夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ショータイム!』

2024年01月11日 | 映画(さ行)
『ショータイム!』(原題:Les Folies Fermieres)
監督:ジャン=ピエール・アメリス
出演:アルバン・イヴァノフ,サブリナ・ウアザニ,ベランジェール・クリエフ,ギイ・マルシャン,
   ミシェル・ベルニエ,ムーサ・マースクリ,フィリップ・ベンハモウ,アリアナ・リヴォワール他
 
シネ・リーブル梅田にて5本ハシゴの〆。
午前中にここへ来たとき、5本目辺りは疲れて爆睡するかもしれないと思っていましたが、
とても面白かったおかげで4本目も5本目もまったく眠らず。
 
フランスの田舎町で実際にあった出来事をモチーフにした作品。
そりゃもう映画化するしかないでしょうという面白さです。
 
中年男のダヴィッドは、父親を亡くした後も祖父レオが経営する農場を守り続けているが、
もうどうにも行かないほどの経営難に陥っている。そのせいで妻のレティシアとは離婚。
農場を早く手放してしまえという母親のミレーユと、絶対にそれを許さないレオとの間で板挟み。
 
町へ出て、資金繰りを考えるからと2カ月の猶予をもらったものの困り果てていた夜、
ふらりと入ったキャバレーダンサーのボニーに魅せられる。
農場の存続にはこれしかないと考えたダヴィッドは親友のウアリに相談。
 
当たって砕けろだと、ボニーのいるキャバレーへと出向くと、
ちょうどそのキャバレーのダンサーたちがろくでなしの支配人から解雇を言い渡されたところ。
なんとかボニーを捕まえるが、「農場の納屋でキャバレーを開業する」という話にボニーは唖然。
とりあえず現地へと案内すると、ありえないとボニーは怒って出て行く。
それでも懸命に説得しようとするダヴィッドに根負けし、ボニーはこの話を受けるのだが……。
 
いろいろと楽しい。
ダヴィッドはチビデブハゲのお人好し。これまでもさまざまなことに手を出しては失敗しているらしい。
けれどどれもこれも農場存続のためであり、単なる金儲けのためではありません。
だからみんな彼に手を貸すし、一緒に成功させたいと思っています。
 
ボニーと共に出演者探しに行くも、ろくな芸人がいなかったりして笑えます。
とにかくボニーがカッコイイんですよね。
離婚してもすぐ近所に住んでいるレティシアは、元夫とボニーの仲が心配。
でもボニーのほうはそんな気が微塵もないから、
田舎で美容師をするレティシアの嫉妬ありありの態度に辟易として「年金美容師」と呼んだり。強烈です。
 
キャバレーなんて娼館だと思っているレオが拍手している姿にはほだされます。
今もこの「農場キャバレー」は健在だそうですよ。

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『ファースト・カウ』

2024年01月10日 | 映画(は行)
『ファースト・カウ』(原題:First Cow)
監督:ケリー・ライカート
出演:ジョン・マガロ,オライオン・リー,トビー・ジョーンズ,ユエン・ブレムナー,
   スコット・シェパード,ゲイリー・ファーマー,リリー・グラッドストーン他
 
シネ・リーブル梅田にて5本ハシゴの4本目。
 
シネ・ヌーヴォまで足を運ぶことはほぼないから、そのときが懐かしい。
 
ライカート監督はインディーズ作品の映像作家として高い評価を受けている人のうちのひとりで、
本作は長編7作目にして、日本では初のロードショー公開作となるそうです。
 
19世紀後半、西部開拓時代のオレゴン。
毛皮目当ての罠猟のチームに料理人として雇われているクッキーことフィゴウィッツは、
食材を見つけられないものだから、仲間から「使えない奴」扱いを受けている。
 
ある日、食材を求めて森の中をうろついていた折、茂みに隠れていた男と遭遇。
男は中国人移民のキング・ルーと名乗り、誤ってロシア人を殺してしまったせいで追われていると言う。
クッキーは全裸のルーに着るものをあてがい、仲間の目をそらして眠る場所も提供。
夢を語り意気投合するふたりだったが、ずっと匿えるはずもなく、隙を見てルーは逃げる。
 
その後、先住民が暮らす町へたどり着くとチームは解散。
次の仕事にはありつけずに弱り果てていたクッキーはルーと再会する。
森の奥の小屋でひとり暮らしていたルーのところに転がり込むクッキー。
 
いずれは旨い料理を出すホテルベーカリーを持ちたいと思っているクッキー。
実は腕の良い料理人の彼が「材料さえあれば」とつぶやいたところ、
最近この地に初めて乳牛が運ばれてきたことをルーが思い出す。
 
仲買人の屋敷の表に夜は繋がれている牛。クッキーには搾乳はお手の物。
ふたりは夜中にその場へ出向くと、ルーが見張り、クッキーは牛に優しく話しかけながら搾乳。
そのミルクを用いてドーナツを作って売りはじめたところ、たちまち評判になる。
 
噂を聞きつけた仲買人もやってきて賞味し、その美味しさに目を見張り、
ぜひ屋敷に来て客人にクラフティを作ってほしいと言うのだが……。
 
アメリカンドリームを願いましたが、そうはならない。
欲をかいてここぞというときを見誤り、ミルク泥棒がバレてしまいます。
 
でも、何もかも違うふたりが出会って、最後まで裏切らないところが切なくて好きです。
再会後にルーがクッキーを家に誘うときの台詞も好き。
遠慮がちなクッキーに対して、ストレートに泊まるところを提供するとは言わず、
「家に酒がある。飲むのを手伝ってくれないか」と言うんですよね。
 
バレた後も、貯めた金を持って逃げることがどちらも可能だったはずなのにそうしない。
逃げて、戻ってきて、相手を待つ。夢を持ったままふたり一緒に。
って書いていたら泣きそうになってきた。(^^;
 
「何これ」と思う人もいるかもしれませんけれど、私はかなり好き。

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『いますぐ抱きしめたい』

2024年01月09日 | 映画(あ行)
『いますぐ抱きしめたい』(原題:旺角卡門)
監督:ウォン・カーウァイ
出演:アンディ・ラウ,マギー・チャン,ジャッキー・チュン,アレックス・マン他
 
5本ハシゴの3本目。
4Kレストア版を上映している劇場がありますが、シネ・リーブル梅田では2K版の上映です。
 
1988年の作品で、脚本家だったウォン・カーウァイの監督デビュー作。
香港のアカデミー賞と称される香港電影金像奨では1989年に9部門でノミネートされています。
今も活躍中のアンディ・ラウマギー・チャンが若い。
俳優の名前がそのまま役名になっているんですね。
 
香港・九龍でヤクザな暮らしを送るアンディ。
ある日、ランタオ島の伯母から電話があり、自分の娘をしばらく泊めてやってほしいと言われる。
肺病の疑いがある娘マギーが病院で検査を受けるらしく、病院通いにはアンディ宅が便利なのだと。
いとこの存在すら知らなかったアンディだが、やってきたマギーは同世代。
ガラの悪いアンディを見て少し怯えた様子ではあるものの、何も問題なし。
 
一匹狼と言ってもいいアンディにはひとりだけ弟分がいる。
しかしその弟分ジャッキーは勢いだけのどうしようもない奴で、アンディを煩わせる。
どこかで喧嘩したり、返せもしない金をどこかで借りてきたり。
ジャッキーの尻を拭うたびに危ない目に遭うアンディ。
 
たびたび傷だらけになって帰宅するアンディを放っておけないマギー。
肺には異常がないことがわかり、ランタオ島へ戻ってゆくが、
マギーのことが気になって仕方ないアンディはランタオ島へと向かい……。
 
ものすごく時代を感じます。髪型、化粧、音楽、何もかも。壁ドンも数回出てくる(笑)。
内容は当時としてもありきたりだったかと思いますが、いろいろスタイリッシュに映ったようで。
『トップガン』(1986)の挿入歌、ベルリンの“Take My Breath Away”がかかったときは苦笑。
しかも途中でストップしてここぞというときにその続きがかかる。
なんというのか、観ていて恥ずかしくなるぐらいだったのですけれど。
1980年代後半って日本もこんなだったかなぁと懐かしく思う。
 
ところで、ジャッキー・チュンのことはあまり知らないなぁと思っていたら、
彼はもともと「歌神」と呼ばれていたところ、今は「捕神」と呼ばれているそうな。
還暦を過ぎても皆健在。嬉しいじゃないですか。

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『ポトフ 美食家と料理人』

2024年01月08日 | 映画(は行)
『ポトフ 美食家と料理人』(原題:La Passion de Dodin Bouffant)
監督:トラン・アン・ユン
出演:ジュリエット・ビノシュ,ブノワ・マジメル,エマニュエル・サランジェ,パトリック・ダスンサオ,
   ガラテア・ベルージ,ヤン・ハムネカー,フレデリック・フィスバック,ボニー・シャニョー=ラヴォワール他
 
新年にシネ・リーブル梅田で5本ハシゴの2本目。
 
美味しそうな料理が出てくる作品には目がないから、先月から観る機会を狙ってはいたものの、
パスしてもいいかなぁという気持ちにはなっていました。
なぜなら名匠と言われるトラン・アン・ユン監督の作品を観ると、私は必ず寝てしまうから。
それに主演がジュリエット・ビノシュでしょ。
確かに綺麗なのでしょうけれど、この人って何十年も前からオバサンくさく見えて。
まぁでも、観なきゃ文句も言えませんからねぇ、時間が合うなら観ておこうかということで。
 
舞台は19世紀末、1885年のフランス。
美食家として有名なドダン(♂)のお抱え料理人がウージェニー(♀)。
ドダンがレシピを読み上げれば、ウージェニーがそれを完璧に作り上げる。
ふたりの名前はヨーロッパ各国に響き渡っているほど。
 
ごく親しい美食家の友人たちを何名かだけ招いて食事会をおこなうにとどめていたが、
あるとき、噂を聞きつけたユーラシア皇太子がドダンを晩餐会に招く。
晩餐会に供された料理は確かに豪華ではあったものの、ただそれだけ。
料理とはなんたるかを知らしめるために今度は逆に皇太子を招待したいと考えたドダンは、
最もシンプルな料理“ポトフ”でもてなす計画をウージェニーに相談するのだが……。
 
ドダン役にブノワ・マジメル、ウージェニー役にジュリエット・ビノシュ。
自然に包まれた素朴で瀟洒な屋敷にはこのふたりとガラテア・ベルージ演じるメイドのみ。
金持ちの貴族ってこんな生活を送っていたのかと唸ってしまいます。
 
20年以上もの間、二人三脚で美食を追求してきたふたりの絆。
夫婦のようにも見えるけど、あくまでも主人と料理人で、友人たちもそれを理解している様子。
邪推することなどはなくて、周囲もただ上手いものが食べたいだけというのが良い。
でもやっぱりこの監督の作品は私には退屈。感傷的に過ぎる気もします。
そりゃもう料理は途轍もなく美味しそうで、湯気までこちらに流れてきそうな映像なんですけどねぇ。
 
皇太子をポトフでもてなすまでの話かと思っていたら、ウージェニー死んでまうやん。←ネタバレすみません。
ショックで酒しか飲まなくなったドダンがようやく立ち上がって料理を教えることにしたのは、
生前のウージェニーに心酔していた少女ポーリーヌで、彼女は天才的な味覚を持っています。
ふたりが並んで料理する姿には心が温かくなるし、いいんですけど。
 
いいんですけどね、
だけど私は、「海と陸が出会い、その土地の魅力を歌い上げる味だ」なんて聞くと、こっぱずかしい気が。
料理とワイン、それだけを見て、美味しそう!でええやないかと思うのでした。

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『枯れ葉』

2024年01月07日 | 映画(か行)
『枯れ葉』(原題:Kuolleet Lehdet)
監督:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ,ユッシ・ヴァタネン,ヤンネ・フーティアイネン,ヌップ・コイヴ他
 
ここからは新年を迎えてから観た作品です。
 
ファーストデー割引のある元日は劇場には寄らずに実家から自宅へ直帰。
そうしたらあの地震が来て本当に驚きました。
被災地の皆さんが穏やかに過ごせる日が早く戻ってきますように。
 
新年2日目、シネ・リーブル梅田にて5本ハシゴを敢行しました。
駐車場難民になることを恐れつつ梅田へ車で向かったら、案の定付近のコインパーキングは満車の嵐。
致し方なく高額も覚悟して梅田スカイビルの地下駐車場へ向かってみる。
すると正月料金の設定はなく、いつもと同じ最大料金1,800円。
仕事帰りに2本観るときにその料金は高いと感じるけれど、正月で、ほぼ12時間駐車でそれは安い。
良心的だわと嬉しい気分で、迷わず入庫。
 
新年1本目はフィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督の新作を。
あれれ、私、この監督の作品はめっちゃ観ているつもりでしたが、
自分のブログを遡ってみると、お兄さんのミカ・カウリスマキ監督のほうばかり観ていますね。
ま、兄弟共に多作というわけではありませんから、たまたまそうなっただけか。
 
ヘルシンキでひとり倹しい暮らしを送る女性アンサ。
スーパーの品出しの仕事に就いていたが、賞味期限切れの商品を物乞いの青年に渡したところを見咎められ、
ついでに彼女自身もそんな商品を1点持ち帰ろうとしていたこともバレてクビに。
パワハラ上司にうんざりしていたほかの従業員たちも一緒に啖呵を切って辞める。
 
一方、同じ町に暮らす男性ホラッパは、仕事中も隠し持つ酒を飲むアル中。
それがバレて解雇されることの繰り返しで、鬱々としながら過ごしていたとき、アンサと出会う。
最初はそれぞれの同性の連れと入った店で隣り合わせに。
次に偶然会ったときもお互いの顔を覚えていたから、お茶でも飲もうということになり……。
 
ロシアとウクライナの戦争を思いっきり背景にしていて、ラジオで流れるのはそのニュースばかり。
カウリスマキ監督も争いに心を痛めているのか。
 
さすがといえばいいのでしょうか、一見暗い話なのに、クスッと笑ってしまうシーンがいくつもあります。
私のツボだったのは、アンサとホラッパが一緒に観に行く映画。
『デッド・ドント・ダイ』(2019)がスクリーンに映し出されたときはふきました。
まさかジム・ジャームッシュ監督作品の中のアダム・ドライヴァーをカウリスマキ作品の中で観るとは。
しかも、『デッド・ドント・ダイ』ってほんとにつまんない作品だったのですけれど、
アンサが「こんなに笑ったのは初めて」と感想を述べるんですよね。
「警察官がゾンビに叶うわけない」って、そこかいっ!と思うと可笑しすぎる。
 
偶然再会して、お茶を飲みに行って、映画を1本観て解散したのに、
ホラッパは友人に「結婚しかけた」と言う。なんで結婚!?とまたまた笑ってしまったのでした。
 
意気投合して電話番号も教えてもらったのに、メモが飛んで行ってしまう。
ありきたりな展開なのに、ちっともそうは思えないのがカウリスマキ監督作品。
 
ラジオから最初に流れる曲が『竹田の子守唄』だったことにも驚きました。
カラオケが世界中で人々の鬱憤を晴らすアイテムになっているのもちょっと嬉しい。
でも美声を自負するアンタ、歌下手やっちゅうねん。
これを本気でみんなが上手いと思っているのかどうかがわからなくてそこも笑った。

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