夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『密輸 1970』

2024年07月20日 | 映画(ま行)
『密輸 1970』(原題:Smugglers)
監督:リュ・スンワン
出演:キム・ヘス,ヨム・ジョンア,チョ・インソン,パク・ジョンミン,キム・ジョンス,コ・ミンシ他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『お母さんが一緒』の次に。
 
予告編を観て以来、絶対面白いに違いないととても楽しみにしていた作品です。
まんま実話なのかと思って観はじめたけれど、さすがにそれは無理だろうと観ながら思う。
かつて韓国の沖合で密輸犯罪がおこなわれていたという史実に基づいているそうで、
モチーフにしたという程度なら納得。仰天の実話というのは言い過ぎかと。
だけど、史実をモチーフにしてここまで面白くできるのが凄い。
 
舞台は1970年代、韓国ののんびりとした漁村クンチョン。
漁業が主のこの村では、女性陣も有力な稼ぎ手。
海女として海に潜ると魚介類を獲って生計を立てていたが、
近隣に建つ化学工場から流れ出る汚水のせいで漁獲量が激減する。
 
そんなときに持ち込まれたのが、密輸に関わる話。
日本製の食品や海外の宝飾品など、一旦海に沈めた密輸品を彼女たちが引き上げるのだ。
違法行為に手を染めることに躊躇はあるものの、金は必要。
海女のリーダーであるジンスクは、自分の父親を説得して船を出してもらうことに。
引き受けてみると密輸品の引き上げは意外と簡単。
一気に暮らしが潤い、海女たちは大喜びで街へと繰り出すようになる。
 
ところがある日、密輸品の引き上げ中に税関の摘発に遭い、
すべて没収されたうえに、ジンスクの父と兄が海へ転落して死亡。
船から即逃亡した海女のひとりチュンジャを除く全員が逮捕されて刑務所送り。
税関に密告したのはチュンジャだという噂が流れる。
 
それから数年が経ち、ジンスクらは出所するが、もう仕事はない。
男性たちの衣類の洗濯などでわずかな金を受け取るのみ。
乳飲み子を抱える者が無理をして海へ出て、サメに襲われる事故も起きる。
 
皆で困り果てていたところに戻ってきたのがチュンジャ。
ソウルで派手な生活を送っていたとおぼしき彼女は、
ジンスクの父亡きあと漁の仕事を引き継いでいたドリの前に姿を現わすと、
ソウルで密輸を仕切るクォンとの取引をドリに持ちかける。
その取引には海女たちの力が必須で……。
 
予告編を観たときは、韓国作品らしく笑えるシーンも多そうに思いましたが、
コミカルなシーンは想像していたほど多くはなく、わりとシリアス。
笑いが少ないのは拍子抜けでしたが、それでも凄く面白かった。
 
チュンジャの裏切りだったのかどうかという点は最初にまず気になるところですが、
序盤の彼女を見ていると、相当嫌な女で、こいつなら平気で裏切りそうだと思う。
けれども話の展開として実はそうではないというふうになるはずで、
実際、チュンジャはそんなことはしないだろう、黒幕ありだなと思いはじめます。
 
チュンジャとジンスク、そして村の喫茶店の若いママ、オップンが協力し、
みごと敵を出し抜く流れが痛快。
最後まで適度にハラハラしながら、でもこれは絶対ハッピーエンドになるはずだから安心。
 
チュンジャ役にキム・ヘス、ジンスク役にヨム・ジョンア、オップン役にはコ・ミンシ
クォン役にはチョ・インソン。この人、モデル出身なのですよね。イケメン。
そして憎き税関のオッサン役はキム・ジョンス。名バイプレイヤー
 
やっぱり面白いよねぇ韓国映画。と思うと共に、綺麗な海が戻ることを祈る。

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『お母さんが一緒』

2024年07月20日 | 映画(あ行)
『お母さんが一緒』
監督:橋口亮輔
出演:江口のりこ,内田慈,古川琴音,青山フォール勝ち他
 
封切り日の夜の回をイオンシネマ茨木にて。
 
原作はペヤンヌマキ主宰の演劇ユニット“ブス会*”の同名舞台劇
橋口亮輔監督がTVドラマシリーズ化してCSチャンネルで放映。
それを劇場用に再編集した映画版なのだそうで、
「ホームドラマチャンネル開局25周年記念オリジナルドラマ」との触れ込みです。
 
「お母さん」の姿は冒頭で車の中に薄ぼんやり映るだけ。
もとが舞台劇らしく、物語は必要最低限の人数で進んで行きます。
 
母親の誕生日を祝うため、親孝行のつもりで温泉宿に連れてきた三姉妹
長女の弥生(江口のりこ)は容姿にコンプレックスを持ち、
美人と言われてちやほやされてきた次女の愛美(内田慈)に嫌味を言い通し。
一方の愛美は愛美で、優等生の弥生と常に比較されたことを根に持っている。
 
男性と交際経験がまったくないままで見合い結婚をした母親は、
いつも父親の悪口を娘たちに聞かせ、ネガティブな発言ばかり。
そんな母親に嫌気が差して、弥生と愛美は早々に実家を出た。
そのあと母親の面倒を見つづけてきたのが三女の清美(古川琴音)。
 
実は今回の旅行で清美が母親に用意したプレゼントは、自分の結婚宣言。
いきなり母親に会わせるわけにもいかないから、まずは姉たちに紹介しようと、
宿に到着後、相手のタカヒロ(青山フォール勝ち)を呼び寄せる。
 
ところが、まさか清美が結婚を考えているとは想像もしていなかった姉たちは仰天。
祝福してくれるどころか思いとどまるように言われて清美も憤慨し……。
 
江口のりこと内田慈の演技は予想できることでしたが、
古川琴音もこんな役を演じられるとは意外。でもピッタリ。
それぞれの外見と中身(は実のところは私らにはわからないけれど)がハマり、
とても面白いドラマに仕上がっています。
 
もともと橋口監督の作品は好きですが、やっぱり好きだなぁと再認識。
弥生のひがみっぷりが物凄いのと、愛美の色目使いがなかなかキモいのとで、
序盤は鬱陶しくなったりもしたけれど、それもこれも演技が上手いから。
 
男性と女性の思考回路が異なるというのを私に教えてくれたのはこの映画ですが、
男は「それはそれ、これはこれ」で考えられるということが、
青山フォール勝ち演じるタカヒロを見ているとよくわかります。
彼の台詞の中で、「思い詰めて夜に考えたことはたいてい間違っている。
大切なことは太陽の出ているときに考えたほうがいい」がとても心に残りました。
 

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