夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『愛に乱暴』

2024年09月13日 | 映画(あ行)
『愛に乱暴』
監督:森ガキ侑大
出演:江口のりこ,小泉孝太郎,馬場ふみか,水間ロン,青木柚,
   斉藤陽一郎,梅沢昌代,西本竜樹,堀井新太,岩瀬亮,風吹ジュン他
 
仕事帰りにテアトル梅田で2本ハシゴの2本目。
前述の『ボストン1947』の次に。
 
吉田修一の同名小説を森ガキ侑大監督が映画化。
以前は好きでよく読んでいた作家なのに、そういえばとんとご無沙汰しています。
これは読んでみようかなと思う。
 
初瀬桃子(江口のりこ)は夫の真守(小泉孝太郎)と結婚して8年。子どもはいない。
真守の母親・照子(風吹ジュン)が居る実家の敷地内に建つ離れに暮らし、
かつて勤務していた会社のつてで、手作り石鹸教室の講師を週に1度務めている。
これといって何も起こらないが、良くも悪くもない平穏な毎日。
 
……って、これ以上何を書けばいいのかわからない話ですね。(^^;
 
本当に何も起こっていないのに、桃子がどこかくすぶっているのがわかります。
嫁姑の関係は一見悪くないようだけど、姑はなんだかちょっと意地悪。
しかし桃子はそれを口に出すことはなく、姑に頻繁に声をかけ、ゴミ出しもします。
 
夫といえば、桃子にまるで興味なし。
そのことに対しても桃子は不満を言うわけではなく、努めて明るく振る舞います。
帰りが遅くなるかどうかもわからない夫のために食事は必ずつくり、
出張だと聞けばスーツケースにアイロンをピシッとかけたワイシャツを揃える。
 
けれど桃子の言動には不思議なところが見えます。
ピーちゃんって誰よ。猫にピーちゃんという名前も変だろうと思ったら、やっぱり猫じゃない。
桃子が探すピーちゃんがいったい何なのかは終盤までわかりません。
 
日に何度も桃子が除く誰かのSNSは、どうやら夫の浮気相手の奈央(馬場ふみか)のものらしい。
それについて問い詰めもしない桃子ですが、夫と浮気相手が雁首揃えて会いたいと言い出す。
この辺りから桃子の抑えていた気持ちが爆発します。
 
漂う不穏な空気。
わかってくれるのは近所に住むどこかの国から出稼ぎに来ている青年だけ。
放火犯と間違われて逃げた桃子に彼が履き物を差し出すシーンはちょっぴり温かい。
 
人に薦めようとは思わないけれど、妙に心に残る作品でした。
これはやはり江口のりこの力なのか。
 
あのSNSは本当に奈央のものだったのかな。桃子自身のものかもしれません。

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『ボストン1947』

2024年09月13日 | 映画(は行)
『ボストン1947』(英題:Road to Boston)
監督:カン・ジェギュ
出演:ハ・ジョンウ,イム・シワン,ペ・ソンウ,パク・ウンビン,キム・サンホ他
 
仕事帰りに車を走らせ、テアトル梅田へ。2本ハシゴの1本目。
 
監督は『シュリ』(1999)や『チャンス商会 初恋を探して』(2015)のカン・ジェギュ。
 
1936年、ベルリンオリンピックが開催され、マラソン金メダルと銅メダルに輝いたのは朝鮮人の2選手。
しかし、当時の朝鮮は日本の統治下にあったため、彼らは日本代表として記録される。
金メダルを受賞したソン・ギジョン(ハ・ジョンウ)は、おおっぴらには不満を唱えなかったものの、
表彰台で日章旗を隠す仕草をしていたことを非難され、引退を余儀なくされる。
 
それから10年以上が経過し、いまだ破られぬ世界記録を持つギジョンを称え、
彼の名前を冠したマラソン大会が開かれるが、当のギジョンはまるでやる気なし。
 
困窮する生活のために仕事を掛け持ちする青年ソ・ユンボク(イム・シワン)は、
優勝すれば賞金が出るというガセネタに釣られて出場、見事1位となるが、
賞金は出ないわ、ギジョンは酒の匂いをさせて会場に来るわで憮然。
 
一方、銅メダル受賞者のナム・スンニョン(ペ・ソンウ)は若手選手を育てるべく、
マラソンの指導者として現場に出続けているばかりか、自らもまだ走っていた。
ギジョンを監督とするチームでボストンマラソンに参加しようと熱意を持って誘ってくる。
 
気乗りせずも、太極旗を胸に出場したい想いがこみ上げてきて、
ギジョンはスンニョンと共にユンボクをボストンへ連れて行こうと考える。
しかしボストンで受け入れてくれる人間や出場のための保証金の工面に困り……。
 
反日感情あらわな作品ならばちょっとツライとも思っていましたが、そこまでではありません。
朝鮮人としてオリンピックに出ることが叶わなかった事実が述べられているだけ。
 
戦争が終わり、ようやく自分たちは自分たちとして走れると思ったのに、
ボストンに渡ってみれば、用意されていたユニフォームの胸には星条旗
朝鮮は独立国ではなくて難民国だから、朝鮮としての出場は認められないと言われるんですね。
 
それを翻させるためにギジョンとスンニョンは打って出ます。
無事太極旗を胸に走れることになり、ユンボクが素晴らしい走りを見せる。
もともと彼のマラソンは独学。
走力がついたのは、母親のために祠の供え物を盗みに行っていたおかげというのは嘘か誠か。
神様は怒らない、見捨てない。
 
よその国の人間を無理やり自分の国の人間にするなんてとんでもないことだと改めて思う。
それを望んでいるのならまだしも、決してそうではないのだから。
 
同監督の『シュリ』のデジタルリマスター版も今日から公開です。

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