夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『WE LOVE BALLS!!』

2006年04月12日 | 映画(あ行)
『WE LOVE BALLS!!』(原題:Manner Wie Wir)
監督:シェリー・ホーマン
出演:マキシミリアン・ブリュックナー,リサ・マリア・ポットホフ,
   デヴィッド・ロット,ディエトマー・ベア他

2004年のドイツ映画。日本では劇場未公開でしたが、
ワールドカップにあわせたのか、先週DVD発売。
適当に借りたらかなり楽しめた拾い物。

地元サッカーチームのゴールキーパー、エキー。
ずっとマイナーから脱出できずにいるこのチームは、
今日の試合を決めれば晴れてメジャーに昇格。
ところが、終了間際、ゴール前に飛び出たエキーに
相手チームの選手がぶつかってくる。
その巧みな転び方に、エキーのファウルと見なされる。
PKを決められ、メジャーの夢はおじゃんに。

その夜、町のパブで開かれた慰労会では、
チームメイトのみならず、住民たちがエキーを責める。
いたたまれずに外に出るエキー。
そこにいたチームメイトのひとりと話すうち、衝動的に彼にキスしてしまう。
現場を目撃した他のチームメイトたちは騒然。
エキー自身も自分に潜んでいた思いに驚く。

翌朝、チームのミーティングに出向くと、
「男のスポーツにオカマは要らない」とクビの宣告。
「悔しければゲイのチームを作ってみろ」と言われたエキーは、
「そうする。4週間後に試合だ」と言い残し、町を離れる。

頼れるのはドルトムントに住む姉のスーザンだけ。
エキーは自分がゲイであることを打ち明け、
ここでサッカーのメンバーを集めたいと話す。
呆れながらも協力的なスーザンは、エキーとともにゲイのつどう店をハシゴ。
メンバー募集のチラシを配布する。

エキーは廃墟寸前のグラウンドを見つけ、
練習場として使用を許可してもらえるように頼み込む。
持ち主は往年の名選手カール。
今はクラブハウスで酒を飲む毎日。
さて運命の4週間後はいかに。

保守的な町ではゲイが受け入れられることはなく、
パン屋を営む両親はエキーのせいで閉店すら考えます。
息子をノーマルにしようとストリップバーに連れていく父、
何であろうと自分の息子だと腹を括る母、
カミングアウトしたにもかかわらず、
恋人のイケメン看護師を親に紹介することをためらうエキー。
家庭がほしくて一度は結婚したルドルフは、
まだ幼い息子を試合に招待したくて思い悩む。
それぞれの葛藤がコミカルに、でも細やかに描かれています。

レイザーラモンもかすむ、
レザーに身を包んだハードゲイのオッサンたちの
健気な一面も愛らしく。

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『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』

2006年04月07日 | 映画(か行)
『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』(原題:Bad News Bears)
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ビリー・ボブ・ソーントン,グレッグ・キニア,マーシャ・ゲイ・ハーデン,
   サミー・ケイン・クラフト,ジェフリー・デイヴィス他

不朽の名作『がんばれ!ベアーズ』(1976)のリメイク。

アル中の害虫駆除業者、モリス・バターメイカー。
かつてはマリナーズに所属し、わずか1イニングとはいえ、
メジャーリーグのマウンドを経験したことがある。
現在はメジャーリーガーの片鱗さえ窺えないが、
その経歴に惹かれた少年野球チームからコーチの依頼が来る。
気乗りはしないものの、悪くない金額を提示され、
小遣い稼ぎのつもりで引き受ける。

ところが、「ベアーズ」は想像を絶するダメダメチーム。
ベーコンをポケットに入れて持ち歩くおデブちゃん、
ポキッと折れそうないじめられっ子、
進学のためにチームに所属しているだけだから
試合には出してくれなくていいと宣言する数字オタク、
黒人、アルメニア系移民、英語すら通じない双子と国際色豊かだが、
およそ野球はできそうにもない。

案の定、初戦に大敗し、重い腰を上げたバターメイカーは、
剛速球を投げる別居中の12歳の娘アマンダのもとを訪ね、
なんとかチームに入ってくれるよう懇願する。

リチャード・リンクレイター監督は、『スクール・オブ・ロック』(2003)同様、
可愛いだけではない子どもの姿を描くのがめちゃ上手い。
いわゆるスポ根ものを観ると、
チームが勝利に向かって一丸となる様子やコーチの叱咤激励に
「熱いよなぁ、いいよなぁ」と涙しつつ、
どこかに嘘くささを感じる自分がいます。
この作品はそうでじゃない。
そのほうが嘘くさいと言う人もいらっしゃいましょうが、
むしろそんな相手チームがマヌケに見えて、ラストシーンは実に爽快です。

たぶんこんなに喜んだのは私だけ、
初めてベアーズが勝った日、お祝いは“HOOTERS(フーターズ)”にて。
HOOTERSについてはこちらこちらをご覧ください。
オハイオ滞在記ではアメリカ人のケチャップ好きについても触れましたが、
さらに私のツボにハマるこんな台詞も。
おデブちゃんがソーセージにケチャップをかけまくるシーンで、
「ケチャップをかけるのは心を病んだ人かテキサス人」とチームメイト。
なぜにテキサス?

HOOTERSのお姉ちゃんたちはやっぱり揃って巨乳でした。

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『STOMPの愛しの掃除機』

2006年04月04日 | 映画(さ行)
『STOMPの愛しの掃除機』(原題:Stealing Bess)
監督:リューク・クレスウェル,スティーヴ・マクニコラス
出演:キップ・パルデュー,ローズ・マッゴーワン,ジェームズ・レブホーン,
   リー・エヴァンス,チェヴィー・チェイス他

映画館で本編の上映前に流れるDOLBYのCM、ご存じですか。
デッキブラシやバケツの蓋、ドラム缶などを楽器に見立て、
踊りながら演奏する痛快なCMです。
あのパフォーマンス集団がイギリス生まれのSTOMP。
オフ・ブロードウェイでロングランを続ける彼らの案で、
彼らのために作られた映画がこれ。
プロモーションビデオもどきの映画かと思いきや、
ちゃんとストーリーがあります。

魚をこよなく愛し、金魚の養殖で生計を立てたいジャック。
だが、産業スパイである彼の父親ダークは
ジャックに常に仲間でいることを強要。
数十年前に大ヒットした掃除機「ハーモニア」の、
この世に残るただ1台の設計図を盗むため、
ジャックはJJヴァキューム社の工場に送り込まれる。

JJヴァキューム社の前身はジョンソン・ヴァキューム社。
先代の死後、ふたりの息子が反目し合い、
JJヴァキューム社とAJヴァキューム社に分離。
敷地は真っ二つに分けられ、両社で働く工員たちも互いを意識していがみ合っている。
彼らが唯一、共に大事にしているものが伝説の掃除機で、
その掃除機には「ベス」と名前まで付けられていた。
(ちなみに原題は“Stealing Bess”。)

JJヴァキューム社に工員として潜り込んだジャックは、
AJヴァキューム社のデビーに一目惚れ。
ジャックの視線を感じるデビーもまんざらではなさそうだが、
敵対する会社の工員同士の恋はどうなるのか。
そして「ベス」の設計図は盗み出せるのか。

どんな動きも音を打つシーンに早変わり。
掃除機を組み立てる音、パブのカウンターを滑るビールジョッキの音、
食卓で塩を次の人に回す音、凶器片手に喧嘩する音。
リズムに乗って踊る姿はこれ以上ないぐらい楽しげ。
音楽というものの素晴らしさを体感した気が。

ジャックを演じるキップ・パルデューは、
ディズニーなのに熱さ控えめなスポ根もの、
『タイタンズを忘れない』(2000)で将来有望視されていたのに、
その後に出演したスタローン主演の『ドリヴン』(2001)が災いして、
辛い俳優人生を余儀なくされてしまいました。
実際はSTOMPの映画である本作に形だけ主演というのは辛かろうと思います。
腐らずにガンバレ!

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