『幸福なラザロ』(原題:Lazzaro felice)
監督:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:アドリアーノ・タルディオーロ,アニェーゼ・グラツィアーニ,ルカ・チコヴァーニ,
アルバ・ロルヴァケル,トンマーゾ・ラーニョ、セルジ・ロペス,ナタリーノ・バラッソ他
梅田スカイビルにインバウンドが押し寄せるようになってから、
付近のコインパーキングの料金が軒並み上がりました。
最大料金800円だったところがいつのまにか1,900円になっていたりして、ウソ〜。
この日はハワイアンフェスタなんぞが開催されていましたが、
6時間1,200円のところを見つけて駐車。
大阪ステーションシティに向かう途中に『ビッグイシュー』を売るおじさん発見。
5月、まだ朝8時だというのに気温は30度近い。
ご苦労様の意味を込めて、最新号とバックナンバーの2冊を購入。
ちなみに、バックナンバーのほうの表紙は『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』。
大阪ステーションシティシネマで前述の『ベン・イズ・バック』を観た後、
再びスカイビルに戻ってこの日の本命だった本作を鑑賞。
親しい人ふたりから別々に薦められたら、観に行かないわけにいかん。
イタリアの山間にある小さな村。
村人たちは領主の侯爵夫人に小作人として仕え、搾取されつづけている。
しかし渓谷を越えて村から出て行くことは許されず、
また、許しなど得なくても出て行けるとは思いもしていない。
貧しい暮らしだが、それなりに穏やかな日々。
そんな村人たちのうちのひとりが青年ラザロ。
両親はどこの誰なのかわからず、身寄りは祖母だけ。
バカが付くほど正直者のお人好しで、人を疑ったり怒ったりすることは皆無。
誰の言うこともよく聞いて実によく働く彼に、
周囲は面倒をすべて押し付けて、いいように使っている。
ある日、侯爵夫人が息子タンクレディを連れて村にやって来る。
母親を鬱陶しく思うタンクレディは狂言誘拐を思いつき、
ラザロに片棒を担がせようとするのだが……。
1980年代に実際にあった事件がモチーフになっていることは鑑賞後に知りました。
小作人制度なんてとっくになくなっているのに、
侯爵夫人が村人たちをその土地に閉じ込め、賃金を払わずに働かせる。
狂言誘拐が発端となってこの村の存在が明らかに。
村人たちはようやく解放されて、都会へと出て行きます。
でも、都会へ行ったところで仕事が見つかるわけではない。
孤立した村で長年暮らしてきた彼らは、
せっかく解放されても横田庄一さんみたい、というと言い過ぎか。
とにかく、どのように生活すればよいのかわからないから、
同じように皆でかたまって暮らし、カネを稼ぐために詐欺を働いている。
どこまでが実際の事件をモチーフにしているのか知りませんが、
不思議なファンタジーに仕上がっています。なんという粋な作品なのか。
無垢な青年は神の使いか狼か。
彼の善意をみんな当たり前のように受け取り、感謝しない。
それでも、見返りなんていっさい求めず、
何を言われてもされても幸せそうな顔をしているラザロ。
人間が皆こうであったならば、争いなんて起きないのに。
とても悲しいけれど美しいと思えるエンディングでした。