冊かでガッカリさせられましたが、久しぶりに読み応えがありました。映画化希望。
読了日:05月17日 著者:貫井 徳郎
https://bookmeter.com/books/12752438
■ボヘミニャン・ラプソディ フレディと猫に捧ぐ
これを「読んだ本」に加えるなんて詐欺みたいと思いながら。『ボヘミアン・ラプソディ』を劇場で28回観た私に職場の人が貸してくれました。面構えやしぐさがあんなときこんなときのフレディに似ている猫を集めてみましたという写真集。無理くりもええとこ(笑)、シンコーミュージックさん、儲けるなら今とばかりに出しはったんやなと思うものの、『ボ・ラプ』をこんだけ観て、しかも猫も大好きなのだから、ニヤけずにはいられません。貸してくれた人に返したら、間違いなく買ってしまうであろう私がいます。すっかり商売に乗せられとる。(^^;
読了日:05月20日 著者:
https://bookmeter.com/books/13679526
■サンティアゴの東 渋谷の西 (講談社文庫)
「元気の出ないときには瀬尾まいこ」が私の基本ですが、そういえば瀧羽麻子に頼っていたこともありました。サンティアゴ、津軽、上海、瀬戸内海、アントワープ、渋谷での一日が描かれる、連作ではない短編集。瀧羽さんに頼っていた頃、『うさぎパン』と『株式会社ネバーラ』に救われたのを思い出します。高校生や新入社員が主人公だったそれらと比べると、本作に出てくるのはもう少し上の女性が多い。著者も歳を取ったんだなぁと結構しんみり。私同様に瀬尾まいこや宮下奈都をお好きな方ならそこそこ気に入るはず。ただ、私は長編のほうが好みかも。
読了日:05月21日 著者:瀧羽 麻子
https://bookmeter.com/books/13716921
■贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)
中山センセの著作はまだ数冊しか読んだことがないため、免疫がありません。なんですと?この弁護士、14歳のときに女児を殺しているサイコ?まずその設定に驚愕。サイコは更生も更正も無理だと思い続けてきました。でも本作を読むとその考えに疑念が生じる。フィクションなのに、そんなおぞましい事件の犯人であっても変われるのかもしれないと思ってしまう。後悔するな、償え。少年院の教官からそう説かれるシーンには胸を衝かれました。読み終える頃には御子柴さんを追いかけたくてたまらなくなっちゃって。噂に聞く中山センセ、やっぱりすげぇ。
読了日:05月26日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/7498077
■追憶の夜想曲 (講談社文庫)
マイ・ルール「同じ作家は続けて読まない」をいとも簡単に破って第2弾。前作で皆のツッコミどころだった死体遺棄の件も最初にクリア。どんでん返しの帝王だから、きっとあいつがこいつがこんなことと推理すれば小さくは当たるけど、ここまでは無理。もしも完璧に当てた人がいるならば、頭キレすぎでお友達にはなりたくない(笑)。前作読了後に、少年時代に殺人を犯して弁護士になった人が実在すると知りました。その人に償いの気持ちはなかったようだから、遺族のことを思うと本作を読むのもつらくなる。事実は悲しい。御子柴のようであったなら。
読了日:05月28日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/10554323
■心にナイフをしのばせて (文春文庫)
中山七里の『贖罪の奏鳴曲』読了後に本書の存在を知りました。少年時代に猟奇殺人を犯して弁護士になった人が実在するとは。被害者の母親が記憶障害を起こしたり、名前の似た登場人物が居たり、この事件をモチーフにしていることが明白ゆえ、御子柴弁護士シリーズを娯楽作として楽しむことを申し訳なく思ったりも。第11章の「少年Aの行方」と文庫版あとがきを読むと頭に血がのぼる。御子柴があんなふうであるのは、償いの意識が皆無だった実在の元弁護士への戒めが込められているのかもしれないと思えます。更生するのはフィクションの中だけか。
読了日:05月31日 著者:奥野 修司
https://bookmeter.com/books/560992