正月を迎えたその朝は当主の動きで始まる。
オクドさん(へっついさんとも呼ぶ)の火を点けてトーフを切る。
それを家の神さんや仏さんに供える。
若水で顔を洗い家族が起きてくるまでに神さんにイタダキの膳を供える。
奈良市丹生町のF家では当主の帰りを待ちわびていた。
大晦日から神社で初詣の参拝者を迎えていた当主。
この年は神社の役員だった。
それを終えて家路についた。
それでは始めようと家族一同は席に着いた。
床の間には昨年の7月に、他家へ移った三日地蔵が半年ぶりに戻っている。
丹生町は全域が神道となった地区だ。
神さんの前に当主が座って拝んだ。
供えたイタダキの膳は円座の当主席に置かれた。
3枚のイタダキノモチ。
その上には三日月の形をしたツキノモチが1個。
小さなモチが数個。それはホシノモチと呼ばれている。
棒モチを小さくちぎったモチだ。
それは膳の周りにも置かれる。
合計で12個。一年の月の数になる。
傍にはクリの実がある。
個数は特段決まっていないカチグリだ。
イタダキの膳にはお札が置かれるのが本来だがお年玉の袋にしたという。
子供たちにとってはそのほうが良かろうとそうした。
現金を置くのは今年も増えますようにと祈りなのだ。
F家は大家族。当主の子供たちも結婚して同居している。
4家族も座敷に集まればいっぱいいっぱい。
席には膳がそれぞれ置かれている。
夫妻、その子供たち。ということは孫たちだ。
かつては家業を自営している働き人も集まっていたというから相当な人数だったようだ。
席の内側にはおせち料理の盛り皿が並ぶ。自家製料理だ。
そして当主が「明けましておめでとうございます」と挨拶をされてイタダキの膳を持ちあげ前方に差し出し頭を下げた。
当主がイタダキの儀式をすませたらイタダキの膳をどうするか。
右手の席から順に同じ作法をするのだ。
席に回ってきたイタダキの膳。
それは子供たちも同じように作法する。
家族ぐるりと一回りしてその儀式を滞りなく終えた。
お年玉をもらってようやくお雑煮が食べられるのだ。
とは言っても雑煮のモチはイタダキのモチであってこれを焼いて雑煮に入れるのだ。
トローと伸びたイタダキノモチは手でちぎって雑煮の椀に入れる。
雑煮といえば乳児の頭ぐらいの大きさのカシライモが入っているのだ。
ズイキイモなのだが相当な大きさだ。
この大きさの順が長男、次男の椀へと下っていく順になるというから三男ともなればずいぶんと小さくなるのだろう。
雑煮の具は他にダイコン、トーフ、ニンジンにイタダキの膳にあったクリだ。
カシライモにクリが入る雑煮は珍しい。
お神酒やビールもいただく。
家族の顔は晴れ晴れとお正月を迎えた表情になった。
家の伝統行事は残さねばならないといって10年間途絶えていた正月のイタダキサンを復活されたF家。
お正月の若水を汲むことは続けていた。
それはオトコシがする。
オトコシは当主の男性。
ミカヅキサンとも呼ばれているツキノモチやホシノモチにカチグリを並べた膳を両手で頭の上に捧げて拝む。
そこにはノシモチに生の現金を添える。
今年も増えますようにと祈る家の儀式だ。
雑煮はカシライモと呼んでいる大きなドロイモが入っている。
家族一同が集まって正月を迎える丹生のF家の座敷は家族ゲームの場に転じた。
子供たちが主役、脇役は親たちだ。
スタート、ストップの号令がかかるたびに出現する数値。
ビンゴはまだまだ遠いがリーチは増えるいっぽう。
今か今かのビンゴに拍手が起きる。
和気あいあいで正月を迎えた大家族だった。
※ お正月だというのにF家のご厚意で撮らせていただきました。
(H23. 1. 1 EOS40D撮影)
オクドさん(へっついさんとも呼ぶ)の火を点けてトーフを切る。
それを家の神さんや仏さんに供える。
若水で顔を洗い家族が起きてくるまでに神さんにイタダキの膳を供える。
奈良市丹生町のF家では当主の帰りを待ちわびていた。
大晦日から神社で初詣の参拝者を迎えていた当主。
この年は神社の役員だった。
それを終えて家路についた。
それでは始めようと家族一同は席に着いた。
床の間には昨年の7月に、他家へ移った三日地蔵が半年ぶりに戻っている。
丹生町は全域が神道となった地区だ。
神さんの前に当主が座って拝んだ。
供えたイタダキの膳は円座の当主席に置かれた。
3枚のイタダキノモチ。
その上には三日月の形をしたツキノモチが1個。
小さなモチが数個。それはホシノモチと呼ばれている。
棒モチを小さくちぎったモチだ。
それは膳の周りにも置かれる。
合計で12個。一年の月の数になる。
傍にはクリの実がある。
個数は特段決まっていないカチグリだ。
イタダキの膳にはお札が置かれるのが本来だがお年玉の袋にしたという。
子供たちにとってはそのほうが良かろうとそうした。
現金を置くのは今年も増えますようにと祈りなのだ。
F家は大家族。当主の子供たちも結婚して同居している。
4家族も座敷に集まればいっぱいいっぱい。
席には膳がそれぞれ置かれている。
夫妻、その子供たち。ということは孫たちだ。
かつては家業を自営している働き人も集まっていたというから相当な人数だったようだ。
席の内側にはおせち料理の盛り皿が並ぶ。自家製料理だ。
そして当主が「明けましておめでとうございます」と挨拶をされてイタダキの膳を持ちあげ前方に差し出し頭を下げた。
当主がイタダキの儀式をすませたらイタダキの膳をどうするか。
右手の席から順に同じ作法をするのだ。
席に回ってきたイタダキの膳。
それは子供たちも同じように作法する。
家族ぐるりと一回りしてその儀式を滞りなく終えた。
お年玉をもらってようやくお雑煮が食べられるのだ。
とは言っても雑煮のモチはイタダキのモチであってこれを焼いて雑煮に入れるのだ。
トローと伸びたイタダキノモチは手でちぎって雑煮の椀に入れる。
雑煮といえば乳児の頭ぐらいの大きさのカシライモが入っているのだ。
ズイキイモなのだが相当な大きさだ。
この大きさの順が長男、次男の椀へと下っていく順になるというから三男ともなればずいぶんと小さくなるのだろう。
雑煮の具は他にダイコン、トーフ、ニンジンにイタダキの膳にあったクリだ。
カシライモにクリが入る雑煮は珍しい。
お神酒やビールもいただく。
家族の顔は晴れ晴れとお正月を迎えた表情になった。
家の伝統行事は残さねばならないといって10年間途絶えていた正月のイタダキサンを復活されたF家。
お正月の若水を汲むことは続けていた。
それはオトコシがする。
オトコシは当主の男性。
ミカヅキサンとも呼ばれているツキノモチやホシノモチにカチグリを並べた膳を両手で頭の上に捧げて拝む。
そこにはノシモチに生の現金を添える。
今年も増えますようにと祈る家の儀式だ。
雑煮はカシライモと呼んでいる大きなドロイモが入っている。
家族一同が集まって正月を迎える丹生のF家の座敷は家族ゲームの場に転じた。
子供たちが主役、脇役は親たちだ。
スタート、ストップの号令がかかるたびに出現する数値。
ビンゴはまだまだ遠いがリーチは増えるいっぽう。
今か今かのビンゴに拍手が起きる。
和気あいあいで正月を迎えた大家族だった。
※ お正月だというのにF家のご厚意で撮らせていただきました。
(H23. 1. 1 EOS40D撮影)