マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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懐かしい人の回顧話

2013年02月14日 06時51分40秒 | 奈良市へ
歌姫のほうからやってくる博労は若い牛を連れてくる。

それは5年ぐらいの間隔だったそうだ。

牛は農耕に働いてくれて成長する。

年数が経過した牛は若い牛と交換する。

年老いたのは肉牛にしたようだと話す。

働き手の牛はノガミ参りに連れていく。

法蓮の不退寺の門前である。

サクラなどの樹木に括りつけた牛は数頭。

うちの牛は元気が良くて艶々だった。

うちもそうだと話しあうのはまるで牛の品評会のようだったという。

随分前のことだと回顧された法蓮東垣内のUさんは90歳。

8年ぶりにお会いした懐かしいお顔。

不退寺門前で行われていたノガミサン以来である。

平成16年の様子を掲載させていただいた著書の『奈良大和路の年中行事』に牛と馬の絵を描いた絵馬を奉納されて拝む姿が当人だ。

ショウブとヨモギを立てた前には御幣を数本挿している。

お神酒を捧げて手を合わせる農家の営みであった。

地域で農業を生業とする家は少なくなっていた。

当時に参って人たちは高齢者。

年が経つにつれて亡くなられる人も・・。

そうした状況であった法蓮東垣内のノガミサン。

続けていくことが困難になって解散した。

平成19年のことだ。

奉納した牛と馬の絵馬はUさんが描いたもの。

当番の人が描いて奉っていたという。

掲載した行事は本になって残った。

そのときのお礼を兼ねて著書を献本させていただいたのである。

法蓮東から南側は一面の田畑だった。

水路にはカワニナが住んでいてヘイケボタルが飛び交っていた。

クツワムシも多くおりガチャガチャとやかましく鳴いていたという。

60年も前のことだという。

夏にはアブラゼミやニイニイゼミが鳴いていた。

今のようなクマゼミは少なかった。

8月25日ごろに鳴き出したと回顧される。

そんな話をしてくれたUさんの前庭には現役の井戸がある。

かつては井戸替えもしていたという。

井戸水は三角に立てた櫓に釣瓶。

桶を下して水を汲んでいた。

底に溜まったドロを取り出して奇麗にしていたという。

(H24.12. 2 記)