夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈な行〉

2023年12月29日 | 映画(な行)
《な》
『なまず』(英題:Maggie)
2018年の韓国作品。U-NEXTにて配信。
ある病院で、男女がSEXしているところを盗撮したレントゲン写真が流出する。
盗撮したのが誰かではなく、被写体のカップルは誰なのかと皆が騒ぐ。
看護師のユニョンは、これは自分と恋人ソンウォンの姿だと確信。実はそうではないのに。
噂の的になっているかもしれないとビビりながら翌朝出勤すると、
副院長のギョンジンしか出てきておらず、他の職員は全員体調不良だと言う。
そんなことがあるはずはないと怒るギョンジンをなだめるユニョン。
ちょうどその頃、街のあちこちにシンクホールが出没。
無職だったソンウォンはシンクホールの埋め戻し工事に職を得るのだが……。
『梨泰院クラス』でブレイクする前のイ・ジュヨンがユニョン役。
ソンウォン役のク・ギョファンが脚本と製作を担当。
ギョンジンを演じるのは、一気に作品の格を上げるムン・ソリ
なまず目線で描かれているのが面白くはあるけれど、オフビートすぎてちょっと困る。
ユニョンがソンウォンの元カノからの情報でソンウォンのDV気質を疑って振る。
すがるソンウォンがシンクホールに落っこちておしまいという驚愕のラスト。
思わず「えっ!?」と声に出ました。これで終わるのかよっ。
 
《に》
『苦い涙』(原題:Peter von Kant)
2022年のフランス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
フランソワ・オゾン監督がドイツ出身の映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの戯曲を映画化。
ファスビンダー自身がメガホンを取った『ペトラ・フォン・カント 苦い涙』(1972)のリメイクです。
ゲイの映画監督のピーター・フォン・カントは、恋人と別れて落ち込んでいたところ、
親友で大物女優のシドニーから紹介された青年アミールに一目惚れ。
俳優志望のアミールを自らの手でスターにしようと、自分のアパートに住まわせるのだが……。
40歳で巨漢、著名な映画監督でなければ男も寄ってこないだろうという外見のピーター。
確かに、痩せていたら格好いいかもしれないし、愛嬌のある顔立ちではあるけれど。
そんな彼が若くて美しいアミールにぞっこんになるところを見せられても私は嬉しくない。
アミールのほうは打算ありありだし、相手にされていないこともわからない中年男の情けなさ。
ピーターのことを本当に愛し気遣ってくれているのは秘書のカールなのに。
まったく、観ていて嫌になっちゃいました。
シドニー役には本当に大物女優のイザベル・アジャーニを起用。凄い大物感があります。
 
《ぬ》
『ヌーのコインロッカーは使用禁止』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
脱サラに失敗した挙げ句、保険金詐欺で捕まって懲役刑を食らった黒迫和眞(上西雄大)は、
出所後、息子の大学入学資金を工面しようと、知り合いのヤクザを頼る。
ヤクの売人となった和眞は、その受渡場所に指定されているコインロッカーへと向かうが、
“ぬ5515”を使用しようとすると、そばにいた那須叶(なすかなえ)(古川藍)が怒る。
ヌーと呼ばれている彼女は、生まれてすぐに“ぬ5515”に捨てられていたらしい。
発達障害のあるヌーは、絵を描きながら毎日“ぬ5515”を見張っているのだ。
彼女に興味を持った和眞が、自作のふりをしてSNSに絵をUPすると反響があり……。
上西監督の作品は相変わらずVシネマちっくなのですが、人情があって面白い。
最初はどうだかなぁと思っていたヌー役の古川藍も良いものに見えてきます。
彼女を妹のように思うソーシャルワーカーには上西作品の常連、徳竹未夏。
ラーメン店主役の菅田俊にも味があるし、検事役で登場する田中要次も○。
もしも発達障害者への虐待シーンを見せられたら目を覆いたくなるところでしたが、
そこはなくてありがたかった。でも現実にはそういうことが多々あるでしょうね。
 
《ね》
『劇場版 ねこ物件』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
同名TVドラマシリーズの劇場版。
2匹の猫と祖父とともに暮らしていた二星優斗(古川雄輝)。
祖父が亡くなり、気持ちの整理をつけられずにいたが、
親切な不動産屋の広瀬有美(長井短)にシェアハウスの再開を促される。
最初は断ったものの、自分には生き別れの弟がいると祖父から聞いたことを思い出し、
シェアハウスの様子を全国に発信すれば、弟を見つけられるのではないかと考える。
そこで、シェアハウスの入居者を大々的に募集して、SNSをフル活用するのだが……。
猫が好きです。猫を見ているのは確かに楽しいけれど、この劇場版だけではどうかなぁ。
人間関係もイマイチわからないから、ぼんやり眺めるだけになってしまいました。
TVでじゅうぶんかもしれません。
 
《の》
『ノーウェア:漂流』(原題:Nowhere)
2023年のスペイン作品。Netflixにて配信。
財政難に悩むスペイン政府は、労働力を見込めない妊婦や子どもを殺すという暴挙に出る。
身重のミアとその夫ニコは、国外へ脱出することを決意。
仲介業者に高い金を払い、アイルランドへ向かう貨物船で密出国することに。
ところが同様の者が押し寄せたためにひとつのコンテナには収容しきれず、ミアとニコは離ればなれに。
しかもミアが入ったコンテナが検問でひっかかり、なんとか隠れたミア以外、全員射殺されてしまう。
出港した貨物船は嵐に遭い、ミアはコンテナごと大海原へ放り出される。
かろうじて繋がった携帯電話でニコに救いを求めるが、ニコのほうも大変な状況。
やがて産気づいたミアは、水位が増してきたコンテナの中、たったひとりで出産。
生まれてきた赤ん坊と共に漂流を続けるのだが……。
冒頭ではボーッとしているミアにイライラさせられましたが、その後は逞しさ全開。
コンテナ内で水に浮かぶ積荷から使えるものを探し出し、必死で生き延びます。
食べるものがなくなってへその緒に齧りつく姿はホラー。
コンテナから外へ出ようとしたときに太ももが切り裂かれるシーンはこっちも絶叫したくなる。
最後はちょっとジーンと来た。あ、でもニコとの再会は叶いませんのであしからず。

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今年観た映画50音順〈た行〉

2023年12月28日 | 映画(た行)
《た》
『タイムボム 爆弾解除、ミスしたら即死。』(原題:Deflagrations)
2021年のフランス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
日本では劇場未公開で、WOWOWにて放映された模様。
フレッドは自宅の地下駐車場に子どもふたりと車に乗り込むが、エンジンがかからない。
電話で呼び出されたパートナーのソニアは運転席からフレッドを降ろして交代し、
いとも簡単にエンジンをかけてみせるが、と同時に車のディスプレイに時刻の表示が現れ、カウントダウンが始まる。
地雷処理専門家のソニアは、この車に時限爆弾の仕掛けられていると判断し、
車に鍵をかけると子どもたちにできるだけ動かないように指示し、
車外のフレッドにも危険を知らせて近づかないように伝える。
同僚で同じく爆弾の専門家イゴールとカミーユを呼び、爆弾の解除に努めるのだが……。
この邦題ですから、まったく期待せずに観はじめたら意外と面白い。
フレッドとソニアは夫婦ではなく、しかも男児ノアはソニアの息子、
女児ゾエはフレッドの娘ということをこちらはずいぶん経ってから知ることになり、
こんなにもややこしい関係にする必要があるのかと笑ってしまいましたけれど。
重量感知式の対戦車地雷なるものらしく、大変です。
ソニアとイゴールが関わるウクライナの地雷撤去と絡んでいて、なかなかにタイムリー。
地雷に守られている学校もあり、撤去が必ずしもいいことではないと知って驚愕。
 
《ち》
『ちひろさん』
2022年の日本作品。Netflixにて配信。
安田弘之の同名漫画を今泉力哉監督が実写映画化。
海辺の小さな町にある弁当店“のこのこ弁当”の売り子・ちひろ(有村架純)は、
かつて風俗嬢だったことを隠しもせず、誰もから愛されている。
風俗嬢だったとは知らずに彼女に憧れている女子高生・オカジ(豊嶋花)は、時折盗撮
勇気を出して弁当を買いに行くと、自分の行動がちひろにバレていると知って焦る。
少年たちにいじめられていたホームレスのおじさん(鈴木慶一)を助けたちひろは、
おじさんから教えられた廃墟で別の女子高生・べっちん(長澤樹)と知り合い、漫画友達に。
また、あきらかにかまってちゃんの少年・マコト(嶋田鉄太)と公園で出会い、
水商売の母親・ヒトミ(佐久間由衣)の帰りが遅いせいで毎日腹を空かせていることを知る。
こんなふうにちひろが関わる人々を描く優しさいっぱいの作品。
2時間超のそこそこ長尺ではありますが、退屈はしません。
今泉監督の作品って、やっぱり好きだなぁと思う今日この頃。
 
《つ》
『ツーリスト・ガイド・トゥ・ラブ 恋のツアーガイド』(原題:A Tourist's Guide to Love)
2023年のアメリカ作品。Netflixにて配信。
ロサンゼルスのツアー会社に勤める極めて有能な社員アマンダは、
今日こそ5年同棲中の恋人ジョンからプロポーズされると信じていた日、
仕事のためにオハイオへ引っ越すと言われる。これはフラれたも同じこと。
上司のモナは、傷を癒やしがてらベトナムへ行ってきてほしいと言う。
ベトナムでも事業を拡大したいと考えていたモナは、現地の観光会社の買収を検討。
サイゴンシルバースターという会社に目をつけており、客のふりをしてアマンダにツアーに参加するよう命じる。
ツアーガイドのシンは好青年で、しかもツアーの内容がとても面白い。
計画好きのアマンダとは違い、客たちの様子を見ながらどんどん変更するシン。
やがて、シンといるときがこれ以上になく幸せであるとアマンダは気づくのだが……。
アマンダ役のレイチェル・リー・クックはもう40代半ば。
かなり若くは見えますが、実年齢を知っていると、こんなロマコメいつまでやるのと思わなくもありません。
しかも展開が読めすぎる。いい仲に発展してから買収話が暴露され、シンは疑心暗鬼に。
けれど結局ハッピーエンドという王道中の王道。ちょっと辟易(笑)。
 
《て》
『ティラノサウルス・キング 白亜紀の恐竜バトル』(原題:我是覇王龙)
2022年の中国作品。日本では劇場未公開。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
“緑の森”の王に君臨するティラノサウルス・レックスのローグは、森の秩序を守ろうと細心の注意を払っている。
と同時に、自らの息子ディーを育て上げようと心を砕いているが、
まだまだ子どもで弱虫のディーは、とても父親のように強くなれそうにない。
あるとき、デイノニクス3人組が弱いものいじめをしているのを見てローグが恫喝。
ところが3人組のボスであるスカーズが現れ、縄張り争いで揉めるうち、ローグは崖から落ちて死んでしまう。
悲しみに暮れるディーは、カルノタウルスのルノーに拾われ、徐々に力をつける。
やがて、ルノーも襲われそうになったとき、ディーは暴君と対決する覚悟を決めて……。
中国のアニメは最近とても面白くて注目していますが、これはどうかなぁ。
恐竜オタクならもっと楽しめたかもしれませんが、私、恐竜を知らんし。(^^;
恐竜じゃなくて動物ならありがちな話。ラストはそれなりに○。
 
《と》
『トゥ・ザ・サミット 絶壁のレース』(原題:Duell am Abgrund)
2023年のドイツ作品。Netflixにて配信。
スイス人の登山家ふたりのスピードクライミングに焦点を当てたドキュメンタリー。
山に登るだけでも凄いのに、とにかく短時間で登頂することを競う。
「スイスマシーン」の異名を取るウーリー・ステックと、
もとは彼が憧れの存在にしか過ぎなかったのにライバルとなったダニー・アーノルド。
普通の登山家が2日ほどかけるだろう山を3時間かからずに登るとは信じられない。
アイガー北壁登頂は2時間半ほど、マッターホルンなら2時間を切る。しかも単独でロープなしとは驚愕。
登山はスポーツだというウーリーが無敵の速さを誇っていたところへ現れたのがダニー。
優れた山岳ガイドだけど、たいして準備もせずにウーリーの記録を抜いてしまった彼は、
ズルをしているような言い方もされて、そのシーンは気の毒でした。
良きライバルになり得るものかと思いきや、そうはならないのも寂しいような。
ウーリーが滑落死したのは、速度争いが加熱したせいだとは思いたくありません。

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今年観た映画50音順〈さ行〉

2023年12月28日 | 映画(さ行)
《さ》
『サイレント・ナイト』(原題:Silent Night)
2021年のイギリス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
監督はこれが長編デビュー作となるカミーユ・グリフィン。
明日になれば人類滅亡というクリスマス
サイモン(マシュー・グード)とネル(キーラ・ナイトレイ)夫婦の家に集まった友人たち。
政府によって事態は明らかにされており、謎の猛毒ガスに襲われて死ぬことが確実らしい。
ガスを吸う前に政府から配布された薬を飲めば、苦しまずに死ぬことができる。
誰もがそれを致し方ないこととして受け入れているなか、
サイモンとネルのまだ幼い息子アート(ローマン・グリフィス・デイヴィス)だけは違う。
もしかしたらガスを吸っても死なないかもしれないのに、なぜ死ぬと決めつけるのか、
子どもに死を勧めるなんて親のすることじゃないと泣き叫ぶ。
皆がアートに言い聞かせようとしているというのに、
妊婦のソフィ(リリー=ローズ・デップ)が自分は薬を飲まないとアートに言ったものだから、
飲まない選択肢もあると考えたアートはさらに怒って家から出て行ってしまい……。
前知識なしで観はじめると、単にクリスマスを祝いに集まった家族や友人たちの話かと思います。
ところがこれは世紀末の話なのだと途中でわかる。その割にみんな落ち着きすぎか。
今はコロナ騒ぎも沈静化していますが、もしも人類滅亡が本当に目前に迫ったら、
人はどう決断するでしょう。そんなことも考えたくなる作品でした。
『ザ・ロード』(2001)のような世界で生きるのは絶えられないという台詞には頷く。
 
《し》
『シーフォーミー』(原題:See for Me)
2021年のカナダ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
女子スキー滑降のU18でトップテン入りするほどの実力者だったソフィは、
網膜色素変性症のため、今はわずかに光を感じるのみの失明状態
パラリンピックを目指すように協会から言われても、そんな気持ちになれない。
すっかり自暴自棄になり、心配する母親にも冷たい態度を取る。
ある日、ソフィは、富豪女性デボラの留守邸で猫シッターのバイトを引き受ける。
セキュリティシステムを起動した後に喫煙のために表へ出ると、鍵がかかってしまう。
出がけに母親から教えられたアプリ“See for Me”をスマホにインストールしたところ、
ヘルパーのケリーに繋がり、スマホの画面を見せながらなんとか家の中に戻ることに成功。
これで万事OKと思われたが、夜中に邸に侵入者が現れる。
デボラの元夫が、デボラが金庫に隠し持っている金を盗むために人を雇ったのだ。
身動きが取れないソフィは再びケリーに連絡して協力を求めるのだが……。
序盤のソフィはひねくれていて、とても好感の持てる人物ではありません。
富豪の留守番バイトをするのも、金目の物を盗むつもりだから。
視覚障害者が物を盗むわけがないと世間の人々は思い込んでいるからです。
そんなソフィよりもよほど好感度が高いのがケリー。
彼女は元軍人で、今はFPS(シューティングゲーム)の達人。
彼女の的確な指示でソフィが犯人と相対するシーンは手に汗握る。
 
《す》
『スカイブルーな恋の予感』(原題:Love in the Air)
2023年のオーストラリア作品。Netflixにて配信。
デイナ(♀)は小さな航空会社フラートン航空のチーフパイロット
観光客を乗せる傍ら、離島に住む人々に郵便を配達したり病人を運んだり、
困り事を聞けばすぐに駆けつけて支援を第一に考えている。
そんなことだから、フラートン航空の収益は一向に上がらず、
そこに目をつけたロンドンの投資会社がフラートン航空を潰しにかかる。
調査の名目で現地を訪れたのは、投資会社の社長の息子ウィリアム。
潰すこと前提だとは言えずにデイナを含むフラートン航空の社員たちに会うのだが……。
よくもこんなつまらない作品を映画にしたもんだと驚きすら感じます。(^^;
デイナ役のデルタ・グッドレムはジェニファー・ロペスを意識しているのかと思ったけれど、
オーストラリアでは人気のあるシンガーソングライターだと後から知りました。
と言われてもねぇ、もうアラフォーだし、演技も上手いわけじゃなし。
ウィリアム役のジョシュア・ザッセはジャン・デュジャルダンを少し若くしたみたいな風貌。
つまり、どこにでもいそうな俳優が、どこにでもありそうな映画に出ている、それだけ。
この邦題も(原題もだけど)、アラフォー主演だとちょっと恥ずかしくないですか。
 
《せ》
『千夜、一夜』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
離島の海沿い、住民の誰もが知り合いの町。
水産加工工場で働く登美子(田中裕子)は、30年前に蒸発した夫の帰りを待ち続けている。
幼なじみで漁師の春男(ダンカン)は昔から登美子に想いを寄せており、
登美子と所帯を持ちたいと言い募るも断られてばかり。
春男の母親から懇願され、ほかの住民からも登美子は春男との再婚を勧められているが、
登美子は決してうなずかない。
ある日、町長の紹介だと言って登美子を訪ねてきたのは、
2年前に夫が失踪したという看護師の奈美(尾野真千子)。
教師だった夫の洋司(安藤政信)は、ちょっと出かけてくると言ってそのままいなくなった。
拉致された可能性もあるが、待つことに区切りをつけるため、
夫が失踪した理由を求めている奈美は、登美子に相談。
登美子はなんとなく洋司のことを調べはじめるのだが……。
夫婦仲は極めて良くて幸せな日々を送っていると思っていたのは妻だけ。
それでも、妻は自分を待っていてくれるとか、戻れば許してくれるとか思うものらしい。
そんな夫がいると知ったうえで一緒になりたいと言う男たち。幸せになれるといいけれど。
 
《そ》
『“それ”がいる森』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
傲慢な義父のせいで、妻子を残して家を出るよりほかなかった淳一(相葉雅紀)は、
田舎町でオレンジを作り、それなりに穏やかな日々を過ごしていた。
そこへ、妻(江口のりこ)と喧嘩したらしい息子・一也(上原剣心)がひとりでやって来る。
ちょうどその頃、森に入った男女が殺される事件が起こり、のせいだと思われていた。
転入した小学校の同級生に誘われて一也がその森に入ると、
銀色の塊のようなものに襲いかかられ、同級生は連れ去られてしまう。
警察も学校も熊の仕業だと判断し、一也の話には耳を傾けようとしないなか、
淳一と一也の担任・絵里(松本穂香)だけは一也のことを信じ、
この事態をなんとかしようと考えるのだが……。
中田秀夫監督のホラー作品なので公開当時は敬遠しましたが、観てみたら怖くない(笑)。
地球外生命体が子どもを捕食すると個体数が増えていくところがグロいですねぇ。
教頭役の野間口徹が徹底的に嫌な奴で、ここまで嫌な奴の役って、
今までの野間口徹のキャリアの中にありましたか。
同じく、人の話を聞こうとしない警察官役に眞島秀和
オレンジ農家の頼れる親父役が宇野祥平で、バイプレイヤーたちの出演が嬉しかった。

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今年観た映画50音順〈か行〉

2023年12月27日 | 映画(か行)
《か》
『カレとカノジョの確率』(原題:Love at First Sight)
2023年のアメリカ作品。Netflixにて配信。
アメリカ人の女子大生ハドリーのもとへ、ロンドンで教鞭を執る父親から連絡が入る。
父親曰く、再婚することになったから結婚式に出席してほしいとのこと。
気乗りせずも致し方なくJFK空港に向かったところ、4分遅刻して搭乗を逃す。
次の便を予約して待つ間、携帯の充電切れに気づいて再びガックリ。
そのとき声をかけてくれたのがイギリス人で数学オタクのオリバー。
ヒースロー空港行きの飛行機の中、隣り合う奇跡に恵まれたふたりは意気投合。
着陸後にオリバーから携帯の番号を教えてもらったのに、
別れた直後に携帯を落として破損、番号がわからなくなってしまう。
沈んだ気持ちのまま父親の結婚式に参列すると、披露パーティーまでの間に近くから聞こえてきた話にびっくり。
参列者のひとりが偶然にもオリバー一家の知り合いらしく、今からオリバーの母親のお別れ会なのだと言う。
パーティーの開始までは4時間。父親に必ず戻ると伝え、ハドリーはオリバーに会いに行くのだが……。
オリバー役が『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)でロジャーを演じたベン・ハーディというだけでもう嬉しいですねぇ。
ベタなラブコメではありますが、生前葬の話がとてもよかった。
父娘で踊るときのBGMがバグルスの“ラジオ・スターの悲劇”というのも楽しい。
 
《き》
『キル・ゲーム』(原題:Apex)
2021年のアメリカ作品。日本では劇場未公開。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
人間狩りゲーム“APEX(エーペックス)”は、6人のハンターが同じ獲物を追い、
見事獲物を殺したハンターが勝者となるエンターテインメント。
近頃獲物が弱すぎるという不満がハンターたちから湧き出て、
主催者が今度こそと選んだのは、仮釈放なしの終身刑に処せられている元刑事マローン。
今さら自由を得るつもりもなかったマローンだが、自分に孫がいると知って意思を翻す。
6人のハンターはいずれも諸般の事情を持つ富豪で、
中でも一代で製薬会社を築き上げたレインズフォードは強くてずる賢い。
ハンター同士が殺し合うように仕向ける作戦も考えたマローンは……。
今年2月に認知症であることが家族を通じて発表されたブルース・ウィリス
本作の彼にはまるでキレ味がなく、こんなヨレヨレの爺さんに勝てるわけがない。
表情もどことなく呆けた感じで、この頃にはもう症状が出ていたのだろうと思います。
そんなことを思いながら観ていると悲しくなってしまいました。
 
《く》
『空気殺人 TOXIC』(英題:Air of Murder)
2022年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
2011年に韓国で実際に起きた事件に基づく。
医師チョン・テフンのまだ幼い息子が原因不明の肺の病で突然倒れて重体に。
同日、息子の入院に必要なものを取りに帰った妻が同じ病で亡くなる。
妻の妹である検察官ハン・ヨンジュは、半年前の人間ドックでは姉に異常がなかったことから、
義兄と共に原因究明に乗り出したところ、加湿器用殺菌剤が原因だとわかる。
被害者の会を結成し、製造販売元の大会社オーツーを訴えるが、
オーツーの社長は遣り手の社員ソ・ウシクにすべてを任せ、
どんな手を使ってでも裁判に勝つようにと命じ……。
酷い会社です。毒性があることを認識していながら売ればそれは殺人なのに。
議員や専門家に金を積んで、自社の非を揉み消そうとし、実際に揉み消しに成功する。
と思えたときに、まさかのまさかのドンデン返しがあってびっくり仰天。
ソ・ウシクも実はこの殺菌剤で妻子を亡くしていたのですよねぇ。
一発逆転を狙うには、こうするしか方法がなかった。
遺影に向かってどうしているかと尋ねるシーンは泣きました。
死んだ人に向かってそんなことを聞くのは変なんですが、私もよく思うんです、弟、元気かなって。
 
《け》
『警官の血』(英題:The Policeman's Lineage)
2022年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
佐々木譲の同名ベストセラー小説を韓国でリメイク。
祖父と父親に続き、自らも警察官になった新人刑事チェ・ミンジェ(チェ・ウシク)は、
広域捜査隊の刑事パク・ガンユン(チョ・ジヌン)を内偵捜査するよう、打診される。
不名誉な仕事だと断ろうとするミンジェに、警官殺しが絡んでいるとのこと。
ガンユンはあり得ないぐらいホシを挙げているエース刑事で、闇組織との癒着が疑われる。
それがバレそうになって警官を殺したのではないかというのだ。
かつて父親が殉職した過去を持つミンジェは、父親の死についての真相を知りたくなり、
この任務を果たせば教えてやると監察官から言われて受けることに。
捜査を始めたところ、ガンユンはミンジェをなぜか可愛がる。
人間として魅力を持つガンユンに惹かれ、信用したくなったミンジェは、
監察官にガンユンの嫌疑は何もないと報告するのだが……。
ミンジェ役のチェ・ウシクは、『The Witch/魔女』の冷酷無比な男役が印象に残っています。
冷酷無比でもイケメンだなぁと思った彼がこんな無垢な役をしたらさらに惚れる(笑)。
ばりばり一重まぶたの私は、彼がやはり一重まぶたであるところにも親近感を持ちました。
続編を作ってほしいぐらい面白かったし楽しかった。
 
《こ》
『コンビニエンス・ストーリー』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
脚本家の加藤(成田凌)は執筆に集中したいというのに、
同棲中の女優の卵ジグザグ(片山友希)の飼い犬ケルベロスがやかましく吠える。
ジグザグが出かけた隙にケルベロスを捨てに山奥へ。
しかし帰宅したジグザグが騒ぎ立てるものだから、再びケルベロスを連れに山奥へ戻る。
途中、車のエンジンがかからなくなって困り果てていたところ、
不思議なコンビニのオーナー夫人・惠子(前田敦子)が車を直してくれるという。
ところが一緒に車を停めていた場所に戻ると車がない。
彼女の夫・南雲(六角精児)の厚意でしばらく家に泊めてもらうことになるのだが……。
実はこのコンビニではかつて惨殺事件が起きていて、
オーナー夫妻も従業員もみんな殺されていましたというやつ。
三木聡監督お得意の不条理脱力系のはずが、かなり退屈。
惠子が登場する辺りからは少し面白くなりますが、摩訶不思議な話というには物足りず。
幻想譚なのでしょうが、イマイチ幻想的ではないのですよねぇ。
惠子に救われて最後はこっちの世界へ戻ってきたのかと思いきや、オイッ、死ぬんかいっ。

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今年観た映画50音順〈あ行〉

2023年12月27日 | 映画(あ行)
22回目となりました。恒例におつきあいください。
 
12月22日までに劇場で観た作品についてはすべてUP済みなので、
ここに挙げるのはそれ以外のDVDあるいは配信で観たものばかり。
好きだったとか嫌いだったとかは関係なし。
どれも今年レンタルや配信が開始されて視聴可能となった作品です。
ネタバレ御免。
 
↑ここまで毎年コピペです(笑)。すみません。
 
《あ》
『あしやのきゅうしょく』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
兵庫県芦屋市の市制施行80周年記念映画として撮られたそうです。
給食好きが高じて栄養士となり、自分の出身小学校に着任した野々村菜々(松田るか)。
困ったときには相談できる前任者の立山蓮子(秋野暢子)の存在が心強い。
「食べることは生きること」という芦屋小学校のモットーを忘れず、
子どもたちが喜んでくれる給食を提供しようと知恵を絞るのだが……。
卵アレルギーの少年はオムライスが食べたくて、アレルギーの治療を決意。
ハラルフードしか食べられないイスラム教徒の少女は弁当持参だけれど寂しげ。
みんなが楽しく食べられるものはないだろうかと菜々は賢明に考えます。
調理師(石田卓也ほか)の面々も手を抜かない。
火を止めてから子どもたちが食べはじめるまでの時間も計算して、
出汁のしみ具合をきちんと考えるのですから。
校長先生役で桂文珍、出入りの精肉店の店主役に赤井英和豆腐店の店主役で堀内正美が出演しています。
お豆腐を使ったキーマカレーとか、よかった。
 
《い》
『インクレディブル・スパイ』(原題:The Spy Who Never Dies)
2022年のオーストラリア作品。日本では劇場未公開。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
ロシアの潜水艦から核ミサイル7基が盗まれる。
犯人は元CIAの女性エージェント・トライデントで、どうやら世界征服や金儲けを目論んでいるわけではなく、
男性エージェント・ブラッドへの個人的恨みから復讐しようとしているらしい。
当のブラッドは怪我をした犬を見つけて運び込んだ先の獣医・ヴェロニカに一目惚れ。
暗殺仕事ばかりのCIAを辞めて心穏やかにヴェロニカと過ごしたいと願うが、
ブラッドの上司・スザンナがそれを許すはずもない。
ヴェロニカとデート中もさまざまな指令や厄介事が舞い込むのだが……。
未公開は当たり前の中途半端なドタバタ作品(笑)。
『ミッション:インポッシブル』のスタッフが放つ作品となっているけれど、ホンマかいな。
ただ、観たことを後悔するほどにはつまらないわけではなくて、
“ミッション:インポッシブル”“007”をパロっているふうなのも結構可笑しい。
特に機械オタクのジェームズは愛すべき人物で、
巻き込まれて酷い目に遭わされそうになりながらも切り抜ける。
見た目は女子高生の殺し屋ロリポップに殺されかけるシーンには大笑い。
続編もありそうなんですが、ほんとに作ります?
 
《う》
『ウイング・アンド・プレイヤー』(原題:On a Wing and a Prayer)
2023年のアメリカ作品。Amazonプライムビデオにて配信。
2009年の復活祭の日に起きた実話に基づく
ショーン・マクナマラ監督が『ソウル・サーファー』(2011)と同様にデニス・クエイドを起用して。
薬剤師のダグ・ホワイトは妻のテリ、娘のマギーとベイリーの4人家族。
大好きだった兄ジェフが心臓発作で急逝し、葬儀に参列した後、
一家が搭乗したプロペラ機キングエアの操縦士が空の上で突然死亡。
遊覧飛行のセスナ機にたった一度乗ったことがあるだけのダグが操縦するはめに。
状況を知った管制塔では、なんとか一家の命を救おうと誘導を始める。
管制官の職員ダン・ファビオは、キングエア飛行教官のカリ・ソレンソンに連絡。
飛行機事故で家族を失った過去を持つカリは、自宅からダグに操縦方法を教える。
操縦士が急死するなんて思わないじゃないですか。
本当にこんな目に遭ったら生還できるなんて思わない。一巻の終わりですよね。
たとえセスナ機でも一度操縦した経験のある人だからできたのか。
将来パイロットになりたいという少女が無線をキャッチして奔走するのもよかったけれど、
実際のところ、彼女は何にもしていなくて、本作に必要だったかどうかは疑問。(^^;
テリ役にはヘザー・グラハム。数十年前に『バービー』を映画化していたら、彼女が演じられたかもしれませんね。
 
《え》
『疫起/エピデミック』(原題:疫起)
2023年の台湾作品。Netflixにて配信。
台北総合病院に勤務する外科医シアは、娘の誕生日に家路を急ぎ、
勤務時間があと数分残っているにもかかわらず退勤。
タクシーを捕まえて帰ろうとしたところへ、急患の連絡が入る。
致し方なく病院に戻るといきなり病院が封鎖されて、誰も出入りできなくなる。
8階でSARS感染者が出たらしく、急に閉じ込められた来院者はもちろんのこと、
何も知らされていなかった病院職員たちも戸惑い、パニックになる。
入院中のジャーナリストのジンは記事にすべく、まずは感染者を突き止めることをシアに提案。
感染者を明らかにすれば、濃厚接触者でない自分は帰宅できるだろうとシアも考える。
安全と思われる倉庫で作戦会議を開き、情報を集めはじめたふたりだったが……。
SARSに見舞われた2003年の台湾の様子がモチーフとなっています。
不眠不休で看護に当たろうとする職員もいれば、感染者の看護を拒否してストに入る職員も。
泣かせるのは男性看護師のタイホー。人手不足の8階を手伝いに行ったら、
本来の自分担当のフロアに戻ったときに皆から避けられ、8階に行けと言われます。
その後も献身的に重症患者の看護に当たり、ついには本人も罹患してしまう。
自分本位なシアに非難の目を向けていたタイホーが最後に微笑むのは8階でシアと目が合ったとき。
医療従事者の方々には頭の下がる思いです。ありがとう。
 
《お》
『丘の上の本屋さん』(原題:Il Diritto alla Felicita)
2021年のイタリア作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
風光明媚な田舎町の丘の上で、小さな古書店を営む老人リベロ。
隣のカフェに勤める青年ニコラは毎朝淹れ立てのコーヒーを届けてくれる。
ゴミ置き場を漁っては掘り出し物を見つけたと言って売りにくるボジャン。
哲学書に興味を示すスキンヘッドの男は、入店するなりなぜか「あなた」という呼び方はしないと宣言。
ラテン語の辞書ばかり売りに来る自称教授はどの書店にも自著がないと嘆く。
ニコラが片想いするキアラは、女主人のためにフォトコミックを買いたい。
友人のためにSM本を探しているという女性はその姿からしてハード。
こんな風変わりな客たちに混じってやってくるのは、移民の少年エシエン。
ブルキナファソからイタリアへ来て6年だという彼は漫画が好き。
しかし買うお金がないというエシエンに、リベロは漫画を貸すように。
やがてリベロがエシエンに貸し出すものは漫画から本へと替わってゆく。
リベロがエシエンに貸す本は、『イソップ物語』だったり、『星の王子さま』だったり。
最後はちょっと切なくて、エシエンが夢を叶えますようにと祈りたくなります。

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