
セロニアス・モンクについて綴った村上春樹の一文と12のモンクについてのアンソロジーそれに春樹の選んだモンクのアルバムについて。
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しかし今になってみれば、僕にもはっきりと理解できる。「幸福な邂逅」は永遠に続くものではないということだということが。にもかかわらず、それが僕にとってかけがえのない貴重な心的資産であったという事実には、なんら変更はない。そういうものごとは同時進行的な意味では既に色あせ、どこかに失われてしまったかもしれない(もし永遠につづいていたら、それはもう「幸福な邂逅」とさえ呼べなくなっていたかもしれない)。
だけど解りづらいから文頭を書き抜いておこう。
セロニアス・モンクの音楽の響きに、宿命的なまでに惹かれた時期があった。モンクのあのディスティンクティブな―誰がどこで耳にしてもすぐに彼のものとわかる―極北でとれた硬い氷を、奇妙な角度で有効に鑿削っていくようなピアノの音を聴くたびに「これこそジャズなんだ」と思った。
そして村上春樹によってかかれたあとがきでの裏表紙の安西水丸氏のイラストのエピソードも楽しい。
(なお安西水丸氏は2014年3月17日に倒れ亡くなっている)
