NHK BS プレミアム・シアター 2021/04/04
昔、この地を開拓し故郷とした人々がいた。彼らは飢餓と闘い、懸命に働いた。現代の繁栄と自由は、彼らの忍耐と苦労のたまものなのだ。そんな彼らに本作を献げる。 我々は彼らを忘れない。
【原作】 マージョリー・キナン・ローリングス
【監督】 クラレンス・ブラウン
【撮影】 チャールズ・ロシャー、レナード・スミス、アーサー・アーリング
【音楽】 ハーバート・ストザート
【出演】 グレゴリー・ペック・・・父親ペニー
ジェーン・ワイマン・・・妻のオリー
クロードジャーマン・ジュニア・・・息子ジョディー
製作 アメリカ 1946 2時間9分
原題 THE YEARLING
1878年4月フロリダのジョウジ湖。南北戦争闘った私は、数年前、この湖にやって来た。そこから船で川に向かい文明社会に別れを告げ 、住む場所を求めて密林に入った。
奥に進むほど森は鬱蒼としていて、草木自身、空気を求めて苦闘している。私は原点に回帰していった。都会と戦争から離れゼロから始める。私は船を下り、森の中に入っていった。低木が茂るこの地、少数の開拓者のみが住む。私は近くの村で妻と出会い、一緒に樹海を切り開いた。そして開墾した土地を”島”と呼んだ。こんな感じだあれから我々は何年もの間、苦楽をともにしてきた。これが我が家、バクスター島だ。
【ストーリー】
フロリダ北部のやぶ地帯の空地にバクスター一家は自然と戦いながら農作をしている。父親のペニイはやせて背の高い男で未開の原野を開墾し、家畜を育て、家畜荒らしに来る野獣を退治するのが仕事である。母オリーはブロンドの小柄な女であるが1日中、台所仕事に追われ、遊び盛りの11歳の息子ジョディーを小うるさく叱るが根はやさしい働き者だ。
ある朝、豚や子牛など家畜荒らしをする大熊を狩るため、足跡をたよりに、ペニイとジョディーは猟犬を連れて出かけた。沼地近くで熊を追い詰めるが、運悪くペニイの旧型の猟銃は逆発(バックファイア)したため諦め、熊を逃がさざるを得ず、勇敢に闘った猟犬のうち一頭が重傷を負う。
熊の喉にかみつくペニーの猟犬、しかし反対に叩きつけられる。
壊れた鉄砲では一家がそのものが危険なのでペニイは隣人フォレスター家を訪ねる。フォレスター一家は父と母のほかに大男の息子達アーチ、ミルホイール、ギャピイ、バック、レムの5人と背骨の曲がった末子フォダークウィングがいる。ペニイは連れて行った猟犬とレムの最上の銃とを交換する。レムが犬好きなことと、その小犬が臆病で熊と闘わなかったのに、怪我もしないほど強いと信じこんだのである。結果的にペニーはレムをだまして銃を手に入れることになった。
この夜、ジョニーは戸外に作られたフォダークウィングの小屋で夢を語らいながら過ごす。
母親から「あなたたち毛布はあるのめ?」と訪ねられる二人。
後日、ペニイは作物を売りにヴォルージアへ出掛ける。お共をしたジョディーは彼が崇拝するオリヴァーが旅から帰って、恋人のツウィンクと結婚すると聞いて喜ぶ。ツウィンクにはレムもほれていて、オリヴァーがレム達と会うと大喧嘩となり、ペニイ親子もオリヴァーの見方をして戦った。
このため両家は不和となり、バクスターの豚が盗まれたのもフォレターの仕業だと考え、ペニイは取り返しに出掛ける。その途中ペニイは大毒蛇(ガラガラヘビ)に足をかまれ、近くにいた雌鹿を射殺してその肝臓と心臓とで毒を吸いとる。一方殺された雌鹿の子鹿は森の中で鳴いていた。
ペニイは雌鹿の肝臓と心臓で応急処理をしたが、死にひんし、フォレスター家の力を借り、医者の治療を受けることになる。
ペニーは蛇の毒が回り寝込んでしまうが、奇跡的に助かる。
ペニーが助かったのは雌鹿のおかげだから、といってジョディーは雌鹿が残した子鹿を家で飼うことを許される。早速、ジョディーは雌鹿の撃たれた近くで子鹿見つけ出し、家に連れ帰り飼うことにする。後に尻尾が白いことからフラッグと命名し、子鹿と遊んでしばらく楽しい日々を暮す。
しかし、フォダークウィングを訪ね、仔鹿を見せようとするがフォルダーウィングは、亡くなっていた。何の前触れもない死であった。
ペニーは、フォダークウィングのお墓の前で父親に頼まれて祈りを捧げる。
「全知全能の神よ。我々に善悪などは分かりませんが、この子の不自由な体が不憫でした。
でも主は埋め合わせもなさった。動物と親しむすべてと血と優しさを授けられたのです。
この子は不自由とは無縁の世界に召されました。この子は主に足を伸ばしていただき自由に歩き回ると我らは思っています。この子に赤い鳥とリスかアライグマをお与えください。
この子が寂しくならないように。天国に数匹動物を置いてください。御心(みこころ)の行われんことをアーメン。」
その葬儀が終わった後から、嵐が始まり、1週間以上も雨が降り続く。
雨の中、収穫物を家に運ぼうとするが・・・・。
農作物は腐ったり、カビが生えてしまったりで、この水害により、大きな損害と被ることになってしまった。
家の前が水につかり悲惨な有様だ。
ペニーはいう「人は徹底的に打ちのめされるとやり直す気力も失ったと思いがちだ。でも、残されたものが少しでも、それに感謝しよう。」
太陽だ
「母さんいい天気だ。死人も目を覚ますぞ。トウモロコシやタバコをまくよ。
ササゲ、ジャガイモ、青菜もだ。母さんどんどんまくよ。世界中に種をまきそうね。
そうしたいよ。ジョーデイ 全部まくからな。タバコが育てば、水くみが必要なくなる。(井戸は家から1kmもさきにあった)
家の前に井戸が出来るぞ。今日は忙しかったな。」
オリヴァーとツウィンクの結婚式が行われることになり、バクスター一家は待ちに出かけていく。
結婚したオリヴァーとツウィンクは船でボストンに旅立つ。
しかし、結婚式から帰ってきた一家を待っていたのは育てた農産物を食い荒らす成長した子鹿だった。
その子鹿の食害を防ぐために一家は様々努力するのだが・・・・。
畑を開墾しようとして腰を痛めてしまうペニーに変わって、ジョディーはトウモロコシの苗が育つ前に、鹿が入れない背の高い柵を作れという父との約束を果たすのだが・・・・
【感想】
アメリカの開拓時代という古い時代を描いた映画であるが、厳しい大自然の中で起こる苦難を乗り越えていく少年の成長を題材にした映画である。素晴らしい内容だと思う。
少年達は動物を愛玩するけれど、生活がかかった家庭の中では母親のような割り切りは起こりうる話である。
また、父親が小鹿とジョディーのために、もう少し頑張るべきではないかという意見も多いようだ。無論一理ある。
しかし隣のフォルスター家の言葉を借りればペニーは「農業の天才」といわれているし、バクスター島(我が家)を無から作り上げ才能は評価しなければならないと思う。精神面はしっかりとしている。
ジョーディについては、子鹿との日々をどう過ごしたのかはもちろん大切だが、同年代の子供達との付き合いもどのように描かれているかが大切だ。まず、夜の戸外の小屋で親友のフォダークウィングと足が不自由になった時の話を子供らしく聞き出して、話をする心の優しさを感じるし、反対にペニーと馬車で町に買い物行った時、店の娘、ペニーのいうジョーディの恋人?ユーラリーが奥から出て来たので挨拶をするようにといわれるが彼女がジョーディーに向かってベロを出したり、アカンベーをしたりするので彼女に向かって芋を投げつけ、それが尻に当たる。今度はペニーが彼女に対し謝れという。そうすると父親の店の主人からサービスとしても貰っていたハーモニカを突き返して外に出て行くというシーンがある。ジョーディの毅然とした態度は一人の人間として、また男として、なかなかだ。ユーラリーの父親さえも「威勢が良くて結構」の褒め言葉が・・・。これらの話の方が、映画の中ではずっと輝きを見せる。
今後、ジョディーの将来を考える時、農業者として生きていこうという強い意志がある限り、この大きな精神的な痛手を乗り越えて、立派な人間としての明るい未来が待っているものと思える。
〈完〉