夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

続・失う哀しみ

2003年07月16日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
最愛の息子を失う哀しみを
まったくちがうタイプの映画として描いたのは『ハート』(1999)。

母マリアと息子ショーン。
ある日、単車で出かけたショーンは、
ヤク中の若者の運転する車にはねられて死亡する。
ショーンは脳死と判定され、心臓はある患者に提供されることに。

息子とふたり暮らしだったマリアはしばらく悲しみに暮れるが、
偶然目にした新聞記事で、息子の心臓がゲイリーという男性に移植されたことを知る。

ゲイリーに会いにいくマリア。
ゲイリーの胸のなかに息子の心臓があると思うと
その鼓動を聞きたくてたまらない。
マリアの行動は次第に常軌を逸し、
ストーカー的なものへと転じてゆく。

マリアが茶色い紙袋を大事そうに抱えて歩くところから
この映画は始まります。
袋からは赤い色が滲みでていて、ポタポタとその滴が。

サイコホラーの要素が目立ちますが、
息子を愛してやまなかった信心深い女性の
痛々しいまでもの苦しみ、悲しみが伝わります。
哀しみが狂気という形になって表れた作品であり、
ただ怖いとは思えません。

臓器を提供する側の家族、移植された側の家族、
とりまくさまざまな人びとについて考えさせられる作品です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

失う哀しみ

2003年07月14日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
愛する子どもを亡くすという設定の作品は多い。
お読みいただいている方でそんな経験をされた方がいらっしゃったら
これは安易に書くような話じゃないかも。
辛い気持ちにさせたらごめんなさい。

『息子の部屋』(2001)はイタリアの映画。
ナンニ・モレッティ監督が父親役で兼主演。
夫婦と娘、息子の仲良し4人家族。
ある休日、精神分析医のジョバンニのもとに、
患者から至急診てほしいとの電話が。
息子とのジョギングの約束をあきらめて、診察に向かうジョバンニ。
帰宅してみると、息子がダイビング中の事故で死亡していた。

『イン・ザ・ベッドルーム』(2001)。
夫婦と息子の3人家族。
父は人望の厚い医者、母は学校で合唱の指導をしている。
申し分のない家庭。
一人息子のフランクは子持ちの年上女性ナタリーとつきあっている。
彼女は暴力亭主と別居中。
ある日、フランクがナタリーの家にいると、銃を持った亭主が怒鳴りこみ、
フランクは撃ち殺されてしまう。

『息子の部屋』も『イン・ザ・ベッドルーム』も
息子の生前は家族の溝はまったく見えない。
誰が見ても仲睦まじい、幸せな家庭。
が、最愛の息子を失うことで、家族の形が変わってゆく。

『息子の部屋』では、あのとき診察にさえ行かなければと
罪の意識にさいなまれつづける夫。
妻は哀しみに暮れつづけるが、夫のことを責めたりはしない。
夫はどうしても自分が許せなくて、八つ当たりしてしまう。
妻は息子に恋人がいたことを知り、彼女に会ってみたいと思う。
夫は彼女に会ってみたいとは思うものの、踏ん切りがつかない。

『イン・ザ・ベッドルーム』では、
努めて平静をよそおうとする夫と、何も手につかず毎日泣き暮らす妻。
心の奥底ではお互いが相手のせいだと思っている。
夫は、妻が息子に厳しすぎたからだと、
妻は、夫が息子に甘かったからだと。
息子の彼女に君のせいではないと話しに行く夫と
息子の彼女が謝罪に来ても罵声を浴びせる妻。

「溝」が微妙に異なるけれど、
夫婦、姉、恋人というそれぞれの立場からの「失う哀しみ」は
痛く伝わってきます。

もう1本、まったくちがう形でそれを伝える映画についてまた次回

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

仮想世界がこんなにいっぱい。

2003年07月10日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
『マトリックス』にかぎらず、映画作品には仮想世界を描いたものがいっぱい。

まずは『ゲーム』(1997)。
『セブン』(1995)で話題になったデビッド・フィンチャー監督の作品なので、
ご覧になった方も多いのでは。
金も名声も手に入れて、何不自由なく暮らす実業家。
たいした趣味もない彼は、48歳の誕生日、弟から1枚のカードをプレゼントされる。
そこにはある会社の名前が。
その会社は「それぞれの人間にふさわしいゲーム」を提供する企業だった。
興味半分で参加手続きをする彼。
そして現実か夢かわからないゲームが始まる。

続いて『イグジステンズ』(1999)。
コンピュータ・ゲームをプレイするために、
脊髄に穴をあけるのが一般的になっている近未来。
この穴にコントローラを接続してプレイするのだ。
「イグジステンズ」と呼ばれる、ヴァーチャル・リアリティ・ゲームの製作発表会に集まった人びと。
この会場で、開発会社に恨みを抱く青年が銃を乱射。
プログラムの開発者(♀)と社員(♂)はなんとか逃げだす。
プログラムの無事を確かめるため、ふたりは「イグジステンズ」をプレイしてみることに。

監督はデビッド・クローネンバーグで、エログロ大好きな人。
コントローラも生物みたいにグニョグニョしてるし、
それが脊髄に突っ込まれるところなんてゲ~ッ。
銃や携帯電話までグニョ~ンでゲロゲロよ、ほんま。
でも観てしまうんやな、これが。

それから『13F』(1999)。
原作はダニエル・F・ガロイの『模造世界』だそうな。
高層ビルの13階にあるコンピュータ室。
研究者のダグラスとそのボスであるフラーは、
1937年のロサンゼルスを想定した仮想世界を創ることに成功する。
しかし、ある日、フラーが何者かに刺し殺される。
容疑をかけられたダグラスは、仮想世界上に犯人を知る鍵があると考え、
仮想世界への侵入を試みる。

どれもこれも、「で、いったいどこからどこまでがホンマなん?」
と、見終わったあと、めちゃくちゃいろいろ考えてしまいます。
そういう意味ではとっても頭を使う映画。
どれも「反則技」とは思いたくないのでね。
でも実は「反則技」だらけなんでしょうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『火山高』

2003年07月07日 | 映画(か行)
『火山高』(英題:Volcano High)
監督:キム・テギュン
出演:チャン・ヒョク,シン・ミナ,キム・スロ,クォン・サンウ他

レンタルしようかどうしようかと迷いつつ、
ビデオを手に取ってみたら、宣伝コピーが「韓国版マトリックス」。
ウソやろ、ギャハハと借りてみたら笑けた。
かなりオススメ。

火山高校に転校してきたギョンス。
転校は9回目。いずれも退学処分になっている。
彼はすごい「気」のパワーの持ち主で、
本当は普通に高校生活を楽しみたいのに、いつも喧嘩を売られてしまうのだ。
売られた喧嘩をつい買ってしまうがために事が大きくなり、その結果退学に。
今度という今度は普通の高校生活を送りたい。
絶対に喧嘩しないと誓うギョンス。

しかし、転校先の火山高では、長年に渡って生徒たちが覇権争いをくり広げていた。
校内には「師備忘録」と呼ばれる秘伝の書が存在し、
それを手に入れられれば覇者になることができる。
生徒の覇権争いどころか、世の中を自分のものにしたい教頭が教師の精鋭部隊を雇い、
校内で壮絶な闘いが始まる。

『マトリックス』顔負け(?)のワイヤーアクション。
壁伝いに激走、チョークは飛ぶわ、水滴は止まるわ。
みんな学生服というのも欧米ものより親近感が。
ギョンスをはじめとして、キャラクターはみんな愛すべき人物。
ギョンスをライバル視する不良軍団(その名も「非情組」)の組長チャン・リャンや、
「エージェント・スミス」も真っ青の恐るべき教師5人衆、
ギョンスが思いを寄せる冷たい美女、「氷の宝石」。
剣道部の部長で正義感あふれる女子生徒。

期待せずに観るとポイント高し。
『マトリックス』より笑えること、請け合い。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『リローデッド』をどう観る?(その2)

2003年07月04日 | 映画(ま行)
『マトリックス・リローデッド』、ネタバレがひたすら続きますのでご注意を。

前作では裏切り者のサイファーがいたけれど、
全体としては人間とコンピュータ・マシンの闘いでした。
もちろん今回もそうだけど、また裏切り者をにおわせて(中盤でナイフを持っていたベイン)、
さらにはモーフィアスに異議を唱えるザイオンの司令官ロックが登場したりと、
人間がマシンと闘うために、まず人間同士で闘わなければいけないようになっています。
人間の敵は人間ということ?

マトリックスはコンピュータ制御されている世界のはずなのに、
メロンビジアン(汚いフランス語好きの)の妻パーセフォニーが
夫のいぬ間にキーメーカーを差しだしたり、
プログラムがプログラムを裏切ることも。

しかし、最後に、それらをどう受け取るかに対する答えが暗示されたようで、
納得するとともに、口あんぐり。そんなん、ありか?
つまりはどれもこれもマトリックスだという展開。
ネオは6人目の救世主で、ザイオンが襲撃を受けるのもこれが初めてではない。
ザイオンでは必ず数人が生き残るように設定されていて、救世主もそのたびに現れる。
前作からいままで現実だと思っていたものが
これまた全部マトリックス?という、ほとんど反則技。

こうなると、前作最後にネオが生き返ったのもプログラムの一部だったという可能性も。
一旦心停止したトリニティーが息を吹き返したのも、
ネオが人類を救うか、トリニティーを救うかを選択させられたのも、
そして、ネオがトリニティーを選択したのも、
その結果、ザイオンが消滅しかけているのも、
何もかもがマトリックスのプログラム、なのかぁ!?

最後のシーンでネオと頭を突き合わせて寝かされてた人、
ザイオンの唯一の生存者となってましたが、裏切り者と思われるベインでしたね。
ヤツもプログラムの一部なのか不明ですが、
次回へつながる鍵となりそうな人物としては
地味でインパクト薄くないですかぁ?

まだまだ書けそうな気がしますが、このあたりで失礼をば。

次作『レボリューションズ』で
はじめてホンマの現実世界が登場するのかもしれん。

もしかしたら、阪神優勝もマトリックスかもしれん。←やっぱり不安。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする