ヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)は少年のころからマフィアに憧れていて学校にも行かず使い走りをした。1950年代のニューヨークは、警官も買収されていてギャングのやりたい放題。そういう力のあるギャングが輝いて見えたのだろう。レイ・リオッタの主演作品はあまり多くないが、リオッタ36歳の記念すべき作品。
ジミー・コンウェイ役のロバート・デ・ニーロ47歳、トミー・デヴィート役のジョー・ペシ47歳。この3人がグッドフェローズ(気の置けない友達)となり、ジョン・F・ケネディ国際空港でのエア・フランス現金強奪事件で42万ドルを手にする。
マフィアには掟があってイタリア系でないと幹部になれない。従ってアイルランド系のヒルやジミーは限界がある。それに引き換えトミーはイタリア系で、もしトミーが幹部になればヒルやジミーはトミーの指図を受けることになる。それでもヒルとジミーは従うと言うグッドフェローズだ。
このトミー、鼻っ柱が強くちょっとしたことで喧嘩を吹っ掛ける。そして殴り殺したり拳銃で撃ち殺したりする。グッドフェローズはそれを大目に見ている。それよりも目先の大金を鵜の目鷹の目で探している。
そして1978年、ジョン・F・ケネディ国際空港でのルフトハンザ航空現金強奪事件を成功させ600万ドルと言う巨額の金を得た。ヒルの妻カレン(ロレイン・ブラッコ)は、普通の家庭出の女性だが、ギャングの妻などとつき合ううちに染まっていって鼻っ柱の強い女になっていた。買い物に行くと言えば、ヒルから札束の贈り物がある。贅沢な生活だがマフィアだけの狭い世界でもある。
集まりはクリスマスや誕生会などもいつもの顔ぶれ変わり映えしない。堅気と言えば弁護士や検事で普通の人間とは付き合わない。ヒルも気が緩んだのかご法度の麻薬に手を出して3000ドルでクビ同然の状態に置かれた。
このころから潮目が変わり始めた。世の中変わったのかもしれない。FBIの追求や知りすぎた男ヒルとしてマフィアの仲間に殺される恐怖も押し寄せてくる。
仲間を裏切るのは死を意味するが、ヒルは司法取引に応じてジミーをはじめ主な幹部も逮捕され裁判にかけられた。このころトミーは、すでにこの世にいない。幹部に登用するからと油断をさせて車に乗せガレージで射殺された。短気で喧嘩早い気性が仇になったのか、バーで出所してきたある幹部と喧嘩になり殴り殺して捨てた。その報いを受けたというわけ。
証言台に立ったヒルは、証人保護プログラムで身の安全は保障された。毎朝隠れ家から新聞をとりに出るのが日課となった。映画はここで終わるが、この実話には続きがある。ヒルは1990年代前半の度重なる犯罪で保護プログラムを外される。2002年以降も麻薬取引でたびたび収監された。そして2012年6月心臓疾患のため69歳で死去した。ようするに懲りない男だった。
監督のマーティン・スコセッシの好みかもしれないが、BGMが1950年代から60年代の曲が次から次へと流れる。最初は、「Rags to Riches(貧乏人から大金持ちへ)」をトニー・ベネットが歌う。何やら暗示的だ。
マフィアでも恋はする。ボールルームで歌われる「Pretend you don't see her(彼女を見ないふりをしている)」という甘いバラードはイタリアの美声と言われたジョニー・ベール。
本作は評価が高くヴェネツィア映画祭銀獅子賞(監督賞)をはじめ、1991年のアカデミー作品賞、助演女優賞(ロレイン・ブラッコ)、助演男優賞(ジョー・ペシ)がノミネートされ助演男優賞のジョー・ペシが受賞した。ジョー・ペシの圧倒的な演技は見もの。
マーティン・スコセッシは、本作の成功で1995年「カジノ」、2006年「ディパーテッド」を製作、「ディパーテッド」でアカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞を受賞している。
マフィア物って独特の雰囲気を感じるが、それは鋭い刃先の上を歩いている感覚とともに甘い哀愁も感じるというものだ。それはオールディーズの影響かもしれない。その一例としてジョニー・ベールの「 Pretend you don't see her」を聴いてみましょう。
監督
マーティン・スコセッシ1942年11月ニューヨーク、クイーンズ生まれ。
キャスト
レイ・リオッタ1954年12月ニュージャージー州ニューアーク生まれ。
ロバート・デ・ニーロ1943年8月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
ジョー・ペシ1943年2月ニュージャージー州ニューアーク生まれ。
ロレイン・ブラッコ1954年11月ニューヨーク、ブルックリン生まれ。