夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『小さいおうち』

2014年01月20日 | 映画(た行)
『小さいおうち』
監督:山田洋次
出演:松たか子,黒木華,片岡孝太郎,吉岡秀隆,妻夫木聡,倍賞千恵子,橋爪功,
   吉行和子,室井滋,中嶋朋子,小林稔侍,夏川結衣,木村文乃,米倉斉加年他

今週末封切りの作品。
タイから帰国した翌日、109シネマズ箕面にて試写会。
この日はダンナが仕事帰りに京都へ行くと言うので、ならばと私は試写会に。

試写会は、会場によってはゲンナリしてしまうことが多々ありますが、
劇場での試写会は気持ちもゆったり。
109シネマズ箕面は家からいちばん近い劇場にもかかわらず、
これまで試写会に応募したことはありませんでした。
当日の9:30から当選状を座席指定券と引き替えとのこと、
終業後に向かっても席があるのか不安でしたが、全然大丈夫

原作は中島京子の直木賞受賞作。
“男はつらいよ”シリーズや『東京家族』(2012)の名匠・山田洋次監督、御年82歳。
なんと監督作82本目となる本作が、初の恋愛ものだそうです。

布宮タキ(倍賞千恵子)が亡くなる。
生涯独身で、親類の荒井康子(夏川結衣)が同居話を持ちかけても頑として聞かず、
ずっと一人暮らしをしていたタキ。
電話に出ないタキを心配した康子の弟・健史(妻夫木聡)がタキ宅を訪ねたところ、
力を込めてうずくまるような姿勢で亡くなっていたという。

荒井軍治(小林稔侍)ら親類一同で遺品整理をしていると、
健史に渡すようにと記されたノートが出てくる。
それはタキがいつからか書き留めはじめた自叙伝だった。
執筆中、たびたび健史がタキからノートを奪い取って読んでいた。
その時分を懐かしく思いながら、健史はページをめくるのだが……。

こうして、タキが亡くなってからの平成時代と、タキが健在だった平成時代と、
タキのノートに綴られた昭和時代、3つの時代の話が紡がれます。

山形で生まれたタキは、戦争が泥沼化する昭和初期、
東京のモダンな赤い三角屋根に暮らす平井一家へ女中奉公にやってきます。
この時代のタキ役には黒木華
自叙伝中に「別嬪ではなかったから」という一文があるように、
確かに彼女の容貌は田舎くさいとも言えますが、
純朴で真面目な様子がとても可愛らしく、これ以上にないハマリ役。

平井家の美しい女主人・時子(松たか子)は、
夫・雅樹(片岡孝太郎)が連れてきた新入社員の板倉正治(吉岡秀隆)にゾッコン。
やがて禁断の恋に走ってしまう時子を間近で見つめ、
どうすればいいのか悩み苦しむタキの演技が素晴らしい。

けれども如何せん、松たか子と吉岡秀隆ではエロさに大きく欠け、秘めた情愛が上品すぎ。
松たか子が脱ぐわけもなく、ひたすら地味な印象でヒットは望みにくそう。
それでも、帯紐の向きだけで不倫を表現する演出には唸らされます。
純朴さや品がなくなったら、山田洋次監督ではなくなる気もしますし。

この監督の作品がいつもそうであることと言えば、日本語のこと。
ノートを読む形で入る倍賞千恵子のナレーションは、とにかく日本語が美しい。

平井家はどうなったのか。正治はその後どうしたのか。
タキが誠心誠意を尽くして看病した平井家の幼い息子・恭一は生きているのか。
そんな謎に満ちた部分が明かされるシーンは涙が止まらず。

墓場まで秘密を持って行ったタキ。
その心情を考えると、戦争さえなければと思わずにはいられません。
子どもの頃いちばん好きだった絵本『ちいさいおうち』、もう一度読みたくなりました。

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タイから帰ってきた。〈おまけの話〉

2014年01月18日 | ほぼ非映画(旅行)
今回の旅行記でさんざん書いてきたとおり、
ダンナの英語は文法からっきし駄目なのですが、まったくビビらずにしゃべります。

タイへ出張で行きはじめたころ、週末ぐらい仕事から離れて旨いものが食いたいと、
でもあまり危険な場所へは行けないしということで、
バンコク市内の高級といわれるホテルのメインダイニングあちこちへ行ってみたそうです。

そんななかでもっとも美味しく落ち着けたのが、
今回訪問したスコータイホテルの“La Scala(ラ・スカラ)”。

ダンナが初めて訪問したとき、「何をお飲みになりますか」と聞かれ、
「何かカクテルをお願いします。どんなカクテルができますか」と聞き返したら、
「あなたがお望みのものは何でもおつくりします」との返事。

下戸のダンナはシェリーを何かで割ってもらおうと、
「ドライシェリーをトニックウォーターで割ってください」と頼んだら、
ダンナの発音では「シェリー」が通じず。
シェリーの銘柄を言えばわかってくれるかなと、
「ティオペペをトニックウォーターで割ってください」と言い直すと、
ティオペペはちゃんと通じたものの、言い直す前の「シェリー」はスタッフの耳に残っていた様子。

出てきたものを見て、ダンナ、ビックリ。
ティオペペをトニックウォーターで割ったものに、サクランボが入っている!
そうなんです、「シェリー」ではなく、「チェリー」に聞こえていたんですねぇ。

以来、ダンナが行くと必ずサクランボが。
いつもひとりだし、サクランボなんて食べてるし、怪しいと思われていたかも。(^^;

今回の旅行では、私もそのサクランボ入りを実際に見ることができました。
誤解を解くには語学力が足りなく、まぁ誤解されたままでもオモロイかと。

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タイから帰ってきた。

2014年01月17日 | ほぼ非映画(旅行)
今ごろがもっとも過ごしやすいとおぼしきタイの気候。
朝晩は20℃止まり、日中は30℃近くまで気温が上がりますが、
湿度が50%程度なので、めちゃめちゃ快適です。
そんなところに数日間いただけで、日本の寒さが堪えます。

そういえば、20年ちょい前にインドネシアへ旅行したとき、
あまりの湿気に髪の毛がぼわぼわになり、「この国には住めん」と思いました。
ちなみに、逆に私の髪の毛に最適だと思ったのはカナダでした。
と、他国の話は置いておくとして、この季節のタイならば住めそうです。

そのほか、バンコクで「およっ?」と思ったことを挙げてみると。

トイレットペーパーは基本的に柔らかい。
どこに行ってもガシガシに硬いペーパーしかない国もありますが、ここはそうではないらしい。
ホテルのトイレットペーパーは柔らかいダブルでお尻に優しい。
チープなホテルでは、柔らかいペーパーのせいで大量に使われるからか、
詰まることもしょっちゅうだそうです。
スコータイホテルでは、もちろんそんなことはありません。(^^;

車の運転中、クラクションを鳴らすことは非常に稀。
今回利用したリムジン、ローカルタクシーともに、運転手さんはイケイケで、
信号が黄色になるとアクセルを踏み込みます。
かなり好き勝手に車線変更や割り込みをしている印象を持ちましたが、
クラクションを鳴らしたり鳴らされたりということはまずありません。

そんな状況でふと思い出したのが、知り合いの広島県民の話。
あたふたと出勤したその女性は、「車のエンジンをかけたらクラクションが鳴り出して」。
そして、自分の車のクラクションの音を初めて聞いたと言うのです。
「えっ、クラクションを鳴らしたことがないんですか」と尋ねたら、
「今まで一度も鳴らしたことはありません」。
それからしばし考えている様子で、「あ、一度だけあります。
路上の鳩にどいてもらおうと思って鳴らしたことが」。

その知人の話では、広島ではクラクションを鳴らす人はまずいないと。
そんなアホなと思いましたが、後日、広島へ行く機会があってビックリ。
渋滞で殺気立った大通りでも、確かに誰も鳴らさない、クラクション。

またしても話が脱線してしまいましたが、タイも広島と同じなのでしょうか。
ダンナ曰く、タイ人は人に嫌がられることはしない。
車の割り込みなどは人に嫌がられることではあるけれども、
自分もすることだから、他人がやっても怒らない。タイ人は滅多に怒らないと。

電車で男性は座らない。座席は女性のためにあるもの。
BTS(スカイトレイン)乗車時、座っていた男性といえば、タイ人以外ばかりでした。

そうそう、レディファーストは欧米のものだと思いきや、
タイでもホテル内では徹底したレディファースト。
エレベーター内に女性が私ひとり、あとの数名は男性だったとき、
私が降りるまで誰も降りようとせず、みんなから「どうぞ」と言われて面食らいました。

帰国後にホテルの口コミサイトを見ると、スコータイホテルはおおむね高評価ですが、
サービスがなっとらんと怒っている人もちらほら。
だけど、私はバンコクで宿泊するならここを強くお薦めします。

大きな道路に面した立地ながら、敷地内は別空間。
高層ビルが多いなか、このホテルは比較的低層の9階建て。
建物よりも空間部分に敷地が割かれ、緑が溢れています。

前述のようにサービス満点。
アーリーチェックインとレイトチェックアウトに、
こちらが申し出ずとも当然のように無料で対応してくれました。
ガーデンビューのツインルームは、予約した部屋よりグレードアップされていたし、
ウェルカムフルーツやチョコレートもウマウマ。

ところでお正月に実家へ寄ったとき、
弟が購入したというネスレのカプセルコーヒーマシンで淹れたコーヒーを飲みました。
スコータイホテルの部屋に常備されていたのはラバッツァの同様のマシン。
味に差はないように思いましたが、異国のホテルのいい部屋で飲むと、
そのシチュエーションだけで、ラバッツァのほうが美味しいように感じますね。(^^;

しかしこういう滞在で思い知らされるのは、我々がいかに小市民で貧乏性であるかということ。
ラバッツァのカプセルコーヒーはもともと6個用意されているのですが、
6個まではタダなのかなと思ってしまいます。
実際は何個使おうが毎回きっちり補充してくれるし、なくなれば頼みゃいいんです。
ミネラルウォーターにしたって、最初部屋に用意されているのは6本。
全部使い切ってしまいそうだからと、初日にスーパーで購入しましたが、
これも毎度補充してくれるので、購入した水をそのまま持って帰国するはめに。

ちょっぴり可笑しかったのはベッドメイキングの話。
1泊目の翌朝、ダンナが「早ければ8時すぎにベッドメイキングに来るで」。
ところがこれはダンナが出張で使用するもっと安いホテルのみのことらしい。
高級ホテルになればそんなことは決してなく、
レイトチェックアウトした日は13:30に荷物を取りに来てもらおうとフロントに連絡するまで、
ドアがノックされることはありませんでした。

ついでに、ダンナに「出張のときに泊まるホテルでも荷物を取りに来てもらうん?」と尋ねたら、
「いいや、自分でフロントまで持って行くよ」。
さらに、たとえば部屋に不足しているものがあったとき、
ダンナが常用しているホテルではフロントに電話しても誰も出てくれないそうな。
電話を取れば客に何か頼まれること確実だから出ないんですと。
フロントまで出向いて、何々がないから頂戴と言わねばならぬそうです。

てな話を聞いていると、世の中のサラリーマンは大変ですね。
異国での不自由に泣き、揉まれ、TOEICの成績がどれだけ悪かろうとも、
ひとりで海外でやっていける人になるのだなぁと感心したのでした。

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タイに来た。〈その4〉

2014年01月15日 | ほぼ非映画(旅行)
スコータイホテルで食事するのが目的だったこの旅行、
その目的だけは見事に完遂。
おなかがすいているときはまったくない3日間でしたが、
どれもこれも美味しくいただきました。

朝食のさいに山盛りのエシレバターを見ては、
梅田の阪急百貨店のエシレショップで買ったらなんぼするんやろと思い。
その場で焼いてくれるパンケーキとフレンチトーストとワッフルの旨さに感激し、
“シトラス”と表示されたジュースにチャレンジしたら、
酸味のきいたミックスジュースでこれまた美味しく。

“La Scala(ラ・スカラ)”では結局3度も食事を。
海外のお店はランチもディナーも基本的に同じ値段なのがいいですよね。
ランチもディナーも同じお料理を同じサービスで食べられる。
日本のようにお得なランチメニューがあるのもいいですが、
そのせいで日本のレストラン業界は給料が低めなのかなぁとも思ったりして。

一昨日の晩、昨日の帰国便に乗るためのリムジンを依頼。
タイへ向かったときと同じく、帰国便も深夜発。
デモの影響はもうないだろうけれども、渋滞に引っかかるかもしれないので、
リムジンはホテル発18:00でお願いすることに。
通常のチェックアウトは12:00ですが、
「18:00に空港へ向かうならばチェックアウトは14:00でいいですよ」とのこと。
チェックインまで別の部屋を用意してくれたように、
こちらが言わずともサラリとこういうサービスを提供してくれるのが嬉しい。
これだって、もしも日本での予約時に旅行会社にお願いしていたら、
しっかり追加料金を取られたような気が。

チェックアウト後はロビーのティーサロンでホットチョコレートを飲みながら読書。
持参した本は久坂部羊の『破裂』上下巻でした。
この人、大阪出身の医師であり作家。
阪大病院その他、関西の病院がモデルになっていると思われ、
木下半太じゃないけれど、出てくる地名がなじみのあるものばかり。
ゆえに、バンコクまで来ているにもかかわらず、
千里中央やら緑地公園、阪急茨木市駅やら阿倍野やら夙川の文字ばかり見て、
私はいったいどこにいるんだろうと思いました。

ホテルから空港へのリムジンは、往路より3,000円ほど高く払い、
メルセデスベンツのSクラス。
こんなもんに乗ったことのない小市民としてはビビります。
出張時に同じ道路をショボい車で通過しているダンナは、
「この道、いつも乗ってる車やったら天井でアタマ打ちそうになるぐらい跳ねるねんで」。

こうしてさきほど帰ってまいりました、大阪。
バンコクはちょっと大阪に似ている気もします。
こんな「観光いっさい無し」の旅も良かったということで。(^O^)

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タイに来た。〈その3〉

2014年01月14日 | ほぼ非映画(旅行)
大規模なデモであちこち占拠されていた昨日のバンコク。
朝食後にテレビをつけてみると、確かにデモはそこここで決行中。
しかし、もしもこれが日本であれば、
どのチャンネルを回しても緊急報道番組を放送しているのでしょうが、
通常番組を放送している局もたくさん(というのか、ほとんど)。
朝からコロッケの試食をしている番組もあってワロてしまいました。

映し出される街は月曜日の通勤時間帯だというのに、
ほとんど人が歩いていません。
一方、ショッピングモールなどは普通に営業しているらしく、
オフィス街と対照的に人があふれている様子。
どうやらこのデモは「臨時の仕事休み」ぐらいの感覚か。

そういえば、2011年のタイの大洪水時、
日本では相当深刻な事態のように報道されていました。
確かに深刻だったとは思いますが、
ダンナが実際に見聞きした状況と日本での報道はかなり異なります。

小学校校舎の2階付近まで浸水し、
泥色の水を見て日本人なら病気に罹る心配もするところ。
タイ人は教師も含めて屋上からの飛び込みを楽しんでいたそうです。
なんとポジティブ思考のおおらかな国なのでしょう。

閑話休題、そんな感じなので、どこかへ行くこともできたのですが、
事態が急転して出先から帰ってこられなくなっても困ります。
ここはおとなしく、そしてせっかくスコータイホテルへ来たのですから、
ホテル内の有名なタイ料理レストラン“Celadon(セラドン)”で昼食を。
青いパパイヤのサラダ“ソムタム”は私のお気に入り。
シンハーとタイのウイスキーも飲んでデザートまで堪能、
またもや食べすぎてしまったのでした。

デモの影響がまったくないホテル前の通りにセブンイレブンを発見、
そこまでぐらいなら歩いて行っても平気。
小さな店舗だったので、あまり品数はありませんでしたが、
亀田製菓のおこめチップスやコアラのマーチはゲット。
タイでは日本語が書かれている商品が人気で、
漢字は中国語と区別がつきづらくてややこしいため、
平仮名や片仮名が書かれているのがポイントです。
化粧品や日用品にも「美しさはここから」みたいなことが
しっかり日本語で書かれていて可笑しい。

朝昼と食べすぎたにもかかわらず、
晩はふたたび“La Scala(ラ・スカラ)”へ。
皿数は減らしたものの、ロブスターとアボカドのサラダやら、
羊肉のパッパルデッレやらフォアグラとチーズのリゾットやら、
オススメにしたがって迫力のある料理ばかり食べてしまい。
帰国後は断食しないと体重を戻せないかも。(--;

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