『ぼくとパパ、約束の週末』(原題:Wochenendrebellen)
監督:マルク・ローテムント
出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ,セシリオ・アンドレセン,アイリン・テツェル,
ヨアヒム・クロール,ペトラ・マリー・カミーン,レスリー・マルトン他
『UTADA UNITED 2006』【ライブ音響上映】の後、同じくなんばパークスシネマにて。
『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』(2017)のマルク・ローテムント監督によるドイツ作品。
私はこの監督がやっぱり好きだと確信する1本となりました。実話に基づく。
ミルコとファティメの間に生まれた息子ジェイソンは、幼いときに自閉症と診断される。
音に敏感、冗談が通じない、他者となじむのは難しいなどなど医師から言われる一方で、
なんらかの分野において特別な能力を発揮することもあるという。
独自のルーティンやルールを持つジェイソンは、それが少しでも乱されるとパニックに陥る。
ただ、宇宙への興味は尽きることなく、量子学に際立った才能を見せるが、
いくら惑星について詳しくても同級生たちには理解できないからジェイソンをからかうだけ。
あるとき、同級生から好きなサッカーチームを問われたジェイソンは、お気に入りのチームを見つけようと考える。
そのためには、ドイツ国内56チームすべてを現地で観戦しなければならないと言い、
仕事仕事で忙しい父親ミルコに土曜日毎にスタジアムを巡る約束をさせるのだが……。
ジェイソンが自閉症と診断されたときに、この子のために全力を尽くすと決めた両親。
しかし実際のところは仕事を辞めたファティメのワンオペに近い状態。
もうひとり子どもが生まれて手がかかるようになっても、ミルコは仕事で家を空けること多数。
息子と家族のために稼がなければならないというのが建前ですが、
ジェイソンの相手をするよりも仕事をしているほうが楽だというのが本音です。
ジェイソンとふたりきりで出かけるようになって、初めてわかる妻の苦労。
列車内の食堂に入れば、トマトソースのパスタを頼み、パスタとソースを分けるようにオーダーするジェイソン。
パスタにわずかにソースが付いただけで気も狂わんばかりに怒ります。
それを見たほかの乗客は躾がなっていないとミルコに冷たい目を向ける。
息子のことを愛しているのは間違いない。けれど、自分の手に余ると思いはじめます。
スタジアムにはジェイソンの苦手とすることが多数。
触れられるのが嫌いなのに接触は避けられないし、そこらじゅうに雑音が溢れています。
また、ジェイソンの中ではサステナビリティ(持続可能性)の重要性が高い。
トイレだったりエレベーターだったり、どれも試してみないことにはスタジアムを去れません。
無駄なマスコットがいたり、円陣を組んだり、選手の靴下の色が微妙に違って揃っていなかったりするのもアウト。
どうであろうが孫は孫だとあたふたしない祖父母、特に祖父が○。
そしてミルコが勤務する全国展開のファストフード会社の女社長がサイコーです。
宇宙物理学を究めたいというジェイソン。それが夢ではなくなる日もきっと近い。
モデルとなった本物の一家もエンドロールに登場します。美少年で目が釘付け。
ヨーロッパには全部で21万5千のサッカーチームが存在するそうな。
父子のスタジアム巡りの旅は今も続いているとのことです。