『ピザ!』(原題:Kaaka Muttai)
監督:M・マニカンダン
出演:V・ラメーシュ,J・ヴィグネーシュ,アイシュワリヤー・ラージェーシュ他
2014年のインド作品。日本では劇場未公開。
こういうのを「あなたへのオススメ」でAmazonが教えてくれると、
Amazonよ、君はなんと確かな目を持っているんだと思います(笑)。
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踊らないボリウッド作品です。でもやっぱりボリウッド。
父親は何の罪でか投獄され、保釈金を要求されるが、
母親がいくら金を工面しようとも釈放してもらえない。
高齢の姑は働けず、母親の仕事だけでは生活が苦しく、
兄弟は学校に行かずに線路脇の石炭を集めて日銭を稼いでいる。
ある日、スラムの子どもたちの遊び場だった広場が立入禁止に。
工事の末にできたのは大規模なピザ店。
有名な芸能人を招いてオープニングイベントが開かれる。
遠巻きにしか見ることを許されない子どもたちは、
初めて見るピザなる食べ物に興味津々。
食べてみたい。でも1枚のピザが300ルピー(約420円)。
これはスラムの1カ月の家賃よりも高い。
母親にねだったところでピザが買えるわけもなく、
兄弟はニンジンと呼んでいる顔見知りのおっちゃんに相談。
ニンジンは石炭がたんまりある場所をこっそり教えてくれて……。
子どもは残酷です。
特に兄ちゃんのほうときたら、もうピザのことしか考えられず、
母親が父親の保釈のために必死で働いているのに、
「パパなんかよりピザのほうがいい」と平然と言い切る。
諌める祖母には「食べて寝るしか能がないくせに黙ってろ」って。
そう言われたお婆ちゃんの悲しそうな目と言ったら。
なんとかピザ1枚分の金を貯めて喜び勇んで出かけたのに、
店先でガードマンから追い返される。
服装からスラムの子どもだと判断されたと思い込み、
今度はショッピングモールへ新しい服を買いに行くと決めます。
兄ちゃんには時折イライラさせられましたが、気持ちはわからなくもない。
そして、その兄ちゃんにただただついていく弟が可愛い。
スラムにピザ屋を出店して、スラムの人を排除する。
その感覚はどうなのよ。
金持ちにも貧乏人にも悪いことを考える奴はいて、
悪いことを考える奴同士で出し抜くことを考えているのもなぁ。
大地真央のCMじゃないけれど、「ここに愛はあるんか」と言いたくなる。
でも、愛はあります。
そもそもスラムに暮らす人びとに悲壮感はありません。
幸せか不幸せかなんて、まわりが決めることじゃない。
いろいろあって、最後にピザにありついた兄弟の言葉。
笑顔と共に心に残りました。
ちなみに、原題を英訳すると“Crow's Egg”、「カラスの卵」。
兄弟の名前は最後まで出てきません。
ふたりはカラスの卵、大きい卵は兄、小さい卵は弟。
そのまま育って。