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読書「狼の震える夜Boundary Waters」ウィリアム・K・クルーガー

2021-05-27 15:46:50 | 読書
 原題の「Boundary Watersバウンダリー・ウォーターズ国境湖沼地帯流域」は、「オンタリオ州とミネソタ州のカナダとアメリカ合衆国の国境にまたがる荒野で、スーペリア湖のすぐ西にある地域です。バウンダリー・ウォーターズは、キャンプ、カヌー、釣りをするレクリエーションや、自然の景色やリラクゼーションを求めるレクリエーションに人気の場所です」とウキペディアにある。

 このワイルドネスな森林と湖沼を舞台にアクション・ミステリーが展開される。アウトドア派と自認する人にとっては、大自然の風景の描写に魅了されるだろう。そんな大自然に身を置いてみたいと思うはずだ。しかし、現実の人の営みは骨肉相争う醜悪さに満ちている。

 女性カントリー・シンガー、シャイローが行方不明になった。FBIがオーロラの町の保安官事務所を訪れて捜査の協力を依頼する。ウォリー・シャノー所長から呼ばれた元保安官コーク・オコナーも助力を余儀なくされる。

 初版の「凍りつく心臓」で妻ジョーの浮気、コーク自身の不倫、その恋人のモーリが殺されるという苦渋を味わった。コークとジョーがそれを乗り越えたかに見えたが、いまだに別居状態が続いている。

 季節は赤と黄色と緑が織りなす燃え立つような風景から、にぶ色の空から落ちる雪と氷の世界へと移っていく。自然の穏やかさと容赦のない厳しさに直面すると、一個の人間の情感までもが変えられてしまう。それを今、シャイローが味わっている。

 その一部を文章から引用しよう。「ロックから始まってカントリーで世に出たシャノーだが、ドラッグとセックスと何百もの忘却のすべてによって逃げてきた。彼女の人生の真実。それが内部からあふれ出てきた。今死んだ男たちの荷物からとってきたピーナッツ・バターとパンは、豪華なごちそうのようだった。
 
 選べるものがないとき、どれほど小さなことで人は幸せになれるものか。まだ荒野から教訓を学んでいること、呼吸する、食べる、眠る、これらを怯えずにできる。幸せであるために、他に何もいらないのではないか。ネイティブ・アメリカンのアニシナアベ族は、富を価値あるものとは考えない。分けあうことが部族のやり方だと。

 そしてシャイローは大きな決断をした。今の財産を捨てよう。基金を作ってインディアン文化の保存のために」

 捜索に出たコークの安否が気遣われるようになった。次から次へと遺体が発見される。一喜一憂するジョー。やがて事件は終焉を迎える。再び心を通わせるようになったコークとジョーは、新しい旅立ちに目を輝かせる。

 この物語にふさわしいカントリー・ミュージックは、やはりウィリー・ネルソンだろう。88歳のネルソンが70枚目のソロ・スタジオ・アルバムとして制作した「First rose of spring」を聴きましょう。愛を語り愛を歌う。
The first time that he saw her
He knew everything had changed
Overnight, love started blooming
Like the first rose of spring

Auburn hair like a sunrise
Sweetest smile he'd ever seen
Butterflies, they danced around on her
Like the first rose of spring

Summertime would've never started
And wintertime would never end
She colored his life, opened his eyes
To things he'd never dream
Without the first rose of spring

Gave him children like a garden
They gave 'em all the love they'd need
To grow up strong, she made a home
And every year, he'd bring
Her the first rose of spring


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