夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

失う哀しみ

2003年07月14日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
愛する子どもを亡くすという設定の作品は多い。
お読みいただいている方でそんな経験をされた方がいらっしゃったら
これは安易に書くような話じゃないかも。
辛い気持ちにさせたらごめんなさい。

『息子の部屋』(2001)はイタリアの映画。
ナンニ・モレッティ監督が父親役で兼主演。
夫婦と娘、息子の仲良し4人家族。
ある休日、精神分析医のジョバンニのもとに、
患者から至急診てほしいとの電話が。
息子とのジョギングの約束をあきらめて、診察に向かうジョバンニ。
帰宅してみると、息子がダイビング中の事故で死亡していた。

『イン・ザ・ベッドルーム』(2001)。
夫婦と息子の3人家族。
父は人望の厚い医者、母は学校で合唱の指導をしている。
申し分のない家庭。
一人息子のフランクは子持ちの年上女性ナタリーとつきあっている。
彼女は暴力亭主と別居中。
ある日、フランクがナタリーの家にいると、銃を持った亭主が怒鳴りこみ、
フランクは撃ち殺されてしまう。

『息子の部屋』も『イン・ザ・ベッドルーム』も
息子の生前は家族の溝はまったく見えない。
誰が見ても仲睦まじい、幸せな家庭。
が、最愛の息子を失うことで、家族の形が変わってゆく。

『息子の部屋』では、あのとき診察にさえ行かなければと
罪の意識にさいなまれつづける夫。
妻は哀しみに暮れつづけるが、夫のことを責めたりはしない。
夫はどうしても自分が許せなくて、八つ当たりしてしまう。
妻は息子に恋人がいたことを知り、彼女に会ってみたいと思う。
夫は彼女に会ってみたいとは思うものの、踏ん切りがつかない。

『イン・ザ・ベッドルーム』では、
努めて平静をよそおうとする夫と、何も手につかず毎日泣き暮らす妻。
心の奥底ではお互いが相手のせいだと思っている。
夫は、妻が息子に厳しすぎたからだと、
妻は、夫が息子に甘かったからだと。
息子の彼女に君のせいではないと話しに行く夫と
息子の彼女が謝罪に来ても罵声を浴びせる妻。

「溝」が微妙に異なるけれど、
夫婦、姉、恋人というそれぞれの立場からの「失う哀しみ」は
痛く伝わってきます。

もう1本、まったくちがう形でそれを伝える映画についてまた次回

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