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読書「リッチ・ブラッドRICH BLOOD」ロバート・ベイリー著 小学館文庫2025年1月刊

2025-02-17 11:19:02 | 読書と音楽と
 アメリカ南部メキシコ湾に面したアラバマ州に流れ込むテネシー川が、一時停滞するガンダーズビル湖周辺が舞台。州道431号、州間高速道65号線を走るとやたら目につくのは、「1-800GET RICH]」の大型看板。事故や怪我専門の民事弁護士ジェイソン・ジェイムズ・リッチが看板の主。ポルシェ911カレラカブリオレのコンヴァーティブルを駆る文字通りリッチな弁護士である。

 しかし人生は悩み尽きない。ジェイソンもアルコール依存症のよる暴力沙汰で施設に90日間入っていた。ようやく出られたと思うったら、姉ジャナ・ウォーターズが外科医の夫殺害の容疑者となってジェイソンに助けを求めた。刑事事件の経験のないジェイソンが、嘘をつくジャナをどのように弁護するのか興味深く読み進めた。

 ジャナが5万ドルの借金があるという、ドラッグディーラーのタイソン・ケイドという男の存在もこのシリーズの興味深い点だ。最後に「俺もトラブルに巻き込まれたら、誰に電話したらいいかが分かったよ。ジェイソン」

 それにこの著者も架空の街や場所を創造することはなく、実在するものを作中に取り込んでいる。フローラバマ・ラウンジ&パッケージング、ハンプトン・イン、ウィッツエル・オイスター・ハウス等。フローラバマ・ラウンジ&パッケージング についてChatGPTのmonicaに聞いてみると「フローラバマ・ラウンジ&パッケージング(Flora-Bama Lounge & Package)は、アメリカのアラバマ州に実在する有名なバーおよびライブ音楽のスポットです。フローラバマは、アラバマ州とフロリダ州の州境に位置しており、観光客や地元の人々に人気があります。ビーチの近くで、さまざまなイベントやライブ演奏が行われています」とある。

 また音楽も多彩だ。ダリアス・ラッカー「ワゴン・ホイール」、AC/DC「地獄のハイウェイ」、クリス・ジャンソン「バイ・ミー・ア・ボート」、ケニー・チェズニー「ノー・シューズ、ノー・シャツ、ノー・プロブレム」。いい曲ばかりだが、一曲を選ぶとすればポップスターからカントリーに転進した黒人のダリアス・ラッカー「ワゴン・ホイール」にしたい。ビデオの雰囲気もいいので。いずれにしても、リッチ・シリーズの今後が楽しみではある。

 著者ロバート・ベイリーは、アラバマ州出身。アラバマ大ロースクール卒業後、弁護士として活躍し、2014年に「ザ・プロフェッサー」で作家デビュー。以後シリーズ続編「黒と白のはざま」「ラスト・トライアル」「最後の審判」、スピンオフ・シリーズ「嘘と聖域」「ザ・ロング・サイド」、リッチ・シリーズ三部作。単独作品として「ゴルファーズ・キャロル」を発表している。(表紙見開きから)

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読書「エイレングラフ弁護士の事件簿DEFENDER OF THE INNOCENT:THE CASEBOOK OF MARTIN EHRENGRAF」ローレンス・ブロック著 文春文庫2024年9月刊

2025-02-02 09:20:56 | 読書と音楽と
 主人公がマーティン・エイレングラフ弁護士で12編の短編が収録されている。マーティン・エイレングラフの人物像は、瘦身矮躯(そうしんわいく 痩せていて背が低い)で細長い口ひげ、薄い唇、落ちくぼんだ黒い目だが、それらを補うように着るものや椅子やソファやリキュール、コーヒーなどには最高の品物を選ぶ。
 
 例えば、真珠貝のボタンがついたダークグリーンのブレザーに、クリーム色のタブカラーのシャツ(タブカラーシャツは、左右の襟部分に先端をつなぐ紐(タブ)が付いているデザインが特徴)、シャツと同系色のフランネルのスラックス、ブレザーより濃いグリーンのシルクのネクタイ、結び目のすぐ下に、銀とブロンズ色の糸で一角獣と闘っているライオンの刺繡がほどこされている。シンプルで磨き上げられてエレガントなコードバンのローファーといういで立ち。伊達男と言えばいいか。これには遠大な男としての欲求が隠されている、 と思われる。それは最終章近くで明らかになる。

 ある男が言う「あなたのやり方はよく存じ上げています。エイレングラフさん。あなたの依頼人が裁判にかけられたことは滅多にないし、あなたが法廷に足を運ぶことも滅多にない。あなたが弁護を引き受けると、いつも不思議なことが起こる。証拠がすり替わったり、新しい証拠が出てきたり、別の誰かが自白したり、事件が事故になったり……そう、いつも何かが起こるんです」

 確かにそうなんだ。短編第1篇「エイレングラフの弁護」ではっきりとわかる。ドロシー・カルヘインは息子のクラークがフィアンセを殺した殺人容疑に問われている。クラークはオックスフォード大学に留学した経験があり、キャドモン会の会員になり会員証となる特製ネクタイを持ち帰った。(このキャドモン会は、チャットGPTに問い合わせても存在は確認できない。従って著者の創作だろう)凶器がそのネクタイであって殺人は確かな局面に至っていた。

 成功報酬制と言えばいいか、依頼人に有罪の結論が出されれば報酬はなし、いかなる形であろうとも自由の身になれば高額の弁護料が発生する。ドロシー・カルヘイン夫人の場合、7万5千ドルの負担がかかる。1か月後、息子は無事放免となった。しかし、カルヘイン夫人が気にかけているのは、息子のアリバイが明確になったのはいいが、オックスフォード大学のキャドモン会員専用のネクタイで三人の女性が殺されたことだ。そして不思議なことにエイレングラフ弁護士の経費の説明の中に、オクスフォード大学に行ってキャドモン会でネクタイを4本買ったというではないか。仰せの7万5千ドル(日本円で156円換算、1150万円ほど)を払ったのはいいが、すっきりとしないのは何故だろう? まさかと思うがエイレングラフに殺人や文書偽造や脅迫の疑いはないだろうか。それは大いにあるのである。

 エイレングラフは、詩集を読むことでマイナスイメージをいくらかでも和らげている。詩を引用したりして。各篇はお話としては面白いのだ。著者ローレンス・ブロックは、若いときというか書き出しの初期には、ポルノ小説も書いていたそうな。その片鱗が見えるのが、「エイレングラフの決着」「エイレングラフと悪魔の舞踊」である。

 「エイレングラフの決着」は、ドアを開けたときミズ・フィリップスはまぶしいほどの美貌の持ち主で、身長はエイレングラフより数インチ高い。一見無造作だが丁寧にカットされた黒髪、スーパーモデルのような顔立ち、小鹿のような大きな瞳、淫らに見える一歩手前のふっくらとした唇が誘うようだった。

 さてこのミズ・フィリップスだが、その名前は守衛に告げたもので本名はアリシア・レイヴェンストックという。かつてテグラム・ボーグという若い男を射殺したとして容疑者にされたとき、エレイングラフに助けを求めてきたのが、アリシアの夫ミラード・レイヴェンストックなのだ。しかも草々に容疑が晴れたため弁護料を値切っていったという顛末がある。

 夫がエイレングラフのことを散々こき下ろし値切ってやったと自慢げに言っていたのも影響したのか、離婚を決意したアリシアが相談に来た結果が今日なのだ。エイレングラフに依頼したおかげで、夫は刑務所へ、協力した刑事は自殺という結末を迎えた。新調した濃紺のピンストライブのスーツ、シャツはフレンチブルー色、生地はブロードクロス、襟はスプレッドカラーでお洒落なエイレングラフ。

 アリシアがとうとうと述べる感謝と喜びの声から沈黙が訪れた。目が合う。お互いの呼吸が同調し、沈黙のうちに親密さが深まっていく。最後にアリシアが言ったのは、余計な合いの手を省くと「あなたがドランブイ(リキュールの一種)を持ってきて、私がそれに口をつける前にふと思ったんです。私たちは寝室に行って愛し合ったあと、そのお酒を飲んだ方がいいんじゃないかって。あなたが私を求めていることは、私を見る目つきで分かっていた。それで気分を害したわけじゃないのよ、マーティン。あなたは下品でもいやらしくもなかった。とても素敵だった。私は胸のときめきを覚えた。実際のところ、あなたはとても魅力的な人よ。一緒にいたら安心でき、心からくつろげる。それであなたと寝たいと思った。でも、タイミングが悪かった。それにあなたにどう思われるか分からなかったし。だってそんなことをしたら、わたしのために親身になって仕事をしてもらうための色仕掛けと思われかねないでしょう。だからそのときは何もしないで、一緒にお酒を飲みノッティンガム・テラスの自宅に帰ったんです。でも今はもう何の問題もない。小切手を最初にお渡ししたのは、済ませておかなきゃならないことを先に済ませておきたかったから。私のろくでなしの夫と浅ましい警官についての話ももう全部すんだ。いま私はこれまで以上にあなたを求めてる。あなたもそうでしょ、マーティン」「これまで以上に」とマーティン「だったら、ドランブイは後回しにしましょ」

 このアリシアも相当な女なのだ。夫が撃ち殺した若いデグラム・ボーグと浮気していたのだ。そんな事情を知るエイレングラフ弁護士もしたたかな男といえる。「エイレングラフと悪魔の舞踊」の見開き1頁目につぎの詩が書いてある。
髪は白くなっても愛は緑なして育つ
今年は去年のことを知らない
昨日は明日に対してもう何も言うことはない 
アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン
アルジャーノンって聞き覚えがあるなあ、と思っていたら、小説「アルジャーノンに花束を」に登場するハツカネズミの名前は彼にちなんで付けられたものだという。それに「髪は白くなっても愛は緑なして育つ」っていいじゃないですか。に登場するハツカネズミの名前は彼にちなんで付けられたもの。
 海外ミステリーでは、音楽のヒントがよく書かれているが、今回はそれがない。私が選ぼうと思う。「You're A part of me」カナダ出身のアン・マレーが歌う。
 著者ローレンス・ブロックは、1938年ニューヨーク州バッファロー生まれ。20代のころから多数の筆名で旺盛な執筆活動を開始。ブロック名義では私立探偵スカダー、殺し屋ケラー、泥棒バーニイなどのシリーズが日本でも高い人気を誇る。アメリカ探偵作家クラブのエドガー賞最優秀長編賞を92年に「倒錯の舞踏」で受賞した他、同最優秀短編賞を2度受賞、94年には多年にわたるミステリ界への貢献に対して同巨匠賞を受賞している。代表作に「殺し屋」「八百万の死にざま」「泥棒は選べない」などがある。

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読書「復活の歩みリンカーン弁護士RESURRECTION WALK」マイクル・コナリー著 講談社文庫2024年9月刊

2025-01-25 09:45:04 | 読書と音楽と
 ヒスパニック系ギャングのホルヘ・オチョアは、やってもいない殺人の罪で14年間コルコラン州刑務所に収容されていた。仮釈放なしの終身刑を服すこの刑務所で、生涯を全うするのはむつかしい。首を切られたり、切り刻まれたり、オカルト的妄想をもつ男が同房者の耳と指を切り落とし、ネックレスを作ったという逸話のある刑務所なのだ。

 生き延びたホルヘ・オチョアが放免される日を迎えた。それに尽力したのがアメリカの高級車リンカーンを事務所にする、ミッキー・ハラー刑事弁護士だ。待ち構えるのは、オチョアの家族、ミッキー・ハラーそれにメディアのカメラとレポーターたち。ニュースヴァリュ―は抜群で、カリフォルニアの有名人になったミッキー・ハラー。依頼は間断なくやってくるが、選別するのは異母兄のハリー・ボッシュ。数十年にわたる殺人事件を解決してきた刑事ハリー・ボッシュは、現役を引退してミッキー・ハラーの調査員を務める。

 ボッシュは一通の手紙に関心を寄せた。ルシンダ・サンズという女性で、保安官補の夫殺害の罪で仮釈放なしの終身刑を示唆され、無能で怠慢な弁護士の口車に乗せられて罪を認めてしまったという。この案件に取り組むのだが無罪放免という結末が見えているが、ライフルや拳銃、ナイフという凶器と同等の力を持つ言葉や頭の回転の速さで堪能できるのが法廷劇といえる。

 それらを楽しめると同時に著者の実在する場所や地域の引用は、何かしら役に立つのではないだろうか。こんな記述がある「ボッシュは北向き101号の入り口に入った。ロータリーにはテントや段ボール・ハウスが並んでいた。直近の市長選挙は、市にあふれかえったホームレス問題でどちらの候補が、ましな仕事をするかが焦点になっていた」これはアメリカが抱えている問題だ。こういうミステリー本にまで記述されのは、問題の深さが伺える。

 ドジャー・スタジアム 今や大谷翔平、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンさらに山本由伸、佐々木郎希も加わったドジャースの本拠地球場だが、150年前はチャベス渓谷と言って墓地だった。これは日本版ウィキペディアにも書いていない。

 イタリアン・レストラン「ドラゴ・セントロ」、ハリウッドの俳優御愛用のレストラン「ムッソ&フランク」などLA旅行には参考になる。そしてアメリカ特有の変遷、50年前違法だったマリファナが今ではカリフォルニア州では、制限付きながら買うことができる。

 そしてハリー・ボッシュ愛聴のジャズ、ターンテーブルのLP盤に針を落とす。ウェイン・ショーターの「ハリーズ・ラスト・スタンド」を聴きましょう。

  著者マイクル・コナリーは、1956年フィラデルフィア生まれ。フロリダ大学を卒業し、新聞社でジャーナリストとして働く、共同執筆した記事がピュリッツァー賞の最終候補まで残り、ロサンジェルス・タイムズに引き抜かれる。1992年作家デビューを果たし、現在は小説の他にテレビ脚本も手掛ける。2023年アメリカ探偵作家クラブ巨匠賞受賞。著書はデビュー作から続くハリー・ボッシュ・シリーズの他、本作につながるリンカーン弁護士シリーズ、女性警察官レネイ・バラードが活躍する「鬼火」「ダーク・アワーズ」「正義の弧」など多数がある。(本書カバー見開き1頁目より)
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読書「終の市(まち)City in runs」ドン・ウィンズロウ著 ハーパーbooks2024年6月刊

2025-01-11 09:57:41 | 読書と音楽と
 ダニー・ライアンは「夢だ」と、恋人の心理療法士で大学教諭のイーデン・ランダウに言う。その夢が実現しつつある。ラスベガスのホテル王ヴァーン・ワインガードが進めているさらなるホテル買収を、横から手を出して手中に収めようとした。

 ラスベガスでホテル業の覇権を狙ったダニー・ライアンは、アイルランド系のマフィアの一員として名を馳せた過去がある。今は堅気とされているが、華々しく表に出られない。従って「タラ」グループの共同出資者の地位に甘んじている。しかし実際の経営にはアイデアマンであるダニー・ライアンの影響が大きい。ホテルを買収しカジノホテルを建て巨万の富を築いている。

 ヴァーン・ワインガードがデトロイト系マフィア アリー・リカタに上納金を払っていることもあり、調子に乗って横から手を出したダニー・ライアンに刺客が送り込まれる。こうして幾つも血が流れ悲劇が積み重なっていく人生。脳腫瘍のため他界したダニー・ライアンの意思を受けた息子イアンが、妻エイミーとともにダニーの遺灰を海に流す。有形のものは、必ずいつかどこかで無に帰する。ラストは哀切に満ちたものになっているが、跡を継いだ息子は、父親以上に事業を発展させるという一条の光が見えるのは後味のよさとして記憶に残る。

 本作は2021年「業火の市」、2023年「陽炎の市」に続く三部作の最終章ということになり、前二冊を読まなくても結構楽しめるものとなっている。私はドン・ウィンズロウの作品は、「ニール・ケアリー・シリーズ」や「ボビーZの気怠く優雅な人生」などでファンになったが、こんな犯罪小説を書くとは思いもしなかった。快い驚きでもある。

 さて、ダニー・ライアンは夢を実現しようと努力するが、夢を歌う歌曲も聴いていただきましょう。バリー・マニロウの「Who needs to dream?」とカーペンターズの「I won't last a day without you愛は夢の中に」です。

 著者ドン・ウィンズロウは、数々の賞を受賞し高い評価を受ける世界的ベストセラー作家。「野蛮なやつら」「キング・オブ・クール」「ザ・カルテル」「ダ・フォース」「ザ・ボーダー」「業火の市」「陽炎の市」といったニューヨーク・タイムズベストセラー作を含め、これまでに25作を上梓。「野蛮なやつら」がオリバー・ストーン監督によって映画化されたほか、「犬の力」「ザ・カルテル」「ザ・ボーダー」の3部作はテレビシリーズ化が決定し2024年に放送予定。現在複数の作品の映像化企画がパラマウントやNetflix、ワーナー・ブラザース、ソニーなどで進行中、ウィンズロウは本書を最後に作家を引退すると発表している。(本書裏表紙見開きから)



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読書「ボタニストの殺人THE BOTANIST」M・W・クレイヴン著 ハヤカワ・ミステリ文庫2024年8月刊

2024-12-28 11:30:24 | 読書
 ボタニストとは、「植物学者」。殺人予告に花の絵と押し花が同封されることから犯人像をそう呼ぶ。実際に犯人とされる人物は、創薬科学者で頭抜けて頭のいい男フレデリック・ベック。頭が狂っているのは確かだが、殺人方法は通常の処方薬に似せた劇薬をカプセルに入れるというもの。しかもその薬が胃の中に入っても、時間の調節も可能というから実に恐ろしいのである。

 頭のいい犯罪者に向かう捜査機関は苦労させられる。しかし、強力なメンバーを持つNCASCA(国家犯罪対策庁重大犯罪分析課)には、ワシントン・ポー部長刑事、ステファニー・フリン警部、ティリー・ブラッドショー分析官たちが、緻密な分析と卓越した判断力でまるで鋭い嗅覚の猟犬のように事件を追う。

 ここに同時に二つの事件を抱え込む事になったNCASCA。ボタニスト事件とポーと親しい病理学者のエステル・ドイルが父親殺しの容疑で拘束される事件なのだ。ポーとドイルは微妙な関係でいる。恋愛感情の萌芽が見え始めているという段階。

 この著者は、ワシントン・ポー、ステファニー・フリン、ティリー・ブラッドショーの具体的な容貌の説明がない。過去の作品であったかもしれないが、覚えていない。ポーは周囲が羊の放牧場で古民家のような家に一人で住んでいて、年齢は40代後半の気がする。フリン警部も子供が生まれたというからポーと同年代かもしれない。ブラッドショーはまだ20代の天才数理学者。世間知らずなところがあって周辺に波乱を起こす。

 巻末の解説に「読んでいる最中ずっと楽しい。振り切った娯楽小説である」と書評家の酒井貞道が述べている。まさのその通りで、活字を追うのが楽しい。そして物語の流れは、意外性を伴って二つの事件が完璧につながるのは見事。男女のほのぼのとしたやりとりに、自らの若き頃を思い出しながらニヤリとするのである。また、ワシントン・ポーのお気に入り曲スティック・リトル・フィンガーズの「ティン・ソルジャーズ」ということなので気持ちは若々しいということだろう。その曲を聴いてみましょう。

 著者マイク・W・クレイヴン(Mike W. Craven、1968年 - )は、イギリスの作家。彼は、Washington Poe シリーズと DI Avison Fluke シリーズの著者で、2019年には、小説『The Puppet Show』が犯罪作家協会ゴールドダガー賞を受賞した。
 クレイヴンはカーライルで生まれ、ニューカッスルで育った。16歳で英国陸軍に入り、1995年に除隊し、犯罪学、心理学、薬物乱用を専門とするソーシャルワークの学位を取得した後、ホワイトヘブンのカンブリア保護観察局に保護観察官となった。16年間の勤務の後、副最高経営責任者の地位のあと作家に転進。
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読書「死はすぐそばにCLOSE TO DEATH」アンソニー・ホロヴィッツ著 創元推理文庫2024年9月刊

2024-12-16 11:02:27 | 読書
 ロンドンの高級住宅地リッチモンド。その中のテムズ川に面したリヴァーヴュー・クロースというアーチ型の電動門扉に守られた一画がある。川べりに鬱蒼とした樹林があって、リヴァーヴューと謳いながらテムズ川が見えない詐欺的ネーミングの場所なのだ。

 その中に花壇を取り囲むように、6軒の大小様々な瀟洒な住宅が建ち並んでいる。時計回りに歯科医のロデリック・ブラウンとその妻フェリシティ。特異な古書店を営むメイ・ウィンズロウとフィリス・ムーアの二人の老夫人。元法廷弁護士のアンドリュー・ペニントン。チェスのグランドマスターアダム・シュトラウスとテリ夫妻。医師のトム・ペレスフォードと宝飾デザイナーの妻ジェマ。最近引っ越してきたテムズ川に面した広大な敷地に建つヘッジハンドマネージャー ジャイルズ・ケンワージーとその妻リンダの家族。

 早朝午前4時、リバーヴュー・クロースの住民をたたき起こしたのがヘッジファンドマネージャーのジャイルズ・ケンワージ。ポルシェから鳴り響く2016年に活動を休止したワン・ダイレクションの「Best Song Ever」なのだ。他の住民からは非常識だの声が上がる。これだけではない。私道(勿論ケンワージー家の)に止めた車のせいで、医師のロデリックが出勤の時苦労するという。ある時そのせいで救急患者が死亡するということもあった。本人に抗議しても、馬耳東風で誠意のない態度をとる。そこへ景観を壊すであろう、プールの造成ときた。住民たちの不満が沸点に近づいた。

 そんな時、クロスボウで喉を射抜かれて殺されたジャイルズ・ケンワージーが発見された。担当するのはロンドン警視庁の顔ともいえる存在のタリク・カーン警視。有能なカーン警視にしてもリバーヴュークロースというある意味密室殺人に近い状況は難題と言える。助手のルース・グッドウィン巡査が察したように「ホーソーンを呼んだらどうでしょう」。

 かくしてホーソーンと助手のジョン・ダドリーの登場となる。私は退屈な気分とともに活字を追っていた。やっと事件が起こった。住民全員が容疑者であり、密室ミステリが展開され、二転三転の末ようやく結末に至る。不満もないわけではないが、ラストシーンが秀逸なのだ。その場面を読んでいて映画の一シーンを思い出していた。それは「第三の男」のラストシーンなのだ。1949年にジョセフ・コットン、アリダ・ヴァリ、名優オーソン・ウェルズの出演で製作された。ほんとに印象的なシーンだった。「第三の男」の詳しいことはウィキペディアで、ラストシーンはYouTubeにありますので載せておきます。

 また、密室ミステリについて著者は、「近年になってわたしは、最高の密室ミステリは日本から生まれていると考えるようになった」として、島田荘司「斜め屋敷の犯罪」やこの分野の名手として横溝正史の「本陣殺人事件」を作中で言及し、とてつもない才能だと絶賛している。なかなか嬉しい指摘ではある。それでは大音量で住民の目を覚ましたワン・ダイレクションの「Best Song Ever」を聴いていただきましょう。

 著者のアンソニー・ホロヴィッツは、イギリスを代表する作家。ヤングアダルト作品(女王陛下の少年スパイ!アレックス)シリーズがベストセラーに。また、人気テレビドラマ「刑事フォイル」の脚本、コナン・ドイル財団公認の(シャーロック・ホームズ)シリーズ新作長編「シャーロック・ホームズ 絹の家」などを手掛ける。アガサ・クリスティへのオマージュ作「カササギ殺人事件」では「このミステリーがすごい」「本屋大賞(翻訳小説部門)の1位に選ばれるなど、史上初の7冠を達成。その続編の「ヨルガオ殺人事件」も絶賛を博した。また、( ホーソーン&ホロヴィッツ)シリーズ「メインテーマは殺人」「その裁きは死」でも、年末ミステリランキングを完全制覇している。


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読書「告発者The Whistler」ジョン・グリシャム著 2024年11月新潮文庫刊

2024-12-04 13:27:40 | 読書
 司法審査会に告発状が届けられた。女性判事のクローディア・マクドーヴァーの不法な手段で私腹を肥やしているというもの。その背景には広大なインディアン居留地にあるカジノ、ゴルフ場、ショッピングモール、高級マンション群を支配しているマフィアのヴォン・デュボーズの存在がある。

 司法審査会は、調査に権限はあっても捜査の権限はない。従って銃の所持はない。しかし、調査の結果判事を辞めさせることはできる。そして今、調査官のレイシー・ストールツは、予算削減のあおりを食らって公用車廃止で自前の車、トヨタ・プリウスのハンドルを握っていた。衛星ラジオからはソフト・ジャズが流れている。助手席には黒人の大男ヒューゴー・ハッチが眠っている。四人の子持ちで最近生まれた子の夜泣きに悩まされ、睡眠不足を補うのがこの長距離出張なのだ。

 フロリダ州にある観光都市セントオーガスティンのマリーナに着いた。パナバ帽の下からもじゃもじゃとした髪がはみ出し、ショート・パンツにサンダル、派手な花柄のシャツ、太陽の下で長時間過ごす皮膚が赤銅色でパイロット・サングラスをかけた60代の男がうなずいて握手の手を出してきた。この男が告発者の元弁護士のグレッグ・マイヤーズ。

 レイシー・ストールツは34歳の美人。自らも認識していて、それを大いに利用してもいる。とはいっても私生活は良好にコントロースしていて、ベッドへの誘いは簡単には応じない。こういうタイプの女性はツンとしていて、近寄りがたい印象を持つがストーリー展開でも気の利いたユーモアも発していないことから、ジョン・グリシャムの人物造形もツンツン女なのだろう。

 そんなある日、司法審査会の委員長マイクル・ガイスマーに電話があり、カジノに勤務するインディアンと言い情報があるという。そこでレイシーとヒューゴーが出向いた。午後10時56分、情報提供者の男が指示を出してきた。対向車とぎりぎりすれ違える細い道を走ると、ヘッドライトに浮かび上がったのは古びた金属壁の建物だった。車を降りて近づくと影に男がいた。目深にキャップをかぶっていて、顔は見えない。男はいろいろと質問をしてきたが、突然姿を消した。なんの収穫もなかった。

 二人は元の道に戻った。突然強烈はヘッドライトの光を浴びると同時に衝突の衝撃でプリウスは180度回転した。助手席のヒューゴーはシートベルトの故障でフロントガラスを突き破り瀕死の状態。レイシーもエアバッグが作動して顔面に裂傷を負い気を失った。救急搬送の結果、ヒューゴーが死に、レイシーは一命をとりとめる。二人が所持していたスマホが発見されないこととレイシーのおぼろげな記憶の二人の男の存在から、殺人事件とされFBIの手に渡る。

 レイシーに気のあるFBIタラハシー支局特別捜査官アリー・パチェコが精力的に動き始める。上下二巻の文庫本で下巻の方は、淡々とFBIの捜査が進捗する様子が描かれるが、全体に余情も乏しいし迫力も感じなかった。レイシーをもう少し魅力的に描かれればいいかもしれない。当然こういう設定では悪は滅びるのである。

 そしていつも感じることではあるが、ミステリー本とはいいながらそれぞれの国の現実が垣間見られることだ。この本から拾い上げてみると、インディアン居留地のタッパコーラ族の話が出てくるが、今彼らをネイティブアメリカンと呼び人種差別はないよと言いたげだが、ジョン・グリシャムによると、彼ら自身は「インディアン」と自称しているらしい。そりゃそうでしょう500年以上も前にコロンブスが大陸を発見した時、先住民たちを「インディアン」と呼んだんだから、誇り高きインディアンなのだ。

 最近では「自家用車」という言葉を聞かなくなった。一家に一台の車が当たり前になったからかもしれない。とはいっても車によるランク付けはあるように思える。悪徳判事クローディア・マクドーヴァはレクサス、レイシーはプリウスが全壊したので、マツダのハッチバックに買い替えた。かつての公用車がホンダ車だ。ジョン・グリシャムはよほど日本車が好きなのか。

 それとデートでワインを飲む。レイシーとパチェコとの食事もワインが欠かせない。アメリカ人もヨーロッパ人並みになったのか。そんなあれやこれやを考えるというわけ。

 では、気を取り直してスロー・ジャズでも聴きますか。Beegie Adairの「スター・ダスト」なんかは如何でしょう? こういうスローテンポの曲を聴くと、20代か30代に戻って目と口元がキレイな女の子と踊ってみたい気もするが!!!どうぞ想像をたくましくしてお聴きください。

著者ジョン・グリシャムは、1955年生まれ。ミシシッピ州立大学、ミシシッピ大学ロースクールを卒業。’81から’91年まで弁護士として活躍、’84から’90年まではミシシッピ州下院議員もつとめた’89年に「評決のとき」を出版し作家デビュー。著作に「法律事務所」「ペリカン文書」「依頼人」「自白」「危険な弁護士」など多数。

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読書「正義の弧DESERT STAR」マイクル・コナリー著2023年講談社文庫刊

2024-09-09 11:19:26 | 読書
 現役を引退して私立探偵業を営むジャズ好きなハリー・ボッシュ宅を訪れたのは、ロス市警未解決事件班担当刑事のレネイ・バラード。チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーン、クリフォード・ブラウン、マイルス・デイヴィスなど、いずれかの曲が針を落とすLP盤からの音楽が部屋を満たしているのが常なのだ。

 しかし、今回は違った。ハリーは静かな部屋で処方薬を飲んでいたのだ。呼び鈴を鳴らして顔を見せたバラード。「音楽はかけてないの?」状況からみて愚問ではあるが、人は往々にして愚問を発する。とはいってもバラードは無能ではない。かつてボッシュとコンビを組んで多くの事件を解決してきた。

 今回市会議員ジェームズ・パールマンの妹サラが1994年に殺害された事件の再捜査とともに、当議員の肝いりの未解決事件班創設時の責任者としてレネイ・バラードが選ばれた。カリフォルニア州は民主党の青い州でおそらく警察予算の縮小の憂き目にあっているのだろうか、未解決事件班の構成はバラード以外はボランティアとして務めている。ハリー・ボッシュも例外ではない。現実の民主党政治がマイクル・コナリーの著作にも影を落としているという好例。

 ハリー・ボッシュがジャズ好きということもあって、文中に音楽に関する記述もあって楽しませてくれる。ボッシュは午前中なかばの比較的車の流れが穏やかな時間帯を、北に向かって405号線を走っていた。ボッシュは古いチェロキー・ジープを愛用している。車載オーディオからシェリー・バーグ・トリオが演奏する「ブラックバード」が単調なドライブを助けてくれる。

 また、別の日バラードが朝ボッシュ宅に立ち寄ったとき、「あなたがかけていたのは、プロコム・ハルム?」から会話が始まった。プロコム・ハルムは、イングランドのロックバンドでデビュー曲が、「青い影」でヒットした。この曲は多くのアーティストがカバーしている。私も好きな曲の一つ。

 市会議員ジェームズ・パールマンの妹サラ・パールマン殺害事件は、あろうことか未解決事件班の一員である元サンタモニカ警察のテッド・ロウルズの自殺によって解決した。ボッシュが執念で追うギャラガー一家殺害事件。フロリダ州マイアミまで犯人フィンバー・マクシェーンを追い、拳銃を構えている犯人にドライバーで突き刺し息の根を止めた。簡潔な文章と巧みなストーリー展開で、相変わらず魅了するマイクル・コナリーを満喫した。

 それではシェリー・バーグ・トリオが演奏する「ブラックバード」とプロコム・ハルムの{青い影」を聴いてみましょう。


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読書「グレイラットの殺人DEAD GROUND」M・W・クレイヴン著ハヤカワ・ミステリ文庫2023年刊

2024-08-13 08:35:59 | 読書
 映画俳優のショーン・コネリー、ダニエル・クレイグ、ジョージ・レーゼンビー、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、ロジャー・ムーアの面をかぶった男六人が金庫室に侵入した。近頃は貸金庫のサービスのある銀行が少ない。男たちが侵入したのは、人材派遣会社が所有する施設だ。

 何かを盗み出すのではなく、ティモシー・ダルトンの面をかぶった男の死体を置くためだった。読み手はハナから????の状態。一方、国家安全対策庁の重大犯罪分析課部長刑事ワシントン・ポーと分析官のテイリー・ブラッドショーの二人は、保安局MI5として知られている国内治安維持を担当する情報機関が指揮する殺人事件補佐する役割でカンブリア州まで出向いた。出向いたというよりMI5の出来の悪い男に連れてこられたというのが実際かもしれない。

 カンブリア州のカーライルで死体で見つかったのは、クリストファー・ビーアマン。よりにもよって古びた袋小路に建つ棟割り住宅だった。クリストファー・ビーアーマンは、ヘリコプターの会社を経営していて、この地方で近々首脳会談開催の予定があり、参加者の空港から送迎を受け持っていた。そんな背景もありMI5が主導することとなっている。当然おかんむりなのが地元カンブリア警察。どこにでもある省庁間の縄張り意識。

 そんな些細なことには馬耳東風のポーとティリーのコンビは、この二つの殺人事件を追う。まるで絡み合った糸くずをほぐすように、複雑なこのシリーズ「ストーンサークルの殺人」「ブラックサマーの殺人」「キューレーターの殺人」に続くこの四作目も堪能した。

 著者のマイク・W・クレイヴンは、イギリス・カンブリア州出身の作家。軍隊、保護観察官を経て2015年に作家デビュー。2018年の「ストーンサークルの殺人」で英国推理作家協会賞最優秀長編賞ゴールドダガーを受賞した。

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読書「弁護士の血TEH DEFENCE」スティーヴ・キャヴァナー著2015年ハヤカワミステリー文庫2015年刊

2024-07-23 09:09:37 | 読書
 わたし弁護士のエディ・フリン。今ニューヨーク・ブロンクスの中でも特に貧しい地域に車のマスタングを停め、荒れ果てた二階建ての家に向かった。ロシアン・マフィアからかすめ盗った90万ドルが入ったダッフルバッグを玄関前に置き呼び鈴を鳴らした。中から足音が近づいてくる。私はきびすを返して、マスタングを発進させた。バックミラーに目をやるとハンナ・ダブロウスキーが見える。ダッフルバッグの上に置いた手紙を読み終えて視線をマスタングに注いだ。マスタングは角を曲がろうとしていた。私はせめてもの償いをしたつもりだ。

 私の人生で最大の失敗の生きる証人がハンナなのだ。深夜の地下鉄構内でハンナをレイプしようとした男テッド・バークリーを弁護して、この男に潜む残忍な本性を予見していながら、無罪を勝ち取った。これが大きな誤りだった。警察から渡されたテッドのパソコンを返すためにハンプトンズの別荘を訪れたとき、ハンナが縛られ瀕死の重傷を負っている場面に遭遇した。警察と救急車を呼んだが醜くなったハンナの顔の傷と心の傷は回復しなかった。

 犯人のテッドは20年の禁固刑、エディには6か月の業務停止と夜な夜なハンナの姿が夢に出てくるようになった。ニューヨークのロシアン・マフィアのボス、オレク・ヴォルチェック殺人容疑の弁護を私の娘エイミーを人質に取られ強制されている今、エイミーとともにハンナも夜な夜な夢に出てくる。

 そんな重荷を抱えるエディ・フリンではあるが、若かりし頃はかなりヤバいこともやっていた。一流の詐欺師であり、スリであり、腕力も強いときている。かつての業と弁護士の経験を加え、このロシアン・マフィアのボスを叩き潰す方策を手探りながら確立しようとしている。

 陪審員には詐欺の手口の応用、マフィアたちにはスリの手口で、スマホや財布や起爆装置を抜き取ったりすり替えたりする。そして審理無効の裁判。マフィアのボスを助けた。ほとんどが法廷場面ながら、法廷の爆破というエンターテイメントもサービスされていて、興味深い展開に時間を忘れる。

 著者のスティーヴ・キャヴァナーは、北アイルランド・ベルファスト生まれ。皿洗い、警備員、用心棒、コールセンターのオペレーターなどの仕事を経て、弁護士事務所で働く。本書がデビュー作となり、北アイルランドの優れた芸術作品を表彰するNorthern Ireland Arts Council's ACES Awardを受賞。五つの言語、九つの国で刊行されている。

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