マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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箸中・車谷垣内の地蔵盆

2018年09月13日 08時29分38秒 | 桜井市へ
桜井市箸中の車谷垣内に地蔵盆があると知ったのは前年の平成28年7月24日だ。

大字箸中の地蔵盆はここで紹介する車谷垣内の他、下垣内に中垣内がある。

しかも中垣内には南垣内もあれば川垣内、上垣内の分かれ垣内もある。

垣内によっては23日、24日の両日もあれば、24日だけに限っている場合がある。

車谷垣内は後者になる。

東西を貫く街道筋に40戸の集落が建ち並ぶ車谷垣内。

かつては三輪素麺の原料である小麦を水車でコトコト米ツキならぬ麦ツキをしていた垣内。

今では小さな小川のようになっているが、各戸の家の前を流れる谷川に水車を構築していた。

収穫した小麦を大量に挽いて小麦粉化する水車が多くあったことから「車谷」の名になったという。

この水車は玩具である。

装置していた場は現在の主街道ではなく、元々あった里道(里道)に流れる水路にしていた。

水路とは反対側に建ち並ぶ民家裏手にある川はせせらぎ。



ずっと下っていけば国津神社前に着く。

地蔵盆の日であるが、右にある庚申さんに「青面金剛」の文字を書いた提灯をぶら下げた。

地蔵盆には庚申講の人は現れない。

ずいぶんと昔に解散されているのだが、提灯だけが今もこうして吊っている。



毎日の夕刻に廻り当番がやってくる。

当番を示す道具に蝋燭、線香、マッチに賽銭収納箱がある。

それを持って地蔵尊や庚申さんに大神宮の石塔に燈明をあげる。

それが当番の在り方である。

4月に尋ねた婦人はいつも番が廻ってくるたびに線香鉢を掃除していると話していた。

線香の残り灰が鉢に溜まる。

溜まれば線香を立てるのが難しくなる。

そうであれば、毎回清掃している。

かたや、ある婦人は家で栽培している花を飾る。

地蔵尊に赤い涎掛けがある。

その涎掛けを洗う人もいるという。

心優しい人たちで守られている地蔵さんは年に一度の祭りがある。



御供は当番の人が先に供えていた。

日暮れはまだまだ時間はあるが、何人かがやってきて地蔵さん、庚申さんに手を合わせる。

垣内の上から、下からやってくる。

皆は歩いてやってくる。



独りでくる人もおれば声をかけた隣同士で連れ合ってやってくるのは高齢のご婦人たちだ。

若いお母さんは子どもの手を引いてやってくる。

孫さんも連れてくる家族もおられる。

来る人、来る人に了解を得て撮らせてもらう。



乳母車に乗せた赤ちゃんもやってくる。

一挙に膨れ上がった地蔵盆の参拝者。

これほど大勢の人がやってくるとは・・・。



高齢者、若い夫婦、子供に幼児。

ここでも交わされる言葉は「あんた大きゅうなったね」だ。

参拝を済ませたら、会所に寄り合って、持ってきた家の料理をよばれる。

女性ばかりの会所に男性は居辛い。



それにしても今年の会所に提灯が見られない。

昨年に訪れたときは6個も吊っていた。

そのことを当番さんに伝えたら、そうでしたか、である。



昨年の平成28年7月24日に撮影していた会所の提灯である。

今年はこれがまったくなかった。

会食を終えた子どもたちは楽しみにしていた金魚すくいがお待ちかね。

お弁当を食べて時間を持て余す子どもたちは、会所の外で地蔵さんの記念写真。

ではなく、自撮りである。地蔵さんは被写体になっていない。



微笑ましい子どもたちの様相がとても素敵で思わずシャッターを押した映像は、もちろん地蔵さんを入れて、である。



垣内の地蔵盆の〆は金魚すくい。

小さな子どもから小学生の子どもに混じって大人の女性も参加する金魚すくいに盛り上がる。



初めて体験する幼児も上位の子どもがすくう仕草を真似して、一匹すくえたーと喜ぶ顔が膨らんだ。

名人の誕生に一歩近づいた金魚すくい。



すくった金魚はナイロン袋に入れて持ち帰る。

すくった金魚は川に流さず、予め用意していた水槽に入れて見るのも楽しみの一つ。

水温に注意しておけば長生きするだろう。



こうして夏の始めの地蔵盆を楽しんだ村の人たちは家路についた。

(H29. 7.24 EOS40D撮影)