マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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藺生山の神やさぶらけなど

2010年06月07日 08時01分38秒 | 楽しみにしておこうっと
藺生では田植え初めの儀式の「植え初め(うえぞめ)」をさぶらけ(さぶらきが訛った)と呼ばれている。

田んぼの畦に付近の水田に苗をカヤの木を6本挿す。

それは2段であって合計12本。

一年の月の数を現すそうだ。

稲苗がすくすくと育つように祈るさぶらけ。

2房のフキダワラは田植えを始める前に氏神さんの葛神社の拝殿に今年も豊作になるようにと供えておく。

賽銭箱の上に乗せる人、傍らに置く人などまちまちだ。

フキダワラはお米を入れて藺草で縛ったもので田んぼには供えない。

1月のオコナイで授かったゴーサンは本来なら籾蒔きのときに挿すのだが、JAで苗を購入するようになってからは田植えのときに挿している。

田植え前、家ではコガシ(お米を炒って、それを挽いたもの)をご飯の上に振りかけて食べている。

藺生のさぶらけは例年5月のゴールデンウイークのころ。

田んぼは荒起こしして、池の水を引いて溜めたあとマンガ(馬鍬)を掻いて代掻きをしてきた。

田んぼを均したところへ水を引いて田植えをする。

30日にダムから水が出るのでそれから池の水を引く。

田んぼをまだ耕していないところもある。

今年は天候不順で苗の育ちが悪い。

JAで購入しているのだが、ゴールデンウイーク明けになってしまうと話されるTさん。

親戚らが応援して田植えを終える。

そして全てが終了したら2房のフキダワラは家の炊事場に供える。

エビスさんに祀って今年も豊作になりますよう、無事に田植えを終えることができたと奉告する。

1月7日は山の神。

葛神社の上のほうに山の神がある。

モチを挿したウルシの木と幣を祀る。

傍らには古い舘がほかして(捨てるの意)ある。

それは山の神に預けておいたものだという。

かっては山の仕事をしていた人が山仕事の道具であるナタやヨキを置いて参っていた。

今は山の持ち主ともう一人の2人がしているそうだ。

モチや弊は風雨で溶けている。

藺生の山の神は3カ所。

他に並松(なんまつ)のゲートボール場の傍と西岡電気から峠を下ったところだそうだ。

道は分かり難いそうだ。

そこではカンジョウナワを張っている。

1月に神社のカンジョウナワを張る日、社守さんが張りに行くそうだ。

元々は10月の佐平祭のときにしていたという。

Tさんは左官業を営んでいる。

その日は家で、一年の仕事がうまくいきますようにと仕事道具を並べて祈る。

コテ、カマド(竈)レベル、サシガネ、スミツボなど道具一式とこしらえた鏡餅を供えている。

鍛冶屋さんは仕事場で一年の仕事を祈るふいごの祭りがある。

仕事や道具は違いはあるが、ふいごの祭りと同じようなことである。

語られたなかでとても興味をもった行事である。

5月8日はオツキヨウカだった。

そのころは山にツツジが咲いている。

太い真竹を切ってくる。

10尺の長さの竹の先にツツジを取り付けて今年も豊作になるようと祈っていた。

ツツジは3本。

中央はすくっと立つツツジ。

2本背中合わせのようにして縛った。

先代の親父がしていたことは記憶にあると語るTさん。

戦後、昭和30年代のころまでしていた。

トラクターが田んぼを耕すようになって消えた行事。

かって各地で見られた「天道花」の風習だと思われる。

(H22. 4.29 EOS40D撮影)