夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『カーマイン・ストリート・ギター』

2019年09月25日 | 映画(か行)
『カーマイン・ストリート・ギター』(原題:Carmine Street Guitars)
監督:ロン・マン
 
西宮で4本ハシゴした日の翌日、梅田で3本ハシゴの1本目。
テアトル梅田にて、予告編を観て惚れてしまった作品を。
 
“カーマイン・ストリート・ギター”はニューヨークにあるギター店の名前。
マンハッタンのダウンタウン、グリニッジ・ヴィレッジにあるそうです。
ワシントン・スクエア公園とかニューヨーク大学がある辺りらしい。
店主でギター職人リック・ケリーとその母親ドロシー、
リックの弟子である25歳のブロンド娘シンディ、たった3人で切り盛りする小さな店。
 
本作はそんな“カーマイン・ストリート・ギター”の1週間を追います。
 
小さな小さな店なのに、世界中の一流ギタリストが訪れる店なのです。
ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスなどなど大御所が愛用。
彼らが魅了されるこの店のギターはなんとすべてリックの手作り。
ニューヨークの建物の廃材を使って作られるギターは途轍もなくユニーク。
 
19世紀の建物の廃材も多く、リックは廃材が出るという情報を逃しません。
古いバーの廃材情報を得て出かけ、客がこぼすビールが染み込んだ廃材に心を踊らせる。
これがまたいい音色を出すんだなぁ。
 
ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストンといったギタリストのほか、
映画監督のジム・ジャームッシュもギター片手に訪れて修理を依頼。
単にギターを作るだけではなく、アフターケアもばっちり。
 
病気に罹って右手の中指の神経を失ってしまったギタリストが、
それでもギターを弾きたいとやってきたときには、
彼が持っているギターを見て、リックは「もう少し太いネックのほうが良い」とアドバイス。
そのほうが手がリラックスできるからと、リックから渡されたギターに、
嘘みたいに弾きやすいと感激する様子に胸が熱くなりました。
 
弟子のシンディの話も面白い。
女性店員を見たときの男性客の反応は2種類。
カッコイイと言うか見下すかのどちらか。
あるときは客からギターを預かるさい、
ブランドを聞こうとして「これは何ですか」と尋ねたら、
返事は「ギターだ」だったそうです。(^^;
シンディの誕生日に用意されたギター型のケーキは凄かった。
 
絶対なくならないでね。
生まれ変わったら私もギタリストになって、行ってみたいから。行くから。

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『SHADOW/影武者』

2019年09月24日 | 映画(さ行)
『SHADOW/影武者』(原題:影)
監督:チャン・イーモウ
出演:ダン・チャオ,スン・リー,チェン・カイ,ワン・チエンユエン他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴのラスト。
 
シネコンで中国作品がかかることってあまりない気がするんです。
チャン・イーモウ監督のこのひとつ前の作品は、
マット・デイモンを主演に起用した『グレートウォール』(2016)でしたから、
中国作品というよりは中国色の強いハリウッド作品みたいな感じでしたし、
純粋な中国作品をシネコンで観るのはもしかして初めてじゃないでしょか。
 
こういうのを「武侠アクション」というのですね。
 
戦国時代。
沛国が強大な軍事力を誇る炎国に領土を奪われたまま20年が経過。
沛国の若き王は領土奪還を叫ぶことなく、炎国のご機嫌を取ってかりそめの平和を維持。
人々は屈辱を感じているが、それを王に訴えることはできない。
 
そんななか、重臣の都督が王の許可を得ずに勝手に炎国へ出向き、
最強の戦士と言われる楊蒼に対決を申し込む。
もしも勝てたとしたら、都督は領土を返還せよと言うつもり。
 
しかし実は、王をはじめとする人々が都督だと信じ込んでいるのは都督の影武者
本物の都督は刀傷がもとで病に罹り、なんとか生きながらえてはいるが、
それを隠すために用意した影武者が都督のふりをしているのだ。
彼が影武者であることを知っているのは、本物の都督とその妻である小艾のみ。
 
本物の都督の狙いは領土奪還と王の座。
炎国の最強戦士との対決に向けて、影武者は特訓を続けるのだが……。

非常に面白かったです。
話としてはそんなに新しさも珍しさもありません。
影武者が本物の妻と過ごすうち、双方気持ちが移るというのもありがち。
 
何が面白かったって、やはり武術が披露されるシーン。
降り注ぐ雨の中、太極図を上から撮っているところはめちゃめちゃ綺麗。
傘を用いて刃を止めるシーンも本当に美しい。
 
傘は傘のままであってくれたらもっと興奮したのですが、
立派な武器に改造されてしまった傘にはちょっと興醒め。
でも、勝手に縁談をまとめられてしまった王の妹が反抗の意味を込め、
影武者たちとともに炎国へ乗り込んで戦うところなんて涙が出ます。

都督と影武者はダン・チャオの一人二役。
当然おなじ顔なのに、別の人格を演じていて、違う人に見えるほど。
 
都督の妻役のスン・リー、めっちゃ綺麗。
王の妹役のクアン・シャオトン、めっちゃ可愛い。
綺麗なひとを見るのは楽しいものです。
 
復讐完結とはいうものの、凄絶なエンディング。
たまには中国映画もどうですか。

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『プライベート・ウォー』

2019年09月23日 | 映画(は行)
『プライベート・ウォー』(原題:A Private War)
監督:マシュー・ハイネマン
出演:ロザムンド・パイク,ジェイミー・ドーナン,トム・ホランダー,スタンリー・トゥッチ他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの3本目。
この日の本命は本作でした。
 
イギリス/アメリカ作品。
監督は数々のドキュメンタリー映画で高い評価を受けてきたマシュー・ハイネマン。
ドキュメンタリー出身監督らしく、劇映画デビュー作として選んだのは、
2012年にシリアで命を落とした戦場記者メリー・コルヴィンの伝記。
 
英国サンデー・タイムズ紙の特派員として活躍するアメリカ人女性記者メリー・コルヴィン。
戦場を飛び回り、2001年にスリランカでの取材中に左眼を失明してしまう。
片眼を失いながらすぐに現場復帰を果たしたメリーは、
それ以降、黒い眼帯をトレードマークとして着用するようになる。
 
2003年にはフリーのカメラマン、ポール・コンロイとともにイラクへ。
スクープをものにするが、帰国後に悪夢に悩まされるようになる。
紛争地での過酷な取材が彼女の心を少しずつ蝕んでいたのだ。
PTSDの診断が下され、メリーはしばらく入院を余儀なくされてしまう。
 
それもなんとか克服し、仕事に復帰すると、
2011年にはカダフィ大佐へのインタビューを敢行。
 
2012年にはシリアへ入国、政府軍に包囲されたホムスで反政府勢力側の取材をおこなう。
シリア政府は市民を攻撃したことはないと一貫して主張するが、
メリーが見た現実は、建物内に身を潜めて動けない市民たちの姿だった。
外に出ようとすれば容赦なく政府の攻撃を受け、怪我人や病人多数。
 
やがて、市民が隠れている建物が政府の標的にされると知り、
記者たちはただちに逃げる用意を始めるが、メリーは引き返して取材を続ける。
その様子は全世界に動画配信される。
 
動画の配信を終えた後、建物から脱出しようとした折りに爆撃に遭い、
メリーは命を落としました。
政府はこの爆撃も反政府勢力によるものと発表したそうですが、
メリーと行動をともにして生き延びたポールがそれは嘘であると主張。
 
戦場のシーンは凄絶で言葉も出ません。
現場を映すことに意味はあるだろうか、
いや、映すことで世界の人々が少しでも関心を持ってくれたらと願うメリー。
 
ドキュメンタリー映画でも観ているかのような戦場シーンとともに、
取材を終えた記者たちが過ごす時間も描かれています。
お酒も飲むし、その場で目が合った記者と一夜限りの情事も楽しむ。
そうでもしなきゃやっていられないんだろうと思うことしきり。
 
綺麗なお姉さんだったり、天然系の可愛い女性だったり、
好きな女優ではありましたが、今までのイメージはそんな程度。
ところがこれはイメージ一転。凄いです。
エンドロールが回りかけたとき、生前のメリー本人の語りが流れますが、
声だけ聞くとロザムンド・パイクがまだ喋っていると思ったぐらい。
声の出し方からしてパイクはなりきっていたのがわかります。
 
戦場で使われる武器なんてどうでもいい。
人がどうなっているのかを撮り続けた彼女。
取材に命をかける記者たちに敬意を払いたい。

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『人間失格 太宰治と3人の女たち』

2019年09月22日 | 映画(な行)
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
監督:蜷川実花
出演:小栗旬,宮沢りえ,沢尻エリカ,二階堂ふみ,成田凌,
   千葉雄大,瀬戸康史,高良健吾,藤原竜也他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの2本目。
 
読書好きを自負しておりますが、太宰治って読んだことがない。
お恥ずかしいことですみません。
こんな破天荒な人だったということも知りませんでした。
昔の作品をもっと読まなあかんと思うものの、なかなか。
 
何人もの女性と浮名を流し、自殺を図っては未遂に終わる作家・太宰治(小栗旬)、
自堕落な私生活は皆の知るところであり、振り回される担当編集者・佐倉潤一(成田凌)。
 
太宰には妻・美知子(宮沢りえ)と子どもふたりがすでにいて、
美知子のお腹のなかにはさらにもうひとり。
にもかかわらず太宰は歌人・太田静子(沢尻エリカ)と逢瀬を重ね、
静子が太宰との日々を綴った日記を手に入れるとそれをもとに小説を執筆する。
『斜陽』という題名で出版されたその本はたちまちベストセラーに。
 
静子から妊娠したという電報を受け取ると、太宰は連絡を絶つ。
太宰を囲むパーティーに静子は弟・薫(千葉雄大)を伴って顔を出すが、
太宰に徹底して無視される。憤る薫。
その様子を見ていた未亡人・山崎富栄(二階堂ふみ)は静子に声をかける。
 
富栄は、太宰と静子の関係にまるで気づかないまま太宰の虜に。
太宰は今度は富栄の自宅に入り浸るようになり……。

蜷川実花監督の作品は今まで観たどれも、良かったという感想は持てません。
最後まで眠くならないからつまらないわけではないのでしょうが、
魅力的な登場人物もいなくて、惹かれる部分がまるでない。
 
小栗くん演じる太宰治にもまったく魅力を感じられず、
同じ作家を演じた作品なら、『響―HIBIKI―』(2018)の彼のほうがずっと人間味があってよかった。
蜷川監督の『ヘルタースケルター』(2012)で脱いで話題になった沢尻エリカが今回は胸隠す。
代わりに(?)脱いで見せた二階堂ふみも、これで脱ぐのはなんだかもったいない気が。
 
血を吐いても酒を飲んで女を抱き続けた太宰がちっともいい男に見えない。
彼に尽くす女たちにも全然共感できなくて、退屈でした。
ただ、終盤の宮沢りえ演じる妻だけはちょっとカッコよかったけど。
 
蜷川監督は私はもういいよと思うんですが、一応は観ちゃうんだろうなぁ。

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『記憶にございません!』

2019年09月21日 | 映画(か行)
『記憶にございません!』
監督:三谷幸喜
出演:中井貴一,ディーン・フジオカ,石田ゆり子,草刈正雄,佐藤浩市,小池栄子,
   斉藤由貴,木村佳乃,吉田羊,山口崇,田中圭,梶原善,寺島進,有働由美子他
 
TOHOシネマズ西宮にて4本ハシゴ。
間にもう1本入れて5本ハシゴできなくもなかったのですが、
令和初の“仮面ライダー”はパスして、食事しながら読書する時間に当てました。

久しぶりです、三谷幸喜監督。
前回の監督作『ギャラクシー街道』(2015)はヒドかった。
それと比較すると段違いの面白さ。
大好きだった『12人の優しい日本人』(1991)のこぢんまりとした楽しさは
もはやありませんけれど、芸達者な有名俳優が並ぶと豪華です。

史上最悪の支持率を叩き出した嫌われ者の内閣総理大臣・黒田啓介(中井貴一)は、
ある日の演説中に聴衆から飛んできた石が頭に当たって昏倒。
病院で目覚めたときには幼いときの記憶を除いてすべての記憶を失っていた。
 
首相秘書官・井坂(ディーン・フジオカ)は事務秘書官・番場(小池栄子)と
秘書官補・野々宮(迫田孝也)に総理記憶喪失の事実を伏せるように指示。
黒田の妻・聡子(石田ゆり子)にすら言わないでおくことを決める。
 
井坂は戸惑う黒田を記者会見やら囲み取材やらに引っ張り出し、
余計なことをしゃべらずに切り抜けろと言う。
ところがこれまでの傍若無人ぶりが嘘のように善人然とした黒田は、
井坂や番場の予測不能な振る舞いに出て、周囲を驚かせるのだが……。

悪徳官房長官に草刈正雄。野党党首に吉田羊官邸の料理人斉藤由貴
米国大統領木村佳乃。総理をゆするフリー記者に佐藤浩市
その辺のおまわりさんに田中圭。石を投げた輩に寺島進
一瞬誰だかわからなかったのは、どぎついメイクのニュースキャスター役、有働由美子。
いつもの有働さんと違いすぎてたまげました。
総理の義兄役がROLLY(=ローリー寺西)だというのも意外で笑った。
甥っ子の部屋でギターを弾くシーンもちゃんとあります。
演じている役者たちもさぞかし楽しかっただろうと思うのです。
 
誠実なだけじゃ世の中は変えられない。
それでも、世の中をよくしようと本気で考える政治家がいたら、変わって行くはず。
 

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