『呪詛』(原題:咒)
監督:ケヴィン・コー
出演:ツァイ・ガンユエン,ホアン・シンティン,ガオ・インシュアン,ショーン・リン他
7月8日に配信が開始されたNetflixオリジナルの台湾ホラー。
結構話題になっていて怖そうなんです。
ホラー苦手ではあるものの、やはり好奇心には勝てず、
何度か思い切って観ようと考えましたが、夜に観るのは無理。
休日の真昼間、眼鏡を掛けたり外したりしながら観ました。
英語タイトルは“Incantation”、「呪文」の意です。
台湾史上最も怖いという触れ込みですが、結論として、私でもなんとか耐えうる怖さ。
切なさも漂っているところは、スペイン語圏やポルトガル語圏のホラーに通ずるところもあり、
かなり好きです。だからってもう一度観たいとは思わないけれど。
実話がモチーフになっていると聞くとさらに怖さが増しますね。
喃喃怪チャンネルというサイトを運営するルオナンと恋人アードン、その親戚アーユエンは、
超常現象調査隊と銘打って、意気揚々とアードンの出身地を訪ねる。
そこは電波も届かないような山奥の村で、決して入ってはならぬと言われている地下道がある。
ここに忍び込んで迷信を笑い飛ばすつもり。
ところが、村人たちはルオナンを見て厳しい顔をする。
アードンとアーユエンは親族ゆえかまわないが、よそ者はお参りできないのだと。
ルオナンはアードンの恋人なのだからよそ者ではないと主張し、なんとか居座る。
しかしその夜、地下道に忍び込もうとした3人は恐ろしい目に遭う。
これが6年前のこと。
当時妊娠中だったルオナンは、生まれてきた娘ドゥオドゥオを育てられる精神状態ではなく、
里親のチーミンという男性に預けていたが、ようやくドゥオドゥオと暮らす決意をする。
幸いすぐにドゥオドゥオもルオナンに懐き、平穏に過ごせるかと思ったのもつかの間、
ドゥオドゥオが天井を見つめて悪者がいると言い出し……。
椅子から飛び上がるほど驚くシーンがあるわけではありません。
スプラッタのように血が飛び交うこともなく、グロいシーンは時折あるけれど、
それよりむしろ虫が湧いて出るシーンのほうがゲロゲロ〜。
でも、次にどんな展開になるのかが読めず、始終ビクビクしてしまう。
邪神を崇める村自体がものすごく不気味で、最初からドキドキ。
序盤は『ヘレディタリー/継承』(2018)を思い出したりもして、心臓が縮み上がりました。
怖いシーンは直視したくないから、眼鏡にずっと手をかけたまま、ヤバイと思えば外し。
切ないのは、娘を想う母親の心。
自分が禁忌を侵してしまったがために、生涯呪われることになったドゥオドゥオ。
その呪いを解きたくて、藁にもすがる気持ちでルオナンはあの村へと戻るのです。
娘が救われるのなら、そら世界中の人を騙してでもこうするでしょう。
めでたしめでたしとは言い難いオチ。でもなんだか納得できる。
ドゥオドゥオをルオナンがおぶって浜辺で凧を揚げるシーンはあまりに美しい。
ただ怖がらせるだけのホラーではなくて、よくできた脚本だと思います。
アードンとアーユエンがこの村の出身にしては何も知らなすぎるのが少し引っかかるぐらい。
ところでルオナン役のツァイ・ガンユエンって夏帆にめっちゃ似てませんか。
ドゥオドゥオ役のホアン・シンティン、めちゃ上手です。