38歳の女医の神経科医ジーン・スコーフィールドが、矜持をかけて押しかける重圧に対抗して見事に自らの立場を堅守するという医療ドラマなのだ。テーマは「家庭内暴力」と「女性の地位を巡る院内闘争」。
この作品が上梓されたのは1977年、アメリカ大統領が民主党のジミー・カーター、主な出来ごととして、6月 全米女子プロゴルフ選手権で樋口久子が優勝、日本人初の世界タイトルを獲得。7月ニューヨーク大停電。ニューヨークで落雷が原因の停電が起こり、復旧までの3日間に900万人が影響を受けた。これにより出生数が劇的に上昇したというニュースを記憶している。11月新潟市で横田めぐみさんが、下校途中に北朝鮮の工作員に拉致される。いまだに尾を引く拉致問題だ。
音楽シーンでは、ビルボード全米1位のイーグルス「ホテル・カリフォルニア」。
そんな時代から未だに尾を引いている女性の地位向上と家庭内暴力に毅然と対抗する、温かい緑色の目と鳶色の髪を持つ魅力的な美人で実力のある女医スコーフィールド。
大学病院の事務局長エドワード・ケアリーが理事長ホレス・キャメロンの意をくんで完璧な組織図を作りあげた。理事長ホレス・キャメロンは、世界的企業インターエレクトロニクス社の創設者で社長、それに女性蔑視者でもある。
アメリカ政府の保健教育福祉省は、補助金支給の条件に病院内に一定数の女性管理職登用を求めている。組織図では、神経科に副部長を置きそれに女性医師を充てるというもの。その女性医師というのは、ジーン・スコーフィールドなのだ。
権限のない副部長に女性を選ぶ男どもの軍門に下るようなジーンではない。5歳の男の子が痙攣してジーンのもとに担ぎ込まれてきた。もともとの小児科担当医ラリー・グレアムが学会に出かけていて、代診の小児科医が脳神経障害を疑った結果だった。
5歳の男の子は、ボビー・テイタムと言い、父親はボブ・テイタム、母親がマリッサ・テイタム。ボブ・テイタムは、理事長のホレス・キャメロンの会社に勤め社長から重用されている。検査をより深く進めていくにしたがって家庭内暴力の疑いが浮上、ジーンは病院内の立ち位置と患者との関係で苦しい立場に立たされる。
医療ドラマである以上、手術の場面は避けて通れない。映画やテレビドラマで観る手術の場面はさして緊張感を感じないが、脳の生検から手術までイメージを膨らませて文字を追う緊張感は初めての体験だった。まるで自分が被手術者になったようだ。
それと印象に残ったのは、子供の成育に不可欠なのが抱っこをする人の温もりと優しい言葉なのだ。これがないと順調な生育は望めないという。
そして子供に癒される大人という図式も見逃せない。実は、ジーンにも不幸な身の上があった。ジーンが結婚した相手は、外交官のクリフ・スコーフィールドだった。赴任先のベトナムでベトコンが投げ込んだ手榴弾でクリフは即死した。そのせいでジーンは一時精神をやられ、毎日病室の片隅で壁を睨むだけの一日を過ごしていた。
それを見て心を痛めていたジーンの恩師ハンス・ベンジガーが、試しに小児科の幼児室にジーンのベッドを移してみた。幼児室には親のいない子が多くいる。若い女が分娩のあと、逃げてしまうからだ。
ジーンが泣き叫ぶ幼児に気がついたのは数時間後だった。そして7週間後、その子も健康になって養子として病院を出た。同時にジーンも健康を回復した。幼児と成人との良好な関係は、双方にいい結果をもたらす。多分これは現実にも起こっていることだと思う。著者は小児科、脳神経外科の専門医の助言を受けているからだ。
そして鋭い指摘は、「どういうわけか女性はきまって男の医者に診てもらうほうを心強く思う。男の患者よりもその傾向が強い。女性が差別にいろいろ抗議しているが、女性に対して偏見を持っているのは、むしろ同性である女性自身のほうがひどかった」これは日本でもありそうな気がする。
ウィキペディアで著者のヘンリー・デンカーを見てみよう。2012年に99歳で他界しているが、多数の著作・戯曲・脚本がある。邦訳は本作「女医スコーフィールドの診断」1982年「復習法廷」1986年「判事スペンサー異議あり」の3冊。英語版ウィキペディアによると、生涯作品は、小説38編、戯曲9作品、テレビドラマの脚本7作品となっている。
それではイーグルスの1994年ライヴ、落ち着いていい感じの「Hotel Caiifornia」をどうぞ! 歌詞は比喩に富んだもののようなのだ。
On a dark desert highway, cool wind in my hair 暗い砂漠のハイウェイで、髪に冷たい風を受けながら
Warm smell of colitas, rising up through the air マリワナの温かい香りが立ち上る
Up ahead in the distance, I saw a shimmering light 遠くの方にキラキラした光が見えた
My head grew heavy and my sight grew dim 頭が重くなり、視界が悪くなった
I had to stop for the night 夜になってしまった
There she stood in the doorway 玄関に立っていた
I heard the mission bell ミッションの鐘の音が聞こえてきた
And I was thinking to myself そして、私は自分自身に考えていた
'This could be heaven or this could be Hell 「これは天国かもしれないし、地獄かもしれない」
Then she lit up a candle and she showed me the way そして、彼女はロウソクを灯し、私に道を示してくれました。
There were voices down the corridor 廊下で声がした
I thought I heard them say 私は彼らが言うの私を聞いた気がした
Welcome to the Hotel California ホテル・カリフォルニアへようこそ
Such a lovely place (such a lovely place) なんと素敵な場所(なんと素敵な場所)
Such a lovely face 素敵な素顔
Plenty of room at the Hotel California 幾部屋もあるホテル・カリフォルニア
Any time of year (any time of year) you can find it here いつでも大丈夫
Her mind is Tiffany-twisted, she got the Mercedes bends ティファニーのような高価なものを身に着けて、ベンツにも乗って
She got a lot of pretty, pretty boys, that she calls friends 彼女は友達と呼ぶ可愛い男の子たちをたくさん手に入れた
How they dance in the courtyard, sweet summer sweat 甘い夏の汗をかいて中庭で踊るのさ
Some dance to remember, some dance to forget 思い出すために踊る人も、忘れるために踊る人もいる
So I called up the Captain そこで料理長を呼び
'Please bring me my wine 「私のワインを持ってきてください」
He said, "we haven't had that spirit here since nineteen sixty-nine 彼は、「1969年以来、あのようなワインはここにはなかった」と言った。
And still those voices are calling from far away その声は遠くから聞こえてくる
Wake you up in the middle of the night 夜中にあなたを起こして
Just to hear them say" 彼らの声を聞くために
Welcome to the Hotel California ホテル・カリフォルニアへようこそ
Such a lovely place (such a lovely place) なんと素敵な場所(なんと素敵な場所)
Such a lovely face 素敵な素顔
They livin' it up at the Hotel California ホテル・カリフォルニアで贅沢に暮らそう
What a nice surprise (what a nice surprise), bring your alibis なんと素敵な場所(なんと素敵な場所)で、あなたの不在証明を持ってきて
Mirrors on the ceiling 天井の鏡
The pink champagne on ice 氷上のピンクのシャンパン
And she said, 'we are all just prisoners here, of our own device そして彼女は言った、「私たちは皆、ここではただの囚人であり、自分の意志で囚われた」と
And in the master's chambers そして、マスターの部屋では
They gathered for the feast 宴会のために集まり
They stab it with their steely knives 彼らは鋼鉄のナイフでそれを刺す
But they just can't kill the beast しかし、彼らはその獣を殺すことができない
Last thing I remember, I was 私が最後に覚えているのは、私が
Running for the door 扉に向かって走っていた
I had to find the passage back to the place I was before 元の場所に戻るための通路を見つけなければならなかった。
'Relax' said the night man 「落ち着いて」と夜警の男は言った
'We are programmed to receive 我々は客を受け入れるように仕向けられているんだ
You can check out any time you like いつでも好きな時にチェックアウトできるが
But you can never leave! しかし、決して立ち去ることはできないんだ!