夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『先生の白い嘘』

2024年07月16日 | 映画(さ行)
『先生の白い嘘』
監督:三木康一郎
出演:奈緒,猪狩蒼弥,三吉彩花,田辺桃子,井上想良,板谷由夏,ベンガル,風間俊介他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『ブリーディング・ラブ はじまりの旅』の後に。
 
原作は『月刊モーニング・ツー』に2013年から4年間連載されていた鳥飼茜の同名漫画。
公開前から「インティマシーコーディネーター」の件で話題になりました。
これは、映画やテレビ、舞台等でヌードやセックスシーンがある場合に、
作品の制作者と出演者両者の意向を汲み取って調整する仕事なのだそうです。
 
R15+指定の本作に主演する奈緒が、インティマシーコーディネーターを三木康一郎監督に要請、
しかし「監督と女優の間に人を挟みたくない」と三木監督が却下したとのこと。
そのせいで話題になり、一部では炎上商法ではと囁かれましたが、
三木監督ぐらい売れっ子の監督なら、いまさら炎上して売ろうとも思っていないのでは。
 
で、さぞかし過激な性描写になろうかというところ、確かに反吐が出るような描写ではありますが、
『湖の女たち』松本まりか同様に、乳首はまったく映りません。
こうして見ると、乳首って大事なんですねぇ(笑)。
まぁ、若手の人気役者をこれまでも多用してきた三木監督のこと、園子温監督じゃあるまいし、
人気女優の乳首をさらして、やがては性暴力で訴えられる存在に、という道は選ばないと思われます。
 
高校教師の原美鈴(奈緒)は内向的な性格で、化粧っ気もなく地味でいることをむしろ心がけている。
そんな美鈴の親友は、真逆と言っていい渕野美奈子(三吉彩花)。長身で美人、社交的。
 
ある日、美奈子から恋人の早藤雅巳(風間俊介)との婚約を告げられた美鈴は動揺する。
というのも、以前美奈子の引越しを手伝ったさいに紹介された早藤にレイプされたから。
その後も早藤から呼び出されるたびに、嫌悪しつつも応じてしまっていたのだ。
 
そんな折、美鈴が受け持つクラスで、生徒の新妻祐希(猪狩蒼弥)のことが話題になる。
おとなしくてからかいの対象になりがちな祐希だったが、
人妻とラブホに入るところを目撃され、それをネタにまたからかわれているらしい。
教師の間でも問題になり、事実無根であると祐希に言わせるように命じられた美鈴。
 
ところが祐希から話を聴いてみるとそれは事実で、
しかも人妻から性行為を迫られたせいで祐希は女性のアソコ不信に陥っていると言い……。
 
若手を起用して軽めの明るい作品を撮ってきた印象の三木監督だから、
こんな作品も撮るんだわと思いました。ちょっと意外。
 
美鈴が早藤の呼び出しを断れずに会いに行ってしまうところ、
そのせいで余計に次も会わねばならなくなってしまうところ、
相手を嫌悪しているはずなのに、実はそんな自分をいちばん嫌悪しているところ、わかる気がします。
 
でも、風間俊介演じる早藤がゲスすぎるからなのか、
今までの三木監督の作品と趣が違いすぎるからなのか、
違いすぎるわりにやっぱり若手人気役者起用のイメージはそのままだからなのか、
ゲスなのにメジャー作品とは変わらない気がして、なんだかバランスがよくない。
これって、もしかすると脱ぎ方が中途半端だからなのかもと思ってしまいます。(--;
 
性暴力に屈することなく立ち向かえという意気は感じました。

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『ブリーディング・ラブ はじまりの旅』

2024年07月16日 | 映画(は行)
『ブリーディング・ラブ はじまりの旅』(原題:Bleeding Love)
監督:エマ・ウェステンバーグ
出演:クララ・マクレガー,ユアン・マクレガー,キム・ジマー,デヴィン・マクダウェル,
   サッシャ・アレクサンダー,ジェイク・ウィアリー,ヴェラ・ブルダー他
 
イオンシネマ茨木にて、封切り日の晩の回を観ました。
 
ユアン・マクレガーとその娘クララ・マクレガーの共演。
娘のクララがプロデュース、父親のユアンがエグゼクティブプロデューサーを務めています。
監督はこれが長編デビューとなるエマ・ウェステンバーグ。
 
書く段になって気づきましたが、本作中の父娘は役名がないじゃあないか。
父親が娘のことを幼い頃に“ターボ”と呼んでいたことがわかるだけ。
 
長らく疎遠だった父娘が再会。
かつて父親が飲酒を自制できなかった遺伝子を受け継いでいるのか、
20歳の娘は酒と薬の過剰摂取で倒れ、なんとか命は取り留めたものの、
薬物依存症のリハビリ施設へ入所させるために父親は娘を迎えに行く。
 
ニューメキシコ州に車で向かう旅を描くロードムービーです。
過去に何があったのかつぶさに映し出されるわけではなく、こちらは回想シーンから想像するだけ。
 
父親は酔っぱらっても暴力を振るうことなどはなかったようで、ただ、家には居着かない。
それでも善き父親としての面があり、娘ともよく遊ぶ、明るくて楽しい人でした。
妻から愛想を尽かされたのか、それとも自ら出て行ったのか、とにかく娘の記憶では「妻子を捨てた父親」。
 
そんな父親が今はすっかり依存症を克服して再婚、生まれたばかりの息子もいます。
現在の妻の理解と承諾を得て娘をリハビリ施設まで送り届けることにしたのですが、
実は娘は自分がリハビリ施設に向かっていることを知らない。
そうとは言いづらい父親が、絵の才能を持つ娘を知り合いの画家に預けるとかなんとか言って連れ出しています。
 
地味すぎて今どき流行らない映画のように思うけれど、マクレガー父娘の演技は素晴らしい。
かつての自分を恥じ、なんとか娘を救いたいと思っている父親と、
父親に反感を持ちつつ、楽しかった頃の思い出が頭を巡って仕方ない娘と。
 
やっぱりユアン・マクレガーって好きだなと改めて思った1本でした。

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