《女はみんなこうしたもの》恋人たちを待ち受ける愛の試練!モーツァルト円熟の音楽が「心変わり」の悲喜劇を彩る。
演出:レスリー・ケーニッヒ
出演:スザンナ・フィリップス(フィオルディリージ)
イザベル・レナード(ドラベッラ)
ダニエル・ドゥ・ニース(デスピーナ)
マシュー・ポレンザーニ(フェルランド)
ロディオン・ポゴソフ(グリエルモ)
マウリツィオ・ムラーロ(ドン・アルフォンソ)
演奏:メトロポリタンオペラ管弦楽団、合唱団 指揮:ジェイムズ・レヴァイン
上映時間:3時間46分 .MET上演日:2014年4月26日
言語:イタリア語.
君たちは、愛する人の貞操を疑ったことがあるかい?「あり得ない!と答えた若者たちに老哲学者が持ちかけた、恋人の貞操を試す金のコイン100枚を賭けたゲームとは?美しい音楽のオブラートに包まれた「愛」の問題作、それが《コジ・ファン・トウッテ》。
18世紀のナポリ。青年士官のグリエルモとフェルランドは、フィオルディリージ&ドラベッラ姉妹と熱愛中。恋人の愛を信じて疑わない若者たちに、自称哲学者のドン・アルフォンソが賭けを持ちかける。それは、変装して互いの恋人を口説いてみろというものだった。自信満々の2人は受けて立つが、小間使いデスピーナの協力を取りつけたアルフォンソの指示通り変装して芝居をするうちに、恋人たちの心が揺れ始める・・・。
18世紀後半、モーツアルトの時代には貴族の戯れ・遊びとして恋人交換を題材とする物語がはやっていて、それを題材にしたようです。
しかし、 ”あり得ない”筋立ての喜劇で 姉妹が婚約者達の企んだたちの悪い冗談に乗せられてしまう。観客が喜劇の設定に疑問を持つのは後回しである。
”女性は不誠実”と歌う物語の前提は公正とはいえないが最高の音楽には異論も立ち消えてしまう。さらに、この名作がモーツァルトの解釈で名高いJ・レヴァインの手にかかればなおさらであり、衝撃的な「愛」の悲喜劇を若手スターたちが生き生きと描く。
また、女性レスニー・ケーニッヒの演出も1996年にMETでの初のオリジナル演出で「コジ・ファン・トゥッテ」を手掛けたもの。20年近い歳月で演じられ続けた舞台は、18世紀のスタンダードのもので、簡素ながらも分かりやすく海をバックにした背景はとても清楚で美しい。モーツァルトの音楽を引き立てるのに大きな役割を果たしている。
ここで、「コジ・ファン・トゥッテ」のモーツァルトらしいアリアと重唱の場面を取り上げてみたいと思う。
第1幕 「風が穏やかでありますように」船出する二人の士官を見送る、やさしさ美しさでいっぱいの三重唱。中央アルフォンソ、左フィオルディリージ、右ドラベッラ 嘘を仕掛けたアルフォンソはやけに真摯に歌う。
第1幕 「風や嵐にも」フィオルディリージ(ソプラノ)の一番の聴かせどころ。
岩のように、じっと動きません。風や嵐にさらされても、その輝きが私たちを守り続けているのです。死だけがこの心を変えられるのです。と強い意志を装飾的な歌唱で示す。
第1幕「僕たちの恋人の愛の息吹は、やさしく心を慰めてくれる。」とフェルランド
が歌う甘く抒情的なテノールの名歌である。
第2幕 磁石のかけら、メスマーの石、18世紀後半動物時期とメスマーの命名する、ある種の力が存在すると考えられ、当時は実際に行われた心理療法。催眠術の先駆だった。
小間使いデスピーナ演じる医者がヒ素を飲んで(演技)死にかけているフェルランドとグリエルモは磁気をかけられ、足をバタつかせる。いかにも嘘くさい。
第2幕 「女は15歳にもなれば」 激烈で軽快なデスピーナのアリア。
大人の流儀を知らなければ、悪魔がどこに潜んでいるか、何が良いことで悪いことか
巧みな駆け引きを覚え恋人達を魅了するのです。と歌う。
第2幕「私は、黒髪の彼にするわ」二重唱
ドラベッラ・・・わたしはあの黒髪の彼にするわ
フィオルディリージ・・・じゃあ、私は茶髪の彼ね。
ここで愛を語る二人の男になびき始める。
第2幕 「恋は盗人 誘惑のヘビよ」積極的に生を楽しむドラベッラのアリア。
気まぐれに心の安らぎを与えたり、好みのままよ、人の心に
第二幕 「もうすぐ彼の腕の中に」フィオルディリージとフェルランドの二重唱
悩んだ末にフィオルディリージは恋人の軍服を着て戦場に赴こうとするが・・・、剣を抜いてまでして対抗するが・・・ 口説き落とす場面の二重唱は、物語のハイライトで特に印象的な曲である。
このオペラは、不道徳オペラということを多くの人が分かっているようだ。METの観客も素晴らしいアリアや重唱のあとは大きな拍手をし、おかしいと思った時にはクスクスと笑い出す。笑いが起こる場面が結構多い。
ただ、フィオルディリージは美貌と美声と真面目な演技でとても魅力的であった。
MET2017-18シーズンにはプッチーニの「ラ・ボエーム」でムゼッタを演じた若手実力派である。悩み葛藤する場面も多いが、太陽のような明るい笑顔に惹きつけられる。
また、フェルランドを演じるマシュー・ポレンザーニは2016-2017シーズンのモーツァルト「イドメネオ」のタイトルロールであり、モーツアルト歌いと知られていて、さすがといえるテノールの軟らかで甘い歌声を聞かせてくれた。
この「コジ・ファン・トゥッテ」はMET新演出で2020年4月30日に今回記述した演出とは似ても似つかない、奇抜な演出で上演されました。
このことは、コジ・ファン・トゥッテ(2)として、ここにアップするつもりです。