↑ 「ツタンカーメン」 1~4巻 潮出版社 希望コミックス 1997年7月~9月各第一刷
初出 第一巻 LaLa 1994年7月号~12月号
第二巻 LaLa 1995年1月 ~ 7月号
以上 「封印」 を改題
第三巻 「月刊コミックトム」 1996年5月号~11月号
第四巻 「月刊コミックトム」 1996年12月号~1997年1・3・4月号
「封印」 の頃出た 花とゆめコミックス の1巻 (1995年2月1日初版)を買ってから2巻を見つけることができずに (本当は1995年9月1日に初版) 1巻も処分してしまっていました。
「ツタンカーメン」 がそれと同じで、しかも完結しているということを何年か前に知り、いづれ手に入れようと思っていたが、最近やっとネットで中古を手に入れました。
途中1年くらい間が空きながら掲載誌を変えて描き続けられていたんですね。
山岸 凉子氏は実在の人物の伝記に近いものを結構描いてますが、
自身の出身地である北海道で運命観相家として昭和20年代~40年代始めに有名だった 白眼子 という男性について描いた
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「白眼子」
横溝正史の推理小説『八つ墓村』(1949年)の原作になった事件「村人32人殺し」(岡山県で実際に起こった津山事件がモデル) の犯人を描いた、
「負の暗示」(1991年「YOU-all」8号)
バレエものでは、1953年にバレリーナとしては初めて 「ウーマン・オブ・ジ・イヤー」 に輝いた マリア・トールチーフ と ジョージ・バランシン の関係を描いた、
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「黒鳥 ブラック・スワン」「セリエミステリー」1994年4月号
(あまり内容には触れてませんm(_ _)m)
稀代の天才ダンサー ヴァーツラフ・ニジンスキー を振付師のミハイル・フォーキンの目から見て描いた
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「牧神の午後」(「ぶ〜け」1989年11月号-12月号)
などがあります。
今回はエジプト、20世紀に至るまでほとんど盗掘を受けなかった極めて珍しい王墓を発掘したとして名高い (以下リンク先はすべてウィキペディア)
考古学者ハワード・カーター
が主人公です。
発掘されたほうは有名な
ツタンカーメン
ですが、作品には謎の人物として生まれ変わりのような形で出てきます。私の好きな 処天 (日出処の天子) の厩戸の王子様に似ていて素敵よん。性格は始め良くないように描かれてますが。
カーターの考古局首席監督官の時代からその後の不遇時代を経て、
カーナヴォン卿
の援助でエジプトの王家の谷の発掘を始め、援助の契約が切れる1922年、「世紀の発見」と言われるツタンカーメン王の墓を発見するまで丁寧に彼の事績を追っています。しかしそれだけでは普通の子供向け伝記マンガでしかないわけで、もちろん山岸 凉子氏はそれプラスさっき言ったような謎の人物を出したり、周りの人物もふくらませて描いているわけです。
カーナヴォン卿の娘の イーヴリン が カーター を慕う素直な娘として描かれ、お話に多少のラブを添えています。なにしろ砂漠の中の発掘現場が舞台ですから、埃っぽくてラブ要素が少ないんですよね。ここら辺、この作品に描かれたように本当に両思いだったのか、結局プラトニックだったのかなどは深く詮索しないように。(笑)
作者がみっちり調べ上げたことが、ツタンカーメンに関する本を読むよりも早く、詳しく、(なにしろ絵で出てくるわけですから) とても勉強になって好奇心を満足させてくれる力作でした。
個人的に残念なのは、例の謎のツタンカーメンの生まれ変わりの彼が後半になるとほとんど出て来なくなってつまんなかったことくらいですか…。もうちょっと後半まで絡んでくれると良かったのに、カーターだけには正体が分かった、という処理の仕方でした。
実はこの後すぐ手に取ったマンガは
tooru_itouさんにお借りしている 波津 彬子さん の 「女神さまと私」 。
時代はこれよりちょっと後だけれどほぼ同じ、作品中にエジプトの猫型女神様が ! この女神様 波津氏 がいつも描くぽっちゃり可愛い猫じゃなくて不気味可愛いのが又…いい感じだったりして。(笑)
引き続いてエジプトの歴史に思いを馳せることが出来ました。