『台風家族』
監督:市井昌秀
出演:草彅剛,新井浩文,MEGUMI,中村倫也,尾野真千子,若葉竜也,
甲田まひる,長内映里香,相島一之,斉藤暁,榊原るみ,藤竜也他
ダンナの帰りが遅い日、TOHOシネマズ西宮にて1本だけ。
当初は今年6月に公開の予定でした。
新井浩文の不祥事を受けて公開延期となり、9月上旬から3週間の限定公開。
本来なら主演の草彅剛の次に名前があるべき役柄なのに、
映画データベースのサイトを見ると、その役柄ごと削除されています。
なかったことにされてしまうのは悲しいものが。
2000万円を奪って、妻・光子(榊原るみ)を乗せたまま霊柩車で逃走。
失踪届を提出していたから法的に死亡が認められ、事件も時効を迎えた日、
鈴木家の長男・小鉄(草彅剛)、次男・京介(新井浩文)、長女・麗奈(MEGUMI)が
形式的な葬儀を執りおこなうために実家へ集合する。
小鉄の妻・美代子(尾野真千子)と娘・ユズキ(甲田まひる)も同席。
バツイチの麗奈が現在交際中の登志雄(若葉竜也)も顔を出す。
三男・千尋(中村倫也)だけはなぜかまだ姿を見せない。
集まった本当の目的は、遺産相続。
両親にたいした貯金はなかったらしく、
家を処分して手元に残るのはおそらく800万円ほど。
4人きょうだいで200万円ずつ分けるのが妥当なところ、
小鉄が難癖をつけて800万円すべて自分がもらうと言い出す。
すると今度は京介が家は処分しないと言い出す。
相続人のうちひとりでも反対すれば家の処分はできないから、
となると誰も金を受け取れないことになってしまう。
揉めに揉めて殴り合いが始まろうかというとき、突然現れた千尋。
千尋はYouTuberになると決めたと言い、
今この状況も生中継で発信していることを皆が知るのだが……。
正直なところ、草彅くんが演技上手なのかどうか、私はよくわからないのです。
本作でも圧倒的に上手いのは新井浩文。
事件当時に支店長だった行員役の相島一之も相変わらず絶妙の脇役ぶり。
上手いのかなぁこれ、だいぶしんどいよなぁなどと思いながら観ていました。
その思いは観終わった今も変わりませんが、
以下、完全ネタバレです。
息子たちにとってケチでどうしようもない父親だったはずなのに、
実は母親が認知症を患っていて、父親ひとりで面倒を見ていたことが明らかになります。
そんなところへ詐欺の電話がかかり、一鉄はまんまと騙されてしまう。
しかも疎遠になっていた小鉄が事故を起こしたという電話なんかに。
電話をかけたのは、母子家庭で金に困っていた月子(長内映里香)という女性で、
彼女は以来ずっと罪の意識に駆られて懺悔しつづけいる。
老老介護、詐欺電話、貧困家庭、
さまざまな社会問題が盛り込まれていて見過ごせません。
途中からは演技の上手いも下手もどうでもいいやという気になってきて、
その展開を見守りました。
いつまで経っても親子は親子。
でも巷には後を絶たない育児放棄や虐待のニュース。
本作のエンディングはハッピーではないけれど、アンハッピーでもない。
両親の最期の姿を見て家族がまたひとつになれたから。